ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

渡邊センス(41歳)名誉毀損訴訟が完全決着 講談社「FRIDAY」敗訴確定、松本人志(62歳)酒席報道が突きつけた週刊誌報道の限界

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー
渡辺センス氏
渡辺センス氏 Xより

お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(62歳)をめぐる酒席報道を起点とした名誉毀損訴訟が、控訴見送りにより完全決着した。

女性を松本に紹介したなどとする週刊誌「FRIDAY」の記事で社会的評価を著しく損なわれたとして、吉本興業所属のお笑い芸人・渡邊センス(41歳)が発行元の講談社に損害賠償などを求めた裁判で、東京地裁が名誉毀損を認め、計220万円の支払いを命じた判決が確定した。判決は11月25日付で、双方が期限までに控訴しなかった。

講談社フライデー編集部は「総合的な判断によるものです」と短くコメント。一方、渡邊は自身のXで「完全決着」「完全勝利」と投稿し、報道のあり方に一石を投じる形となった。判決確定は、単なる芸能人同士のトラブルではなく、週刊誌報道の取材姿勢そのものを問う結果となった。

 

問題視されたFRIDAY記事と「女性証言」依存の構図

訴訟の発端となったのは、2024年1月から4月にかけて「FRIDAY」が掲載した複数の記事だった。記事では、ある女性が「渡邊に誘われて松本との酒席に参加した」と語り、その過程で「松本さんとの性的行為に応じられる友人を呼んでほしいと渡邊さんから言われていた」との趣旨が紹介された。

この記述は、渡邊が松本の意向を受け、女性を性的関係の対象として斡旋したかのような強い印象を読者に与える。芸人としてのイメージや人間性に直結する内容であり、渡邊は記事掲載直後から「事実無根」と強く反発した。

週刊誌報道では、匿名の女性証言を基礎に構成されるケースは少なくない。しかし今回の記事では、証言の裏付けとなる客観的証拠がどこまで存在していたのかが当初から疑問視されていた。証言のインパクトの強さに比して、事実確認のプロセスが十分に示されていなかった点が、後の裁判で重大な争点となった。

 

東京地裁が断じた「真実性なし」という司法判断

東京地裁は判決で、問題となった記事の重要部分について「真実と認めるに足りない」と明確に断じた。裁判所は、酒席当日の渡邊の具体的な行動と、記事内で引用された女性の証言内容の一部に矛盾があることを指摘。そのうえで、証言を裏付ける客観的資料や第三者証言が存在しない点を重く見た。

名誉毀損の成否は、報道内容が真実であるか、あるいは真実と信じるに足る相当な理由があったかで判断される。今回の判決は、どちらの要件も満たしていないと結論づけた。特に「記事の重要部分」という表現は象徴的で、周辺的な事実ではなく、読者の評価を決定づける核心部分が否定されたことを意味する。

これは、単なる表現の行き過ぎではなく、事実認定の段階で根本的な欠陥があったという司法判断であり、週刊誌報道にとっては極めて重い評価と言える。

 

反論後も検証せず 取材手法への厳しい批判

判決でとりわけ厳しく批判されたのが、取材手法そのものだった。裁判所は、取材者が「裏付ける客観証拠がないことを認識していたにもかかわらず、供述のみに依拠して記事を執筆した」と指摘した。

さらに問題視されたのは、記事掲載後の対応である。渡邊が具体的な反論を行い、内容の誤りを訴えていたにもかかわらず、講談社側が追加取材や事実確認を尽くした形跡が乏しかった点だ。反論が出た段階で再検証を行うのは、報道機関として最低限の責務とされる。それを怠ったことが、違法性の判断を決定づけた。

匿名証言を使った報道は、それ自体が直ちに否定されるものではない。しかし、その危うさを補うのが裏付け取材であり、反対当事者への丁寧な照会である。判決は、その基本動作を欠いた取材姿勢に明確な「ノー」を突きつけた。

 

賠償220万円の意味と訂正請求が残した課題

東京地裁が命じた賠償額は220万円だった。金額だけを見れば、週刊誌訴訟として突出して高額とは言えない。しかし重要なのは、金額以上に「名誉毀損の成立」が認定された点にある。控訴が行われなかったことで、この判断は確定し、覆る余地はなくなった。

一方で、渡邊側が求めていた訂正記事や謝罪広告については、全面的には認められなかった。裁判所は、金銭賠償による救済が相当と判断したとみられるが、誤った情報が広く流通した後の「回復」の難しさという問題は残ったままだ。

週刊誌報道は拡散力が強く、一度形成されたイメージは容易に消えない。今回の判決は、その構造的問題を浮き彫りにしつつも、司法がどこまで介入できるのかという限界も同時に示している。

 

芸能報道全体に突きつけられた重い宿題

本件は、松本人志をめぐる一連の報道環境の中で起きた。注目度の高い人物に関する告発的記事は、社会的関心を集めやすい。その一方で、周辺人物が十分な検証なしに「加害的な役割」を割り当てられる危険性も孕む。

渡邊は、松本本人ではなく、あくまで酒席の調整役とされただけの立場だった。それにもかかわらず、記事では極めて否定的な人物像が描かれ、結果として芸人生命に直結するダメージを受けた。裁判所がこれを違法と断じた意義は大きい。

報道は権力や不正を監視するために存在する。しかし、その正当性は検証の積み重ねによってのみ支えられる。供述の刺激性に依存し、検証を省略した報道は、自由ではなく無責任と評価され得る。渡邊センス名誉毀損訴訟の完全決着は、芸能報道の現場に対し、「速さ」よりも「確かさ」を優先せよという、重いメッセージを突きつけた。

Tags

ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

関連記事

タグ

To Top