
昨年の「年末ジャンボ宝くじ」で1等7億円に当選したくじが未換金となっている。販売した愛知県一宮市の宝くじ売り場「一宮テラスウォークチャンスセンター」は「WANTED」と書いたチラシを店頭に掲げ、当選者を探している。
来年1月6日までに換金されなければ無効となり、当選金は自治体に納められる。未換金の1等の前後賞は換金されており、バラ売りされたという。山本健二店長は「昨年の宝くじを確認して、早く換金を」と呼びかけている。
異例の「WANTED」掲示が映し出す緊迫感
愛知県一宮市のショッピングセンター内にある「一宮テラスウォークチャンスセンター」は、普段は地元客や買い物客が気軽に立ち寄る穏やかな売り場だ。しかし今、店先には大きな「WANTED」の文字が躍るチラシが貼られている。
宝くじ売り場が当選者を広く“捜索”するのはきわめて珍しく、関係者の間でも話題となっている。
理由は単純だ。昨年の年末ジャンボで出た 1等7億円の当たりくじが、締め切り直前まで未換金 のまま残っている。前後賞はすでに換金されており、バラで購入された組み合わせの一枚だけが取り残された格好だ。
売り場を管理する山本健二店長は、来店者に向けて繰り返し注意を促す。
「昨年の年末ジャンボは、年始にまとめて確認していない方も多いはず。当選者が気付かないまま期限を迎える可能性がある」と危機感をのぞかせる。
高額当選が“消える”構造
宝くじの当選金には、支払い開始から一年の有効期限がある。期限を一日でも過ぎれば、その金額は受け取れず、全国の都道府県や政令市へ分配され、公共事業や住民サービスなどに充てられる。
この仕組みは宝くじの収益が自治体の財源として位置づけられているためで、未換金が出るほど自治体の資金は増える。
ただし、当選者本人から見れば実にもったいない話だ。昨年の年末ジャンボでは、宝くじ公式サイトによると 1億円以上の未換金が3本 あった。さらに2024年度に期限切れとなった総額は約102億円にのぼり、そのうち 1億円以上は8本 を数えた。
高額賞金の未換金は決して例外的な出来事ではない。記念に保管してしまったり、買ったこと自体を忘れてしまったり、財布の奥や引き出しで眠り続け、期限を超えて初めて気付くケースもある。専門家の間では「高齢者の単独保管」や「家族間の情報共有不足」が要因として指摘されてきた。
一宮の売り場に走る驚きと落胆
一宮テラスウォークチャンスセンターには、今年の年末ジャンボ販売開始後、当選者探しの掲示を見ようと立ち寄る客が増えている。
27日に同センターで年末ジャンボを購入した男性(78)は、「せっかく当選したのに、もったいない。人生が変わる額でしょうに」と目を丸くした。
売り場付近でも「本当に気付いてない人がいるの?」「家族にも言わずに持っていたら、亡くなった後に見つかるパターンかも」などと話す声が聞こえる。地元客の間では、当選者が高齢者ではないかという推測も広がる。
一方で、万一、無効となれば7億円が自治体財源へ回ることから、「地域のためになるなら…」と複雑な心境を語る市民もいる。今回のケースは、宝くじの“夢”と“現実”の両方を象徴する事例として注目を集めている。
なぜ未換金はなくならないのか
宝くじの購入は年末年始や連休などのイベント期に集中しがちだ。忙しさの中で買った後、封筒に入れたまま放置されるケースは少なくない。特に年末ジャンボは購入時期と当選発表時期に年をまたぐため、「年始まで捨て置き」「気づけば財布を替えていた」などの“空白”が生まれやすい。
さらに、バラ購入は複数の売り場を巡る人も多く、どこで買ったかを忘れがちだ。今回のように前後賞だけが換金され、1等だけが取り残されるケースはまさにその典型だ。
また、紙の宝くじは紛失や劣化のリスクも伴う。電子化された宝くじアプリ利用者が増えている一方、紙の購入者の中には管理が不十分なまま年を越す人もいる。売り場関係者は「スマホアプリとの併用で確認しやすくなる」と注意喚起を続けている。
迫る期限と最後の呼びかけ
1等7億円の当選くじの引換期限は 来年1月6日 に迫る。期限を過ぎれば、当選者は一円も受け取ることができない。売り場には連日、「もしかして自分かもしれない」と古い宝くじを持参して確認する客が訪れているという。
山本店長は「せっかくの当たりを涙をのんで手放してほしくない。昨年のくじを必ず今一度確認してほしい」と語り、年末にかけて啓発を強める考えを示す。
年末ジャンボは“人生を変える夢”として長年親しまれてきた。だからこそ、持ち主が気づかぬまま夢が消えていく未換金問題は、毎年のように議論を呼ぶ。今回の一宮のケースは、当選金制度の意義とともに、宝くじを手に取る一人ひとりの管理意識をあらためて問うものとなっている。



