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いわき信用組合、反社会的勢力へ10億円供与 恐怖と癒着の30年、信頼失墜の実態

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いわき信用組合が反社に資金提供

福島県いわき市のいわき信用組合が、反社会的勢力に総額約10億円を提供していたことが新たに判明した。

不正融資や資金流用など相次ぐ不祥事の陰で、旧経営陣が長年にわたり反社会的勢力と関係を持ち続けていた実態が浮かび上がった。発端は1990年代、右翼団体による街宣活動を“鎮めるため”の資金提供だった。以後、恐怖と依存が絡み合い、金融機関としてあるまじき癒着構造が形成されていった。調査報告書が明らかにしたのは、隠蔽、脅迫、そして組織の倫理崩壊である。

 

「黙らせ資金」が始まり 組織ぐるみの闇取引

いわき信用組合が設置した特別調査委員会の報告書によると、事の発端は1990年代初頭。当時の理事長側が右翼団体による街宣活動を止めるため、「解決料」の名目で反社会的勢力に数億円を支払ったのが始まりだった。これが常態化し、以降も関係は断ち切られずに続いた。

金融機関が反社会的勢力に資金を流す行為は、明確な法令違反であり、社会的信用を根底から揺るがす行為だ。それを“問題処理”の一手段として選択した経営陣の判断は、経営倫理の崩壊を象徴している。

 

江尻元会長「もっと早く切るべきだった」 恐怖が支配した経営

特別調査委の調べで、2004年から2016年まで理事長を務めた江尻次郎・元会長が、反社会的勢力に支払った金額が総額10億円前後に上ると説明した。
委員長の貞弘賢太郎弁護士によれば、江尻氏は「もっと早く(関係を)切るべきだった」と後悔を口にしたという。貞弘氏は記者会見で「自宅周辺で街宣が続き、恐怖心がトラウマになっていたのだろう」と述べた。

江尻氏の自宅周辺では2000年代に街宣車の出没が相次いだとされ、近隣住民は「防犯カメラが何台も増えたのを覚えている。まさか反社とつながっていたとは」と驚きを隠せない様子だった。
恐怖を理由に反社会的勢力との関係を維持したという説明は、金融機関のトップとしては到底通用しない。組織としての危機管理も欠如していた。

 

元職員「やっぱりそうだったのか」 本店前に街宣車

当時を知る元職員の男性は、「小名浜の本店前に街宣車が何度も来ていた。数年にわたり、複数回見た」と証言する。街宣が収まった後も、職員の間では「何か裏があるのでは」と囁かれていたという。
「資金提供があったと聞いて、やっぱりそうだったのかという思いだ」と男性は語る。
組織全体が沈黙を守り、疑問を封じていた構図が、いま明らかになりつつある。

 

反社リスト掲載人物から紹介融資 9件で28億円超

特別調査委の調査では、反社会的勢力関係者への不透明な融資も相次いでいたことが確認された。
2018年には暴力団幹部とされる人物の紹介で、茨城県内のテナントビル購入資金として約3億円を融資。2019年から2024年の間にも、同様の紹介案件が9件、計約28億5千万円に達していた。
金融庁が定める「反社会的勢力との取引遮断」の原則を真っ向から踏みにじる行為であり、内部統制は完全に機能不全に陥っていた。

さらに旧経営陣の一人が、特別調査委に対して「不正融資の記録が入ったノートパソコンをハンマーで破壊し、ごみ袋に入れて可燃ごみとして捨てた」と説明したことも明らかになった。
「解析されれば反社への資金提供が露呈するのを恐れた」という供述は、組織ぐるみの隠蔽体質を如実に物語っている。

 

総代会で陳謝も…「もう信用できない」 組合員の失望

10月31日、いわき市内で開かれた総代会で、金成茂理事長は「さらに新たな不祥事が判明した」と深く頭を下げた上で、「すべてのうみを出し尽くし、マイナスからの再出発となる」と述べた。
だが、組合員の表情は冷ややかだった。出席した運送業者の男性(70代)は「うちは40年以上の取引があるが、もう信用できない」と断言。「反社と結びつくような体質だったのだろう。新しい経営陣も気づいていないはずがない」と淡々と語った。

組合を支えてきた地域住民や事業者の間には、「また不祥事を起こしたら終わりだ」という諦めにも似た失望が広がっている。
金融機関が社会の信頼を裏切った代償は、計り知れないほど大きい。

今回の不祥事は、一地方の信用組合だけの問題ではない。
不正融資を指摘され、それを“黙らせるため”に反社会的勢力へ資金を流し、結果として脅され続けたという構図は、金融の根幹を揺るがす。
反社会的勢力に「逃げ道」を与えない法整備と、監督機関による徹底した再発防止策が急務だ。

組織の倫理が崩れたとき、恐怖と妥協がどれほど深い闇を生むのか。いわき信用組合の事例は、その危険性を示す“警鐘”である。


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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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