
こども家庭庁の新トップに就任した黄川田仁志氏(55)をめぐり、早くも不安と不満の声が噴出している。前任の三原じゅん子氏(61)が“28秒会見”で大炎上した直後ということもあり、新体制への注目が集まるなか、国民が懸念するのは、黄川田氏の“ルッキズム発言”の記憶だ。多様性や個性の尊重が求められるこども家庭庁のトップに、なぜこの人物が選ばれたのか――政権の判断にも疑問が投げかけられている。
わずか1か月前の「顔が濃い方」発言
問題の発言があったのは、ほんの1か月前の9月19日。高市早苗首相(64)の自民党総裁選出馬会見で、当時、高市陣営の司会進行を務めていた黄川田氏は、記者の質問者を指名する際にこう口にした。
「一番奥の机の顔が濃い方」
会場は一瞬静まり返り、高市首相が「なんてこと言うの、顔が濃い……すみません」とその場で謝罪を入れる場面があった。しかし、それで終わりではなかった。黄川田氏は続けて「顔が白い、濃くない方」と別の記者を指名し、再び高市首相が「すみません」とフォローするという異例の光景が繰り返された。
「1回目なら言い間違いで済んだかもしれませんが、2度続けば“価値観の問題”です」と語るのはテレビ局の政治部記者だ。
「“顔の濃い・薄い”という表現自体が、今の時代には通用しません。外見をもとに人を識別する行為はルッキズム(外見差別)にあたります。しかも会見は公式の場。多様性を重んじる社会を掲げる高市内閣において、こうした発言をする人物が省庁のトップに座るのは、まさに逆行だと感じました」
「不適切な表現で指名」も釈明に疑問
騒動の直後、黄川田氏は「不適切な表現で記者の方を指名したことをお詫びしたい」とコメントを発表した。しかし、この謝罪は「軽すぎる」「本人にルッキズムの意識がない」といった批判を招く結果となった。
SNS上では次々と懸念が寄せられている。
《黄川田さんって、あの“顔が濃い方”の人?大丈夫なの?》
《こども家庭庁のトップがルッキズム発言とか、時代錯誤もいいところ》
《半年以内に失言で更迭される気しかしない》
《また失言したら、今度は高市さんの責任問題になる》
失言癖のある政治家は過去にもいたが、今回は“子どもと多様性”を扱う省庁の長というだけに、国民の目は一層厳しい。
担当分野の多さに不安広がる
黄川田氏が就任したのは、内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、消費者及び食品安全、こども政策、少子化対策、若者活躍、男女共同参画、地方創生、アイヌ施策、共生・共助)など幅広い分野に及ぶ。さらに女性活躍担当、共生社会担当、地域未来戦略担当なども兼務しており、その職責はきわめて重い。
本人は就任会見で「担当する分野がかなり多く初めは驚きましたが、全身全霊で取り組んで参ります」と意気込んだ。しかし、その裏で「多様性を理解していない人物が多様性を語るのか」と皮肉交じりの声が相次いでいる。
政治評論家は次のように指摘する。
「こども家庭庁は、ジェンダー平等や個性尊重を国の基本理念として掲げています。にもかかわらず、ルッキズム的な発言をした人物がその象徴となると、政策の信頼性そのものが損なわれる。三原前大臣の“28秒会見”でイメージが悪化した直後だけに、今回の人事は火中の栗を拾うようなものです」
歴代大臣への不満と比較される現職
「またか」との声が広がる背景には、歴代大臣への失望もある。SNS上では「三原じゅん子、加藤鮎子ら、官僚の書いた答弁書がないと喋れないポンコツ大臣が多すぎる」といった厳しい意見が散見される。
特に、三原前大臣の記者会見拒否や、加藤鮎子前こども政策担当相の“言い回し失敗”などが続いたことで、国民の政治不信が高まっていた矢先の人事である。黄川田氏の就任は「変化ではなく継承」「刷新ではなく再演」と受け止められてしまった印象も否めない。
黄川田仁志氏の経歴と人物像
黄川田氏は1969年、岩手県大船渡市生まれ。早稲田大学教育学部を卒業後、民間企業を経て政治の世界に入った。父の黄川田徹・元衆院議員の秘書を務めたのち、2005年の衆院選で初当選。現在は自民党所属で5期目を迎える。
地元では地域振興や防災に力を入れるなど実直な印象で知られるが、党内では「目立たない」「存在感が薄い」とも評されてきた。今回が初入閣であり、政治家としての資質が問われる局面となっている。
時代錯誤の印象を払拭できるか
高市首相が掲げる「安定と実行の内閣」において、黄川田氏は重要ポストを担う。だが、わずか1か月前のルッキズム発言が再び掘り起こされている現状は、本人の発信力や時代感覚への疑問を強めている。
国民の中には「顔が濃い」発言を“笑い話”と受け流す人もいるが、子どもや若者の個性を尊重する立場にある者としては決して軽い問題ではない。
「すべての子どもが自分らしく生きられる社会」というこども家庭庁の理念を、言葉でなく行動で示せるか――。
黄川田仁志氏の真価は、これから問われることになる。