
島根県奥出雲町の山中で7月に発見された“記憶喪失のモヒカン男性”をめぐり、正体を巡る憶測がSNS上で一気に広がっている。男性は自らを「田中一」と名乗るが、いまだ本名は判明していない。
不可解な現金60万円や、逮捕・釈放を経た再起の物語に加え、報道をきっかけにZ李氏が「2009年のアパレルブランド・JAMES&COのブログに登場するバイヤーではないか」とXで指摘。ネット世論は「髪型や目、耳の形が一致している」と盛り上がりを見せている。
Z李氏がXで「ほぼ確定では?」と投稿
ABCニュースなどが「記憶喪失男性の情報提供を呼びかけ」と報じた直後の9月2日22時頃、SNSで大きな反応が生まれた。Z李氏はXで「これはほぼ確定じゃないのか? JAMES&COの2009年のブログに出てるこの人だろう」と投稿。さらに「ケンシロウと霞拳志郎くらい似ている」と北斗の拳に例え、ユーモアを交えて拡散した。
投稿では男性の“モヒカン頭”を手がかりにした比較写真も紹介され、髪型だけでなく、目の輪郭や耳の形まで酷似しているとされる。特に独特すぎるモヒカンスタイルは「個性的すぎて逆に身元特定に直結した」と半ば笑い話のように語られ、週刊誌的な関心を呼んでいる。
山中で発見された不可解な状況
男性が見つかったのは7月10日頃。国道314号沿いの草むらで目覚めた時、強烈な頭痛とともに自分が誰かも分からない状態だった。半袖Tシャツに黒ズボン、サンダル姿。傍らにはブランドバッグが落ちており、バッグの中にはなぜか現金60万円がポリ袋に入れられていた。免許証などの身分証明書はなく、携帯電話も見つからなかった。
財布には1円も残っていなかったが、バッグについては「自分のものだと不思議に感じた」という。命をつないだのは名水「延命水」。その後、住民に助けられながら出雲市に出て野宿生活を続けた。
逮捕と釈放、グループホームへ
8月には大阪に移り、グリコ看板を前にしても記憶は戻らず、東尋坊など断片的な記憶を頼りに放浪を続けた。生活に困窮し市役所を訪ねた際、職務質問でバッグから折り畳みナイフが発見され、銃刀法違反で逮捕された。
しかし、意図的な所持ではないと判断され、不起訴処分となる。その後「更生緊急保護」の仕組みで大阪のグループホームに入所し、NPOの支援を受けながら飲食店での体験勤務など生活再建を模索している。
「自分が誰か」依然不明のまま
男性は標準語を話し、30代後半から40代前半とみられる。特徴的なモヒカンをあえて維持しているのも「情報提供につながるのでは」との考えからだという。現在もNPO法人「ぴあらいふ」を通じて情報提供が呼びかけられており、ネット上の憶測が本物かどうかは依然として分からない。
SNS上では「普通のサラリーマンには見えない」「何かのアーティストかチャレンジャーでは」という声も出ている。記憶の糸口を掴むのが先か、知人の目撃情報が寄せられるのが先か――。不可解でどこか寓話的な“モヒカン男”の物語は、今も続いている。