ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

石破首相「退陣」報道はなぜ誤報となったのか?党内抗争とメディアの情報戦の深層

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー

「退陣へ」報道の嵐、首相本人が真っ向否定

石破退陣か?

7月23日午後、東京と大阪に配布された号外が永田町に激震をもたらした。「石破首相退陣へ」。報じたのは読売新聞と毎日新聞であり、後者は「自民党が8月にまとめる参院選総括を踏まえ、退陣を表明する意向を固めた」と具体的に記した。しかし、その数時間後、石破茂首相は記者団の前で自らの口でこう明言する。

「私の出処進退については一切話は出ておりません。一部にそのような報道がございますが、私はそのような発言をしたことは一度もございません」

首相経験者3名(麻生太郎氏・菅義偉氏・岸田文雄氏)との異例の会談後、報道陣の前に現れた石破氏の表情には動揺はなかった。

実際、この「退陣報道」はどのように生まれたのか。そして、なぜこのような誤報とも取れる事態が起きたのか。

 

党内抗争と“石破おろし”、情報リークの構図

報道の根幹には、自民党内における退陣圧力の高まりがある。参院選で過半数割れの敗北を喫し、地方組織や青年局を中心に「即時退陣」の声が噴出。神奈川県連の梅沢幹事長は「辞任が一番わかりやすい」と公然と要請した。

さらに23日には、全国の青年局長らを集めたオンライン会合が開かれ、中曽根康隆党青年局長によれば「首相の即時退陣や執行部の刷新を求める声が相次いだ」という。昨年の衆院選、今年6月の東京都議選、そして今回の参院選と「三たび敗北」を喫した石破体制への信頼は失墜しつつある。中曽根氏は「三つの戦いで民意を得られなかった。総裁、執行部の責任であり、重く受け止めるべきだとの声が多数を占めた」と語った。

各所でくすぶる不満が「石破おろし」の大きなうねりとなり、首相退陣につながるか。そのカギを握るのは、首相と距離を置いてきた非主流派の動きだ。

 

昨年の総裁選で惜敗した高市早苗氏を支援した議員らは23日、東京・赤坂の衆院議員宿舎に集まり、対応を協議。両院議員総会の開催を求めていくことで一致したという。

両院議員総会は、党大会に次ぐ重要会議であり、緊急事項の議決権がある。党所属国会議員の3分の1以上による要求があれば「招集すべきもの」と、党則に定められている。

22日夜には、萩生田光一元政調会長ら旧安倍派の議員数人が集まり、両院議員総会の開催を求めていく確認をしたとみられている。中堅議員は「署名集めを仕切っているのは萩生田氏だ」と述べ、活動に協力していく構えを見せた。

 

誤報か、観測気球か 報道各社の「メンツ」も錯綜

そもそも総理大臣の退陣は記者会見などの正式な場で行われるのが慣例だ。ぶら下がり取材で出処進退に触れることは極めて異例であり、石破首相もこれを一貫して否定した。

にもかかわらず、読売と毎日は「退陣確定」と断定的に報じた。その裏には、報道機関としての「特ダネ競争」と、リーク情報に対する“賭け”があるとされる。特に毎日は、旧派閥関係者からの情報を基に観測気球的に記事を先行配信し、読売はその後を追う形で号外を展開したとみられる。

 

フジテレビ報道局の高田圭太政治部長はFNNプライムオンラインでこう分析していた。

「これは情報戦です。石破総理はまだ続投の意志があるが、党幹部の一部は既に退陣を既定路線として報道させ、既成事実化を狙っている。その齟齬が、誤報という形で露呈した」

さらに報道各社としても「誤報」で終わらせれば、信用失墜は避けられない。今後は「退陣論」を正当化すべく、より踏み込んだ報道を続ける公算が高い。

 

本人は続投を模索、「総裁」だけ辞める可能性も?

石破首相本人は、「日米関税交渉の合意」を続投の根拠として掲げた。実際、トランプ大統領との間で一定の合意がまとまり、石破氏は「国益に資する合意が実現した」と自賛している。

しかし、党内の不信は根強い。「3連敗」に対する責任論、地方からの突き上げ、そして幹部の見切り。これらを覆すのは困難を極める。

 

退陣報道の“嘘”が真実になる日

今回の騒動は、一つの号外から政権の命運を左右する流れを生み出した。「誤報」であっても、それが党内の退陣論を正当化し、石破氏の進退を追い詰める道具となる――この構造は、政治とメディアの「共犯関係」とも言える。

政治とは、時に“本当”より“そう見えること”が重視される世界だ。石破首相が否定すればするほど、退陣の足音が現実味を帯びる皮肉。その厚顔さを称して「ネバネバ力」と揶揄する声すら聞かれる。他人に退陣を迫りながら、自らは辞さない姿勢に「面の皮の厚さ」を指摘する声もある。

トランプ関税交渉が一区切りした今、米国との関係悪化も取り沙汰される中で、石破政権はますます難局に立たされている。

Tags

ライター:

ライターアイコン

寒天 かんたろう

> このライターの記事一覧

ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

関連記事

タグ

To Top