山本一郎氏のロシア製ボット論が影響か

2025年7月16日、SNS「X(旧Twitter)」上で、参政党や日本保守党を支持し、政権批判を展開していた複数の右派系アカウントが一斉に凍結された。凍結対象となったのは、「JAPAN NEWS NAVI(@JapanNNavi)」「himuro(@himuro398)」「一華(@reo218639328632)」「まったりくん(@mattariver1)」「Poppin Coco(@PoppinCoco)」など、いずれもフォロワー数が数万から数十万に達する影響力のあるアカウントだ。
山本一郎氏のNOTE投稿が発火点に
この一斉凍結の背景には、投資家であり情報戦に詳しい評論家・山本一郎氏が7月15日に公開したNOTEの影響があるとみられている。詳報は昨日お伝えした「ロシア製ボットが参政党を“ブースト”したのか?」山本一郎氏の警鐘とSNS空間の真実とは?という記事を読んでいただきたい。
概略としては「参政党を支えたのはロシア製ボットによる反政府プロパガンダ」と題し、SNSにおける外国勢力、特にロシアの情報操作の可能性を指摘。「怒りを駆動源とする投稿群」が不自然にバズっている構図を、認知戦の視点から分析した内容で、大きな反響を呼んだ。
氏は投稿内で、参政党や日本保守党が意図的に外国勢力とつながっていたとは明言していないものの、「SNS構造が外部勢力の操作に弱い」とする警鐘を鳴らしていた。NOTE公開以降、該当するアカウントへの通報が急増したとされ、X側の対応が一気に進んだとみられている。
一斉凍結に喜ぶ“政権側”と“リベラル”勢の反応
今回の凍結劇を受けて、政権寄りやリベラル系のXユーザーの一部は「ようやくデマ拡散勢力に制裁が下った」「選挙を前に正しい情報空間が整えられた」として歓迎の姿勢を見せている。
「陰謀論で大衆を扇動してきたアカウントが一掃されてスッキリした」という投稿も複数確認され、むしろ“嬉々とした”反応が目立っているのが現状だ。
しかし、こうした「思想的対立を背景にした喜びの声」は、表現の自由の観点からみればきわめて危うい。仮に特定の思想や言論傾向を根拠に凍結が行われていたとすれば、それは一種の「言論統制」とも言えるからだ。
正当な規制か、それとも過剰な封殺か
問題は、今回の措置が“悪質なデマ”への対処として妥当だったのか、それとも特定の政治的立場を狙い撃ちにしたものだったのか、明確な説明がないまま事態が進行していることだ。
X社は現時点で、凍結理由の詳細を開示しておらず、一般ユーザーには「なぜ凍結されたのか」が分からない状態が続いている。これはSNSというプラットフォームの透明性と説明責任において、極めて大きな課題である。
「デマの拡散」と「表現の自由」はしばしば衝突する領域だ。一方から見れば、政権批判や陰謀論の拡散は“社会不安の原因”となるかもしれないが、もう一方から見れば、癒着と既得権益にまみれた政権に対して「真実の目」を向ける行為に他ならない。
SNSが単なる公共空間ではなく、情報戦や政治工作の舞台となっている今、どこまでが自由な言論で、どこからが社会的リスクなのか。その線引きは極めて難しく、だからこそ、きちんと議論を深める必要がある。
選挙直前のタイミングにも疑念
参議院選挙を数日後に控えるこのタイミングで、特定の政治スタンスを持つアカウントが一斉に排除されたことに対しては、「性急すぎる」「選挙介入ではないか」といった批判もある。
たとえば、「#こども家庭庁解体論」を繰り返していた複数のアカウントも凍結対象となっており、保守派からは「政策批判すら許されないのか」と憤る声もあがっている。
政権への批判や異論が“デマ”とされ、SNS上から次々に姿を消していくようであれば、それは民主主義の健全性を脅かす重大な前例となりかねない。
構造的な問題としての“言論空間の劣化”
山本一郎氏がNOTEで示した「怒りが可視化されやすいSNS構造」は、確かに世論形成を歪める力を持つ。だが同時に、SNSは市民が声を上げられる数少ない場でもある。その空間から政権批判の声を過剰に排除してしまえば、むしろ不信と分断が加速するだろう。
悪質なデマや外国勢力の関与があったか否かの検証は不可欠だが、それと同時に、X社には今回の措置がどういった基準と手続きに基づいて行われたのかを明確に説明する責任があるのではないか。
SNSの未来が、透明性と信頼性によって支えられるのか。それとも、無言の統制によって静寂を装う空間となるのか。今回の一斉凍結は、その分水嶺に立っている。