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プレステージで晒され全裸監禁 上平竣・高野力ら逮捕 6000人の「口喧嘩サークル」の実態とは

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《論破王が生んだ闇》口喧嘩サークル「プレステージ」で晒された男、全裸監禁され“20万円で売却未遂”

口喧嘩サークルとは

「論破」から「晒し」、そして「全裸監禁」へ——。
2025年4月、奈良市で発生した拉致監禁事件は、単なる暴力事件にとどまらず、現代ネット文化の歪みと、匿名集団の暴走、そして半グレという暴力構造が接続した“時代の象徴”のような事件だった。

 

事件の舞台は奈良市内。20歳の男性が午前5時ごろ、コンビニに向かおうとしたところを背後から引き倒され、車に押し込められた。そのまま東大阪市の集合住宅へ連行され、衣服を脱がされ、全裸のまま約6時間半にわたり監禁されたという。

男たちは「この被害者を20万円で引き取る」とやりとりを交わしていたとされる。いわば、“人間の支配権”を現金で売ろうとしていた。
だが、被害男性が「腹が痛い」と言ってトイレに行くふりをし、逃げ込んだコンビニで110番通報。事件は発覚した。

大阪府警は、生命身体加害略取、監禁、人身売買未遂の容疑で、上平竣容疑者(30=大阪市浪速区の会社員)ら計6人を逮捕。中には未成年の少年3人も含まれていた。

 

「口喧嘩サークル」って何?

にわかには信じがたい事件の背後にあったのが、「口喧嘩サークル」と呼ばれるSNS発の匿名集団だった。SNSでは、「半グレ?反社?何なんだろ」「6000人もいるってどういった実態なのか?」といった集団に対する疑問の投稿が相次いだが、それもそのはず、確かに口喧嘩サークルというのはあまり聞きなじみがない存在だ。

事件に関与したとされる高野力容疑者(24)は、「183(イヤミ)」というハンドルネームで、6000人規模の「プレステージ」というサークルのリーダー格だったという。

この「口喧嘩サークル」、一体何者か。

 

匿名SNSにうごめく“晒し文化”の正体とは

「論破」や「晒し」といった行為が“エンタメ化”したのは、2000年代のニコニコ動画や2ちゃんねる文化にルーツがあるとされる。ひろゆき氏のような“論破系キャラ”が持てはやされたことにより、ネット上では「口論で相手を言い負かす」「論破する」ことがヒーロー視される空気が醸成されていった。

論破芸の隆盛は、2ちゃんねる創設者のひろゆき氏がテレビやネット番組で“論破王”的なキャラクターとして登場した2000年代以降のネット文化とも軌を一にする。「論破」や「晒し」は、ネット上でのちょっとした“見せ場”であり、“煽り合い”がエンタメとして成立していた時代の名残でもある。

 

その意味で、「口喧嘩サークル」とは、暴力団でもなければ明確な犯罪グループでもない。むしろ、DiscordやTikTokで遊ぶ“クソガキのガヤの延長線”にある存在なのかもしれない。

かつて同種のDiscordのコミュニティにいた者に話を聞くと、「口喧嘩サークルはおそらく、匿名アカウント同士が口喧嘩と称して罵倒を繰り返し、相手の動画を晒し、侮辱することに快感を覚える若者たちの「競技場」的な場のことを指すと思う」とのことだった。

プレステージは、そうした空間の中でも一定の規模を誇っていた団体なのではないか。メンバーは“格付け”され、リーダーの一声で“晒し対象”が決まり、仲間内で拡散される。言葉の暴力がエスカレートし、やがて制裁が現実に及ぶ——そんな構図が静かに成立していることが予想される。

 

ただ、今回の事案をみるに、もはや「口喧嘩」とは名ばかりで、実態は晒しや人格攻撃、果てはリアル情報の暴露にまで及ぶ過激な空間と化していたのではないか。

同種のコミュニティ参加者も実際に、「晒し上げにあうと、引退しかない」と語る。内部では、リーダー格が「晒し対象」を指名し、サブアカウント群が一斉に攻撃を加える構造も存在しているようだ。今回の被害者も、脱退後にサークル関係者の“失態動画”を晒したことで、報復の対象になったとされる。ネットの“口論文化”が、現実の暴力へと転化する構図がここにある。

 

「松本狂う」×「プレステージ」 ネット発“二重構造”の暴力装置

加害者の1人、上平竣容疑者は「松本イサト」と名乗り、20人規模の半グレ集団「松本狂う」のリーダーとされている。一方、共犯の高野力容疑者は「183(イヤミ)」という名で「プレステージ」の実質的なリーダーだった。

この事件は、報道では、SNS内で勢力を拡大するトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)と、従来型の半グレグループが交差したケースとして扱われている。警察関係者は「暴力団排除条例により“看板のない半グレ”が台頭し、ネット文化と混ざり合って、新たな犯罪のかたちを生んでいる」と語っている。

 

ただ、実態は上述の通り、大抵のメンバーは単なるガキであり、ごく一部のメンバーが精鋭化し暴走しただけだろう。上平、高野の両容疑者がこの程度の事案で懲役に赤落ちするかは初犯であればまずなく、執行猶予の弁当持ちだろうが、こういった人間は、塀の中に落ちてきちんと社会の奥深さを学んだ方が本人たちの為にもいいハズだ。

「支配権を20万円で売買」 歪んだ所有欲が人身売買の定義を超える

ところで、今回の容疑は「人身売買未遂」である。だが問題はその内実にある。被害者は、性的搾取や労働力としてではなく、「支配の対象」として金銭取引の対象となっていた。

つまり、20万円で“その人間を自由に扱える権利”を売買しようとしたのだ。上平容疑者は過去にもSNS上で「人間を飼う」といった投稿を繰り返していたという。おそらくエロ漫画の見過ぎだろうが、人格の所有、尊厳の剥奪、支配の喜び、それらが暴力と結びついたとき、もはや“犯罪のジャンル”すら変質する。

欧米では「ドミネーション契約」や“隷属関係を商品化する思想”が問題視され始めているが、日本でもそれに似た暴力の兆候が表れたかたちだ。

 

若年世代が問われる「晒しと暴力の境界線」

警察は現在、6人の認否を明らかにしていないが、今後の捜査次第では「プレステージ」内部の構造や、その他ネットグループの関与も浮かび上がってくる可能性がある。

ネットにおける“言葉の暴力”が、現実の肉体的な加害に転化する現象は、今後さらに多発する恐れがある。口論サークル、晒し動画、支配権の売買。若者たちが遊び半分で踏み入れるその世界は、想像以上に“リアルで危険”なのかもしれない。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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