口コミデータで見えた業界の現在地

「ポムの樹」が突如としてSNSのトレンドを席巻したのは、4月上旬のことだった。騒動の火種となったのは一枚の写真。ある利用者が「普通にパフェを頼んだらこれが出てきた」と投稿した画像には、既成概念を超えるサイズの“パフェ”が写っていた。器はパフェグラスではなく、まるで丼。
想定外のボリューム感にSNSでは「コメダ式で行け」「器がまず違う」といった反応が瞬く間に拡散した。
だが今回のトレンド化は、単なる“デカ盛り”ネタにとどまらなかった。ポムの樹ファンの間で次第に注目されたのが、その“裏側”である。あるユーザーは「オムレツ作る人のグレードがあり、金は全国で2人」と明かし、他のユーザーが「銀シェフのオムライスは人生一美味かった」と続けた。SNSは、やがて「ポムの樹という文化」に対する敬意と懐かしさで満ちていった。
共感からはじまるブランドとの再接続
この現象を、単なるバズではなく「ブランドとの再接続」として捉えることができるのではないか。今回のSNSトレンドは、単に“ウケるネタ”として消費されたのではなく、生活者が記憶の奥に持つ「外食体験」への共鳴が根底にあった。
「昔、卵を割るだけのバイトしてた」と投稿する人もいれば、「意味不明なデカ皿が出てくるけど、それが好き」と笑う人もいた。これは、“定義”すれば、ポムの樹という存在が「量」や「技術」だけでなく、一人ひとりの人生に刻まれた記憶の装置であることを示している。
業界比較で見えた「提供時間」への評価差
他方、オムライス業界の現在地をデータで見てみると、興味深い傾向が浮かび上がる。
口コミ分析ツール「口コミコム」を運営する株式会社mov(東京都渋谷区)は、オムライスチェーン4ブランド(ポムの樹/ラケル/おむらいす亭/卵と私)の口コミ2,880件を調査。
その中で「ラケル」がもっとも平均評価(★3.92)で高評価を獲得。「接客」や「雰囲気」などのキーワードもポジティブ率が高かった。
一方で、「ポムの樹」では「提供」に関する不満の声が比較的多く、「提供」キーワードのポジティブ率は23%と他ブランドより低い水準となった。特に料理の提供時間に関する声が散見されている。
ただし、都道府県別に見ると「北海道」では1店舗あたりの口コミ数が49.0件と最多を記録し、「福島県」では平均評価が★4.25と最も高いなど、地域によって評価は大きく異なる。これは「ポムの樹」がローカルとの絆を重んじている証左とも読み取れる。
企業の成り立ちからにじむ「食の民主化」
「ポムの樹」を運営する株式会社ポムフードは、大阪・枚方市で生まれた企業だ。現社長の出原孝雄氏は、もともと建設資材関連のビジネスから飲食へ転じた異色の経営者。最初はフランチャイジーとして店舗を運営していたが、経営難に陥った本部を逆に買収し、フランチャイザーとして再出発するという異例の道をたどった。
専務の出原久美子氏は、YouTube番組で「企業文化の違いや人材問題に苦しんだ」と当時を振り返っている。だが、だからこそ“現場主義”と“食を通じた絆”を何よりも大切にしてきた。
同社が掲げる価値観の柱は、「技術力」「豊富なバリエーション」「素材へのこだわり」だ。卵は厳選し、ライスとソースの組み合わせは200種を超える。2014年には「オリコン顧客満足度ランキング 洋食部門」で総合1位を獲得。単なるオムライス専門店にとどまらない存在感を確立している。
“提供体験”という改善可能な試作領域へ
今回、口コミで課題とされた「提供時間」の問題は、今後の“プロトタイピング”領域とも言えるだろう。SNSでの共感や企業としての信頼を、次の段階に進めるために、接客・オペレーションの磨き直しは避けて通れない。
とはいえ、今回のトレンド化が証明したように、「ポムの樹」には語りたくなる物語がある。笑って、懐かしんで、感動する。そんなブランドは、そう多くはない。食の世界において、共感からはじまるブランドの再生──。それを最前線で示す一例として、ポムの樹は再び注目を浴びている。