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位置情報を活用したスマートフォンゲーム「ポケモンGO」が2016年に登場すると、世界中で爆発的なブームを巻き起こし、累計ダウンロード数は10億件を突破した。その開発企業である米ナイアンティックが、ゲーム事業の売却交渉を進めていると報じられた。買収を検討しているのは、サウジアラビア系のスコープリー。交渉の背景には、ナイアンティックの経営課題とゲーム市場の変化がある。この記事では、ポケモンGOの成功の歴史とともに、ナイアンティックの現状と今後の展望を探る。
ナイアンティック、ゲーム事業売却交渉へ
スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」を開発した米ナイアンティックが、サウジアラビア系のゲーム会社スコープリーにゲーム事業を売却する方向で交渉していることが明らかになった。ブルームバーグによると、交渉は最終段階に入り、売却価格は約35億ドル(約5300億円)と見積もられているという。
スコープリーは、サウジアラビア政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」の子会社であるサビー・ゲームズ・グループの傘下にあり、近年ゲーム業界への積極的な投資を進めている。ナイアンティックとスコープリーの両社は、この件に関するコメントを控えている。
世界的成功を収めた「ポケモンGO」の軌跡
2016年:爆発的ヒット
「ポケモンGO」は、2016年7月にリリースされると同時に世界的なブームを巻き起こした。配信初月で1億ダウンロードを突破し、ギネス世界記録にも認定された。さらに、最も早く売上1億ドル(約130億円)に到達したゲームとしても記録されている。
ダウンロード数の推移
・2016年:6億3000万ダウンロード(第1四半期で2億2800万ダウンロード)
・2020年:1億2000万ダウンロード(前年より増加)
・2023年:全世界で1060万ダウンロード(第2四半期)
収益とプレイヤー数
ポケモンGOは、登場以来一貫して高い収益を上げ続けている。
2019年には総収益8億9400万ドル(約983億円)、累計売上31億ドルに到達。2020年には7億5700万ドルで世界3位のモバイルゲーム収益に。2023年1月〜8月には3億2400万ドルの課金収益があったという。
プレイヤー数も堅調に推移しており、2023年11月時点での月間アクティブプレイヤーは8000万人以上といわれている。
ナイアンティックの経営課題と売却交渉の背景
「ポケモンGO」の成功によりナイアンティックは一躍有名となったが、その後のゲーム開発では苦戦が続いた。2019年に「Harry Potter: Wizards Unite」、2021年に「Pikmin Bloom」、2022年には「NBA All-World」をリリースしたものの、いずれも期待ほどの成功を収めることができなかった。
さらに、2023年には社員の約25%にあたる230人を削減するなど、経営の効率化を図る動きが見られた。モバイルゲーム市場の成熟や競争の激化もあり、同社は収益の多様化を求められていた。
「ポケモンGO」は今後も続くのか?
ナイアンティックのゲーム事業がスコープリーに売却された場合、「ポケモンGO」の運営にどのような影響が出るのかが注目される。現在のところ、スコープリーがポケモンGOのサービスを終了する計画はないとみられるが、運営方針の変更や新たなマネタイズ戦略が導入される可能性がある。
また、ポケモンGOは任天堂、ポケモン社、ナイアンティックの3社による共同プロジェクトであり、ライセンス契約の変更なども今後の焦点となるだろう。
まとめ
「ポケモンGO」は、2016年のリリース以来、10億ダウンロードを超える世界的なヒットを記録し、現在も月間アクティブプレイヤー数8000万人超を維持している。しかし、開発元のナイアンティックは経営課題に直面し、ゲーム事業の売却交渉を進めていると報じられた。交渉が成立すれば、運営のあり方に変化が生じる可能性がある。ポケモンGOの今後の展開に引き続き注目したい。