![Googleマップのスクリーンショット](https://coki.jp/wp-content/uploads/2025/02/googlemap-screenshot.jpg)
アメリカのトランプ政権下で、「メキシコ湾」の名称が「アメリカ湾」に変更されるという決定が波紋を広げている。GoogleマップやAppleマップなどの地図アプリでも、この名称変更が反映され、アメリカ国内では「アメリカ湾」と表示されるようになった。一方、メキシコ政府や国際社会からは強い反発が起こっており、AP通信が従来の名称を使用し続けたことでホワイトハウスの取材を禁止されるなど、報道の自由をめぐる問題にも発展している。
本記事では、名称変更の背景や影響について詳しく解説する。
名称変更の背景 「メキシコ湾」から「アメリカ湾」へ
米国時間の2月10日、Googleは地図アプリ「Googleマップ」において、アメリカ国内で「メキシコ湾(Gulf of Mexico)」と表示されていた名称を「アメリカ湾(Gulf of America)」に変更したと発表した。
これは、トランプ大統領が1月20日に署名した大統領令に基づくもので、米国の公式地理名称情報システム(GNIS)が更新されたことを受けた措置である。
さらに、Appleの地図アプリ「マップ」も2月11日より、米国の地域設定を適用すると「メキシコ湾」ではなく「アメリカ湾」と表示するように変更された。Appleはこの変更について公式コメントを発表していないが、Googleと同様、米国政府の地名変更方針に準拠したものとみられる。
メキシコ政府の反発と国際社会の反応
この決定に対し、メキシコ政府は強く反発した。メキシコのシェインバウム大統領は1月31日、Googleに抗議文を送付し、「メキシコ湾という名称は歴史的かつ国際的に確立されたものであり、米国が一方的に名称を変更することはできない」と主張している。
また、AP通信は「メキシコ湾」という名称を維持する方針を発表し、「この名称は400年以上使用されてきた歴史的なものだ」と説明した。さらに、ホワイトハウスがAP通信に対して「アメリカ湾」と表記しなければ大統領執務室での取材を禁止すると通告したことが大きな問題となった。
ホワイトハウス記者会(WHCA)もこの措置を批判し、「報道機関に対して表記の変更を強要することは報道の自由を侵害する」との声明を発表した。
トランプ政権の意図とは?
トランプ大統領は、「メキシコ湾は米国の不可分の一部であり、米国の偉大さを称えるために名称を変更する」と述べ、2月9日を「アメリカ湾の日」に制定することも発表した。
トランプ政権はこれまでにも地名の変更を進めており、アラスカ州の「デナリ山(旧称マッキンリー山)」を再び「マッキンリー山」に戻す計画も示唆している。これらの動きは、トランプ政権の「アメリカ・ファースト」の政策の一環と考えられる。
メキシコ湾とは?その歴史と重要性
メキシコ湾は北米大陸の南部に位置し、米国、メキシコ、キューバに囲まれた広大な海域である。米国の石油・ガス産業にとって重要な海域であり、米国内の原油生産量の約14%を占めている。また、米南部の港湾都市とメキシコ・カリブ海を結ぶ重要な貿易ルートでもある。
歴史的に見ると、スペインの探検家セバスティアン・デ・オカンポが1508~09年にキューバを周航し、この海域を発見したとされる。その後、フランスのイエズス会士が1672年に「メキシコ湾」と記録しており、400年以上にわたってこの名称が使用されてきた。
今後の展望 名称変更は定着するのか?
今回の名称変更について、米国政府は今後も「アメリカ湾」の使用を促進していくとみられるが、国際社会がこれに従う保証はない。国連地名専門家グループ(UNGEGN)によると、地名の標準化に関する決定には拘束力がなく、各国が独自の名称を使用する権利を持っている。
例えば、日本海を「東海」と呼ぶ韓国や、ペルシャ湾を「アラビア湾」と主張するサウジアラビアのように、名称を巡る国際的な論争は過去にも存在している。しかし、メキシコ湾の名称は長年にわたって定着しており、国際社会が「アメリカ湾」と呼ぶようになる可能性は低いとみられる。
一方で、GoogleやAppleのような大手テクノロジー企業が名称を変更したことで、米国国内では「アメリカ湾」の名称が一般化する可能性もある。今後の動向に注目が集まる。
まとめ
トランプ政権による「メキシコ湾」から「アメリカ湾」への名称変更は、米国の地理的主権を主張する政治的な意図が背景にあると考えられる。しかし、メキシコ政府や国際社会の反発も強く、今後の展開は不透明だ。GoogleマップやAppleマップなどの影響で米国国内では「アメリカ湾」という名称が広がる可能性があるが、世界的には「メキシコ湾」の名称が引き続き使用されるとみられる。
今後、この名称変更がどのように定着するのか、また国際社会がどのように対応するのかが注目される。