東京女子医科大学(東京都新宿区)に対し、日本私立学校振興・共済事業団は、2024年度の経常費補助金(私学助成金)を全額不交付とする方針を固めた。30日に開かれる運営審議会と理事会で正式決定される見込みだ。東京女子医大は2023年度に約20億円の助成金を受けていたが、元理事長の背任事件を受けて厳格な対応が取られた。
東京女子医大への助成金不交付が決定
私学助成金は、文部科学省の外郭団体である日本私立学校振興・共済事業団が、私立大学の経営を支援するために交付するものだ。しかし、大学側に法令違反やガバナンス(組織統治)の不備がある場合、減額または不交付とする方針が取られる。東京女子医大では、元理事長の逮捕や推薦入試での寄付金受領問題が発覚し、大学運営に大きな混乱をもたらしたことが判断の決め手となった。
背任事件の詳細と大学の経営体制
東京女子医大では、岩本絹子元理事長が、新校舎建設を巡る背任容疑で逮捕されたのは既報の通り。さらに、推薦入試の際に寄付金を受け取っていた事実も明るみに出るなど、大学の経営体制に対する疑念が深まっていた。これらの問題は、大学の財務管理の適正性だけでなく、経営全体の透明性を揺るがすものとなった。
東京女子医大の財務状況と補助金の影響
東京女子医大の2023年度の助成金約20億円は、同大の総収入の1%余りにすぎない。大学側は「経営への直接的な影響は限定的」との立場を示しているが、私学助成金の不交付により、他の補助金の申請が制限される可能性があり、経営への影響が拡大する懸念もある。
同大の総収入は約2,000億円と推定されるが、その内訳は学費収入に加え、大学病院の診療報酬、研究費助成金など多岐にわたる。
特に、大学病院としての売上が大きな割合を占めるとみられるが、民間病院や自治体病院など病院経営は8割が赤字とも言われるほど診療報酬は低く、近年の人件費や病院食の調達などありとあらゆる項目のコスト増を吸収できない歪な改訂しか国はしていないので、利益でみると、殆ど残らないのが実情だろう。
また、2020年以降の黒字化についても、実際には人件費削減やコロナ関連の政府補助によるものであり、長期的な経営安定性が確保されているわけではないとの見方もある。
他大学にも広がる私学助成金不交付の影響
東京女子医大以外にも、複数の大学が私学助成金の減額・不交付の対象となっている。
日本大学では、アメリカンフットボール部員の違法薬物事件が発覚し、過去3年間にわたり私学助成金の全額不交付が続いていたが、2023年には複数の競技部で幹部が部員から授業料などを不正に徴収していたことが判明した。これを受け、2024年度も全額不交付となる。
また、東京福祉大学では、大量の留学生が所在不明となる問題が深刻化しており、事業団はガバナンス不全が解消されていないと判断。2024年度も助成金を全額不交付とする方針を固めた。
さらに、工学院大学でも、理事会と評議員会の対立が続き、経営の安定性が損なわれていることを理由に、2年連続で50%減額される見込みだ。
SNS上の議論:「補助金カットは妥当か?」
今回の決定について、SNS上では賛否が分かれている。
「補助金を不交付にするだけでなく、大学のガバナンス改善や透明性の確保に向けた具体的な対策が必要ではないか」との意見がある一方、「大学経営の問題が学生にしわ寄せとして及ぶのでは?」との懸念も見られる。
また、「東京女子医大の総収入が2,000億円規模なら、助成金の必要性自体を見直すべきでは?」といった指摘もあれば、「黒字化したとされるが、実際には人件費削減によるものだった。長期的には医療の質の低下を招いているのでは?」と、大学の経営手法に疑問を呈する声もある。
補助金制度の今後と東京女子医大の展望
今回の私学助成金の不交付決定は、大学経営の透明性とガバナンスの重要性を改めて浮き彫りにした。東京女子医大は今後、財務管理の適正化やガバナンス改革を進める必要がある。特に、大学病院としての役割を担う中で、医療の質を維持しながら経営改革を実現することが求められる。
また、私学助成金の交付基準がより厳格化される流れが続くなか、他大学にも影響が広がる可能性がある。大学経営の持続可能性や、補助金制度のあり方について、より広範な議論が必要となるだろう。