12月29日午前9時過ぎ、韓国南西部の務安国際空港で、済州航空2216便(バンコク発)が着陸に失敗し、爆発炎上する事故が発生した。韓国消防庁によると、11時現在少なくとも64人の死亡が確認され、生存者2人が救助されたものの、地元消防は「搭乗者の大半が死亡と推定される」と発表。
181人(乗客175人、乗務員6人)が搭乗していたとみられる。
胴体着陸失敗か バードストライクの可能性も
聯合ニュースによると、同機は着陸時に車輪が作動せず、1度目の着陸をやり直した。2度目に胴体着陸を試みたが失敗し、滑走路を離脱して外壁に衝突、炎上したという。
事故原因については調査中だが、通信社「ニュース1」は、乗客が事故直前にSNSで家族に「鳥が(旅客機の)羽にひっかかり着陸できない状態だ」と連絡していたと報道。エンジンが鳥を吸い込む「バードストライク」の可能性が指摘されている。
バードストライクとは?その危険性と影響
バードストライクとは、航空機が飛行中に鳥と衝突する事故のこと。双方の速度差は時速数百キロにもなるため、鳥はほぼ即死し、航空機も衝突箇所によっては重大な損傷を受ける。最悪の場合、墜落などの大惨事につながる危険性がある。
バードストライクは実際に航空業界における深刻なリスクの一つであり、鳥がジェットエンジンに吸い込まれると、タービンブレードが破損し、エンジンが停止する可能性があるとのこと。また、衝突箇所によっては期待の外壁やセンサー類に影響を与えることも。
日本でも年間1000件を超えるバードストライクが発生しており、特に離着陸回数の多い羽田空港では発生件数の約1割を占めている。福岡空港でも2024年10月30日と11月1日にバードストライクが発生し、滑走路が一時閉鎖、複数の便に遅延が生じる事態となった。対策として、空港では空砲を鳴らしたり、鳥の死骸を速やかに撤去するなどの対応が行われているが、抜本的な解決策は見つかっていない。
世界的なバードストライクの事例
バードストライクによる影響は韓国や日本だけでなく、世界中で報告されている。有名なものでは、USエアウェイズ1549便の事件がある。 2009年ニューヨークのラガーディア空港を離陸直後、鳥の群れと衝突し、両エンジンを失った。パイロットがハドソン川に不時着させ、全乗客の命が救われた奇跡の事例である。
空港での対策と今後の課題
バードストライクを防ぐため、各国の空港では、空砲を鳴らして鳥を追い払ったり、死骸の迅速な除去を行っている。しかし、抜本的な解決策は未だ見つかっていない。事故を受けて、済州航空や韓国政府は再発防止策を検討しており、空港周辺の鳥類管理やパイロットへの緊急対応訓練の見直しが進められる見通しである。
済州航空とは?韓国を代表するLCCの特徴
済州航空(Jeju Air)は、韓国初の格安航空会社(LCC)として2005年に設立された。同社は、韓国の愛敬(Aekyung)グループと済州特別自治道が共同で設立した企業で、2006年に国内線の運航を開始し、2009年には国際線にも進出した。
現在では、日本や東南アジア、中国など、アジア全域に路線を展開している。また、2016年には、アジアの格安航空会社による航空連合「バリューアライアンス」に加盟している。リーズナブルな価格と広範なネットワークを強みとし、観光需要の高い済州島を拠点に急成長を遂げてきた。
済州航空、公式HPで謝罪
済州航空は公式HPで、「務安空港での事故により影響を受けられたすべての皆様に深くお詫び申し上げます。まずは事故の収束に向けて全力を尽くします。ご心配をおかけし、誠に申し訳ございません。」と謝罪文を掲載している。
今後の調査と対応
韓国国防省は事故を受け、災害対策本部を設置し、約180人の人員を投入して救助活動にあたっている。事故原因の究明に向けて、韓国政府は徹底的な調査を行う方針だ。航空機のブラックボックスの解析や、目撃者への聞き取り調査などを通じて、事故の真相解明が急がれる。
また、再発防止策の検討も重要な課題となる。バードストライクが原因であった場合、空港周辺の鳥類への対策強化、パイロットへの緊急時対応訓練の見直しなどが検討されるだろう。