続報:被害者を精神的に支配した新たな事実が判明
2023年12月、東京都板橋区で発生した塗装会社「エムエー建装」の社員・高野修さん(当時56歳)が踏切内で電車にはねられ死亡した事件について、新たな事実が警視庁の捜査によって明らかになった。殺人および監禁容疑で逮捕された同社代表取締役の佐々木学容疑者(39)を含む社員4人が、長期間にわたり高野さんに暴行や脅迫を繰り返し、精神的に支配していたとみられる。
新たにわかった事実は、高野さんが「笑うな」「敬語を使え」といった命令を受け、逆らえば暴行を加えられていたという関係性について。佐々木容疑者らは高野さんに「できなかったら死にます」という内容の念書を繰り返し書かせていたことも判明した。
「できなかったら死にます」の念書を書かせる日常
今回、注目されるのは、彼らが高野さんに「約束を守らなければ死ぬ」との趣旨の念書を書かせ続けていた点だ。高野さんは仕事上のミスを理由に、手書きの誓約書や無料通信アプリ「LINE」のグループチャットにおいても「次に失敗したら死にます」といった文言を繰り返し書かされていた。こうした行為は、職場内での極度の精神的圧力を反映している。
また、高野さんが命を落とした当日の前夜、佐々木容疑者ら4人は高野さんを自宅から連れ出し、その後板橋区内の踏切まで連行したとみられる。島畑容疑者と野崎容疑者は高野さんを踏切近くまで同行し、その際の様子が防犯カメラにも記録されている。逮捕後の供述では容疑を否認しているものの、捜査関係者は4人が共謀して高野さんを死に追い詰めた可能性が高いとみている。
暴行と脅迫が繰り返された3年間
高野さんが「エムエー建装」に勤務し始めたのは2015年頃だった。その後、佐々木容疑者を中心とした社員らから3年以上にわたり暴行や脅迫を受け、心身ともに追い詰められていったという。佐々木容疑者らは高野さんに対し、「すぐに電話に出ろ」「遅刻するな」などの命令を繰り返し、従わない場合には暴力を加えていたとみられる。
さらに、高野さんが死亡した直後、島畑容疑者が再び高野さんの自宅を訪れたことも確認されている。島畑容疑者は「片付けのため」と説明しているが、自宅からは高野さんの所持品が消えており、警視庁は証拠隠滅を図った可能性があるとみて調査を続けている。
事件が突きつける労働環境の問題
この事件は、職場内におけるハラスメントや暴力が引き起こす深刻な結果を浮き彫りにしている。特に労働者が長期間、精神的および身体的な苦痛にさらされ続ける職場環境がどのような悲劇を生むかを如実に示している。
経済ニュースの視点から見れば、こうした劣悪な労働環境は、企業の社会的責任という側面においても見過ごすことができない問題だ。職場での権力の乱用や心理的支配が労働者の命を奪うに至ったという事実は、企業経営や労働法制の改善に向けた大きな警鐘となる。
捜査の行方と社会への影響
警視庁は現在、佐々木容疑者らの供述内容や当日の行動を引き続き調べており、殺害に至る経緯を明らかにする方針だ。また、事件を通じて浮かび上がった職場環境の問題に対して、社会全体での議論が求められる局面にある。
経済活動の根幹を支えるのは労働者である。彼らが安心して働ける環境を提供することは、企業にとっての責務である。この事件が示す労働環境の闇を直視し、再発防止に向けた具体的な取り組みが急務であると言えよう。