スポットワーク大手のタイミーは、昨今発覚した不適切求人問題を受け、12月6日に記者会見を行った。同社が提供するマッチングアプリでは、過去に反社会的行為や犯罪行為が疑われる求人が掲載されていたことが指摘され、安全管理体制の不備を問う世論の声が高まっていた。
これを受け、小川嶺社長は「不適切な求人を徹底的に排除する」と宣言し、新たな対応策を発表した。
この問題の背景には、求人内容の事前チェックを行わない運用方法があった。タイミーは、必要な人材を迅速に確保できる利便性が支持されてきたが、一方でこの簡略化された仕組みが悪用される事態を招いた。記者会見の場で小川氏は「これまでの運用体制に大きな落ち度があったことを認識している」と述べ、謝罪の意を表明した。
求人チェックの徹底と働き手の保護
記者会見では、具体的な対応策として「掲載前の求人全件を24時間365日体制でチェックする仕組みを導入した」ことが発表された。従前までの運用では、求人内容について事前審査を行わず、自動的に掲載する方式が採用されていたが、今後は全ての求人について不正利用歴のある事業者データベースとの照合や公的書類の提出を通じて、事業者の信頼性を確認するという。
また、不正な求人を見つけた際の通報機能も新設され、利用者自身が安全性を確認できる仕組みを整えた。
さらに、働き手の個人情報保護に向けた取り組みも強化される。従来は応募段階で企業側が働き手の電話番号を確認できていたが、今後は勤務開始時点まで開示されない仕様となる。また、事業者とのメッセージ機能に通報機能を追加し、働き手が必要以上の個人情報を求められた場合に速やかに報告できる仕組みを導入した。
利用者の声に見る評価と課題
今回の記者会見を受けて、利用者からはさまざまな意見が寄せられている。一部の利用者は、タイミーの利便性を評価しつつも、対応策の実効性に懸念を示している。
特に、「登録者の中にはバイトテロを引き起こすような働き手も存在しており、採用の質を早急に改善してほしい」といった声が挙がっている。
また、「手数料が30%と高額であるにも関わらず、トラブル発生時には企業とワーカーの自己責任で解決せよと言われるのでは納得できない」という批判もある。このように、タイミーの運用体制そのものに課題を感じる利用者は少なくない。
一方で、スキマバイトサービスの存在意義を評価する声も根強い。「怪しい求人は排除してほしいが、タイミーのようなサービスがなくなってしまうと困る人も多い。政府が過剰に介入し、サービスが使いにくくなるのは避けるべきだ」との意見も寄せられている。
特に、タイミーが提供する「空いた時間で働ける」という柔軟性に助けられているユーザーは多く、サービスの継続を求める声が目立つ。
また、労働市場の変化に対する指摘も興味深い。「タイミーのようなアプリは今の時代背景に非常にマッチしている。働き方の多様性を尊重する一方で、働き手の責任感や長期的な雇用へのコミットメントが欠如している場合も多い」との意見がある。
この利用者は、企業側にとっても質の高いワーカーを選択できる仕組みを整える必要性を訴えており、働き手の質に対する課題感を共有している。
スキマバイトの需要とタイミーの役割
タイミーは2018年にサービスを開始し、「空いた時間で働きたい」という個人のニーズと、繁忙期や突発的な人手不足に悩む企業側のニーズをマッチングすることで急速に成長してきた。その利用者数は累計900万人を超え(2024年9月同社プレスリリースより)、登録事業者数は29万7000拠点にのぼる。特に、登録が簡単で履歴書や面接を必要としないシステムが支持され、短期的な労働力を求める企業にとって魅力的なサービスとなっている。
しかし、利便性の裏にはいくつかの課題も潜んでいる。特に、ワーカーと企業の間で十分な合意形成が行われないまま就業が始まるケースが少なくなく、こうした仕組みがトラブルの温床となる可能性が指摘されている。
また、複数回利用したワーカーに対して企業側が選択肢を持つべきとの指摘もある。利用者の中には「先着順で不適切な人材が採用されるケースが多く、企業が頭を抱えている」との声もあり、採用システムそのものを見直す必要性も浮き彫りになっている。
今後の展望と信頼回復への道筋
今回の対応策は、タイミーが抱える課題の一部を解決するものに過ぎない。今後は、求人内容の透明性を高めることに加え、働き手と企業の双方にとって安心して利用できるプラットフォームの構築が求められるだろう。ギグワーク市場が拡大する中、タイミーが業界の信頼を取り戻すには、課題を一つひとつ着実に解決していく姿勢が不可欠である。
また、スキマバイト市場全体においても、さまざまな会社が参入している現在、責任ある働き方と柔軟な就業機会のバランスをどのように取っていくかが問われている。タイミーは、この市場を牽引する企業として、労働環境を改善しながら新たな基準を確立していくことが期待されている。