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船井電機“1円売却”と破産劇 揺れる経営再建の行方

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破産と民事再生法適用申請で揺れる船井電機

船井電機のHP
船井電機のHPより

一時は「FUNAI」ブランドの液晶テレビで知られた船井電機が、経営破綻の渦中で揺れている。同社は10月24日、創業家の関係者で取締役の男性が大阪地裁に破産手続きの申し立てを行った。その後、同29日には元環境相の原田義昭会長がこの破産手続きを取り消す即時抗告を東京高裁に申し立て、さらに12月2日には民事再生法の適用を東京地裁に申請するという事態へと発展した。

原田会長は記者会見で「経営に混乱があったのは認めざるを得ないが、伝統と実績ある企業なので必ず再生するという思いを持っている」と語った。

破産手続きが開始された後の民事再生手続きの申請は極めて異例であり、実現のハードルは高いとされる中、船井電機の未来を巡る議論が混迷を極めている。

さらに、ここにきて上田元代表が1円でファンドに売り渡していたことも発覚した。

経営破綻までの経緯

船井電機の経営は、ここ数年来の業績低迷と経営不振により悪化の一途をたどっていた。かつては液晶テレビ市場で一定のシェアを誇ったが、中国メーカーとの競争激化による価格競争に押され、収益基盤が崩壊。2021年には出版業の秀和システム(東京)の傘下に入ったが、その後も経営改善には至らなかった。

2023年には持株会社制に移行する一方、本業と無関係な脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」を買収するなど、多角化路線を進めた。しかし、この買収のために本社ビルを担保にした約40億円の債務が負担となり、資金繰りの悪化に拍車がかかったことが破綻の決定打になったと言える。

ここまでの経緯は既報で詳しく書いた通り。

“1円売却”の衝撃

船井電機の破綻劇を語るうえで、ここにきてもう一つ驚愕の事実が発覚した。9月に行われた上田智一前社長による経営権の売却は“1円”だったことがわかった。上田氏は破産手続き開始前、同社の株式をEFI株式ファンドに1円で売却した。この売却には、上田氏が船井電機から借りた11.7億円の債務免除や役員在任中の責任追及放棄といった特約が含まれていたことがわかっている。

さらに、契約には条件次第で上田氏が1円でこれらの株式を買い戻せる条項も盛り込まれていた。このような契約内容は、企業利益を私的に流用する意図があったのではないかと疑念を呼び、特別背任の可能性すら指摘されている。

創業者一族と会長の対立

創業者一族による破産申し立てに対し、9月27日に会長に就任した原田義昭氏は、「寝耳に水」と驚きを隠さなかった。原田氏は記者会見で「役員間で十分な議論がなされていなかった」と指摘し、破産手続きを取り消し、民事再生法の下で再建を図るべきだと主張。「船井電機単体では債務超過だが、子会社・孫会社を含めたグループ全体では約200億円の資産超過がある」と強調した。

また、原田氏は主力事業の液晶テレビ製造を売却することで資金を調達し、他の新事業の展開を進めれば再建は可能だと述べた。しかし、民事再生法の適用が認められるハードルは高く、破産手続きが進む中で再建の道筋を探るのは容易ではない。

経営の混乱と再建の行方

船井電機を巡る混乱は、経営のガバナンスと責任の問題を浮き彫りにしている。上田前社長の下で行われた不透明な取引や、創業者一族と会長の対立は、内部の意思疎通の欠如によるものだと言える。また、破産手続きと民事再生法適用の申請がぶつかることで、現場の混乱はさらに深まっている。

ガバナンスの課題と今後の展望

今回の事態は、企業経営におけるコーポレートガバナンスの欠如を如実に示している。企業の利益が個人の利益に優先されるべきであるにも関わらず、不透明な契約や資産の流出が繰り返されたことで、船井電機は破綻の危機に直面している。

また、船井電機のケースは、日本の法制度の脆弱性も浮き彫りにした。経営者の責任を追及するための法整備や、企業の透明性を確保する仕組みの強化が急務だ。同時に、再建を進めるうえでは、利害関係者間の対立を解消し、一枚岩となって企業の再生を目指す必要がある。

船井電機の教訓

船井電機の破産劇は、企業経営における透明性と責任の重要性を再確認させるものだ。企業はその社会的責任を自覚し、株主や従業員を含む多くのステークホルダーの信頼を守らなければならない。船井電機の再建がどう進むかは不透明な状況だが、この出来事がもたらす教訓を無駄にしてはならない。コーポレートガバナンスの強化と法制度の見直しが、同様の事態を防ぐ鍵となるだろう。

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寒天 かんたろう

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ライター歴25年。月刊誌記者を経て独立。伝統的な日本型企業の経営や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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