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世界的ではない選手を10年以上も支援。レッドブルの未来を見据えた“協働”

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アスリートブランドと資金調達の多様化について(クライドファンディングとギフティング)

世界にはあらゆるスポーツがあり、ファンは白熱した試合や華麗なプレーを楽しみにしている。アスリートの活躍が見られるオリンピックやワールドカップなどイベント開催には、巨額の資金が必要だ。会場設営やスタッフ配置にかかる資金、力のある選手を呼び込む賞金などは、スポンサーとなった企業や協会が出資するのが一般的になっている。

1.スポンサーシップがアスリートの支えとなる

アスリートとスポンサーシップを結ぶ企業の業種は、食品やスポーツ関連アパレル、通信事業など多岐に渡る。企業がスポンサーになると、イベントや選手の支援を通して自社製品やサービスの宣伝をする権利を得られる。ファンの多い競技を応援すれば知名度が上がり、潜在顧客の獲得にもつながるだろう。

大会に参加するアスリートもまた、十分な活動資金がなければトレーニングに打ち込めない。アスリートが活動資金を得るには、仕事をしながら自身で資金を捻出するか、大会に参加して賞金を獲得するか、スポンサーを探して資金援助を求めるかの3種類が主な方法となる。

自ら資金を捻出する場合は、生活費やトレーニング費用、遠征費用などを確保するために、多くの時間を仕事に割かなければならない。アスリート活動に理解のある職場ならまだいいかもしれないが、働きながら試合に出場するのは骨が折れるものだろう。

また、スポーツ大会の賞金は、競技によって金額の幅が大きい。世界規模で見れば、ひとつの大会の優勝賞金が億単位に昇るビッグな競技もあるが、年間獲得賞金が数百万円という競技も少なくない。特に、競技人口やファンが少ないスポーツではスポンサーがなかなか集まらない。スポンサーが少なければ、大会の賞金金額も低くなりがちだ。もちろん、賞金を手にすることができるのは勝利した選手だけ。賞金だけを頼りにアスリート活動を安定的に続けるのは難しい。

そのため、アスリートが最大限トレーニングに打ち込むなら、企業とスポンサーシップを結ぶのが理想的だろう。企業とスポンサー契約を結んだアスリートは、CM出演など商品宣伝を行う対価として、活動資金をサポートしてもらう。

 

2.企業とアスリートの協働が長期的であることのメリット

こうしたスポンサーシップの構図は、企業と研究者の関係性にも共通点がみられる。iPS細胞の研究の成果が認められ、ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授は、研究資金を調達するためにメディア露出に力を注いでいる。

アスリートと研究者には、さらに共通点がある。それは、地道なトレーニングや長年の研究を続けた先にこそ、結果が生まれることだ。もしも活動が途中でストップしてしまうと、アスリートの成長や研究の発展は著しく損なわれる。そのため、資金援助も長期的に継続することが望ましい。

書籍『アスリート×ブランド 感動と興奮を分かち合うスポーツシーンのつくり方』(長田新子著、宣伝会議)によると、「アスリートの側から見れば、競技でより高みを目指すには企業のサポートが必要。企業はそうしてアスリートが競技に打ち込む姿や、それをサポートするブランドのあり方を見せることでブランド価値を高めていく。互いにミッションは違うのだが、合致するポイント、つまり互いに自分を偽らずにいられる付き合い方があるはずで、それを共に模索できる人を探すのが、理想のアスリート探しだと言えるだろう」とある。

同書では、モータースポーツ競技のエアレースに対するレッドブルの支援を紹介している。レッドブルは、世界的に無名だった室屋義秀選手のスポンサーとなることを決め、10年以上も活動を支援してきた。そもそも日本ではエアレースという競技の知名度が低く、レッドブルにとっては賭けに近い判断だったかもしれない。しかし、地道にスポンサー活動を続けた結果、日本国内でエアレースの世界大会を開催するまでに競技シーンが成長し、室屋選手はワールドチャンピオンシップで結果を残すほどになった。

「競技人口が極端に少なければ、それをサポートする企業もある程度覚悟しなければならない。この競技にポテンシャルがあるのか、ブランドにとって有効なのかを考えながら、アスリートと共に率直な意見を言えるかどうかも大事である。(中略)「アスリートが企業の色に染まるのではなくて、お互いにイノベーションを起こせるのかを考えるべきだ」というのは室屋選手の一言」(『アスリート×ブランド 感動と興奮を分かち合うスポーツシーンのつくり方』)

レッドブルと室屋選手のスポンサーシップからわかるように、企業とアスリートのスポンサー契約は、活動資金の提供と宣伝効果の取引だけを目的とするものではない。競技シーン発展や後進の育成など、未来を見据えた協働を進めているのである。

 

3.多様化するアスリートの資金調達法

近年注目の新しい資金調達法として、クラウドファンディングがある。インターネット上の不特定多数に向けてプロジェクト資金を募る方法だ。寄付が集まりプロジェクトが成立・成功した場合は、支援者は何らかのリターンを得られる。スポーツを応援することを目的としたクラウドファンディングサイトもローンチされた。その他、ファンが応援したいアスリートに寄付金を送ることができる「ギフティング」という仕組みも誕生している。

クラウドファンディングもギフティングも、一個人が支援者となることができるのが、企業のスポンサーシップとは異なる点だ。一人ひとりの支援額は小さくなりがちではあるが、競技に対する情熱やアスリートを応援する気持ちは大きい。長期的な支援者として、共通の理念を抱く仲間としてアスリートを支える可能性がある。

多くのアスリートが集中してスポーツに打ち込むことができれば、将来的には競技全体の成長につながり、より大きな感動がファンに届けられるだろう。潤沢な資金力を持つ企業のスポンサーシップ、クラウドファンディングやギフティングなど、多様化する支援がアスリートと競技の未来を支えることに期待したい。

 

 

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