【スシロー】”バカッター”しょうゆボトルなめた少年の和解金は?
6月5日、回転ずしチェーンの「スシロー」の運営会社が、岐阜県の少年に約6,700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に訴えを起こしていたことが分かった。
少年は今年1月、岐阜県のスシロー店舗で卓上のしょうゆボトルの注ぎ口をなめたり、回転レーンを流れている商品に唾液をつけたりしている動画をSNSに投稿した。その動画は瞬く間に拡散され、全国のスシロー店舗で客が大幅に減少し、親会社の株価が下落して160億円以上の損失があったとされている。
スシロー側は少年に対して、迷惑行為が「多くの客に著しい不快感や嫌悪感を与えた」ことをはじめとし、衛生管理の信用が損なわれた被害や、迷惑行為を防ぐためのアクリル板の設置にかかった費用などを含めた損害賠償請求をしている。
しかしながら、損害を立証しなければならないのはスシロー側であり、それは簡単なことではない。「明らかにその迷惑行為が原因で損害を受けた」ということを立証しなければならないからである。たまたまその時に競合の人気が上がっていて客足が減った、景気が悪くなって株価が下がった、別の理由で評判が下がっていた、などほかの原因が考えうる限り、立証は難しい。株価の下落や客の減少などが、その迷惑行為によるものだと断言することはできないだろう。
今回の損害賠償請求の金額は、企業側の損失を考えれば少ないとも思えるが、一般家庭にとっては何十年とかけて返すような大きな金額である。実際に支払う金額はいくらになるのだろうか。
過去に似たような事例がある。
2013年に某老舗蕎麦屋で従業員が店の食洗器に入っている写真など、不衛生な画像をTwitterに投稿した。その動画は拡散され、店が破産に追い込まれるほどの打撃を受けた。店主側は従業員たちに対して1,385万円の損害賠償請求を起こし、その後、主犯は約130万円、ほか3人は1人あたり20~30万円支払うことで和解した。
この事例では、実際の和解金は請求額の約10分の1となっている。
請求にはどこで損害額を算出するかがポイントとなり、前述のとおり、立証できるものでなければならない。そのため、蕎麦屋の事例のように実際は数百万になる可能性もある。
今回の一件で回転ずし業界全体が影響を受け、スシローだけでなく、業界としての対策が求められている。
スシローは迷惑行為を受けて、注文を受けていない商品を回転レーンに流すサービスを一時中止していたが、新たな回転レーンスタイルで今夏をめどに再開する方針だ。迷惑行為をしにくい構造にしたり、食品ロスを減らすためにレーン限定のネタを流したりなど、回転ずしのウリであるエンターテイメント性とSDGs、安全性の両立を目指している。
皮肉なことに、この一件で「スシローを応援しよう」という大衆の動きなどから迷惑行為発生前より株価が上がっている。これは、スシロー、ひいては回転ずしに対する大衆からの期待の表れでもある。業界として抱える課題は迷惑行為対策だけでなく、食品ロスや、ときに不漁問題など、複雑に絡み合い、難しいことばかりかもしれない。しかし、その期待に応えるべく、各社が日々対策を練り、変化をしつづけているのである。
参考
スシロー迷惑動画、しょうゆ差しなめた少年を提訴…6700万円損賠請求
バイトテロのその後 蕎麦屋は破産で3300万円の負債も、学生から謝罪なし
スシロー「回るすし」今夏にも再開へ…迷惑行為対策徹底、食品ロス減へレーン限定のネタも