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IPCC第6次評価報告書(AR6)統合報告書(SYR)を迎えるにあたって

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ノーベル平和賞に輝いたAR4から、戦火の中のAR6を考える

画像引用:https://www.ipcc.ch/

2023年3月20日(月)IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(AR6)統合報告書(SYR)が公開される予定である。当初の予定では2022年の9月頃に出る予定であったと記憶している。2022年4月にAR6第3作業部会報告書が承認されたが、既にウクライナは戦火の渦中であり、それは今もなお続いている。日本の防衛費も格段に大きくなり、ナショナリズムの高まりを感じる中での、このニュースをどう迎えようか。

2008年からエコライター、気候ユース、環境学修士(東大)、環境省(AR5にも対応)とキャリアを変えて15年の非営利団体Circular In-finity創設者の佐藤慎一が気候変動問題のいまにどう立ち向かい、どんな明日を迎えるか、cokiだけに語った。

国際協調なくして脱炭素を十分に推し進めることはできない。類似の内容が第5次評価報告書(AR5)に記載されている。通常国会では、GX(グリーントランスフォーメーション)推進法案が審議中であり、脱炭素に関する国民運動の官民連携協議会も4月から本格始動を始める。

Climate techなるビジネスもスタートアップを中心に盛り上がっている。わたしたちはどんな選択をすべきなのか。アップデートしたChatGPT4に聞いたら答えてくれるかもしれない。それでも、最後は自分の意思で判断しなければならない。統一地方選挙が近い。あなたの判断を票に託して、新しい時代に新しい政治を迎えよう。

1.AR6のおさらい

AR6とは、IPCCの成果物の1つであり、6回目の気候変動の研究の評価をした報告書である[図1参照]。

図1:気候変動に関するIPCCの科学的な知見と国際交渉との関係 (気候変動対策を科学的に!「IPCC」ってどんな組織?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁から引用)

報告書と次の報告書のスパンは約7年間。第1作業部会は気候変動のメカニズムが、第2作業部会は気候変動の影響や適応策が、第3作業部会はどうやって温室効果ガスを削減するか、が議論されている。そして、これらを1つにまとめたものが統合報告書(SYR)となる。

COPの成果物であるパリ協定などでは、たいがい”Best available science”(利用できる最高の科学)という文言が入っている。ここの1丁目1番地に当てはまるものが、このIPCCのレポートである。同じ内容のレポートにも、複数の形式があり、もっとも多くの人に読まれるのは、SPMと呼ばれる政策決定者向け要約となる。

ここでポイントとなるのが、1万ページ以上の全文の形式であれば科学者のみの承認になるわけだが、SPMを承認するには各国政府の交渉官の承認が必要である。すなわち、「科学的に正しい」ものから「政治的に正しいもの」へと変容する可能性があるのである。事実、IPCCの総会においては、科学者と政府の議論が行われているのである。

2.AR4とノーベル平和賞

ここで少し昔話をしたい。はじまりの話である。わたしが、環境問題に取り組み始めたのが2008年の5月。はじめて気候変動のCOPに参加したのが2010年の12月である。この情報は、もちろん個人的なもので、「虫の目」で状況を描写したものである。では、鳥の目もとい神の目ではどうだろうか。

2007年12月、ノーベル平和賞を手にした方が2人いた。不都合な真実で有名なアル・ゴア氏、そして平石尹彦氏を含むIPCCである。実は、IPCCの作業部会はWG1~WG3の他にインベントリータスクフォースというものがある。これは、温室効果ガスの目録を作るもので、つまり、どの分野のどんな行動によって温室効果ガスが発生するのかをまとめてる。平石氏は当時、インベントリータスクフォースの責任者であったのである。

ここで、今度は「神の目」で見て頂きたい。AR4とノーベル平和賞により、ビジネスも含め様々なセクターにエコブームが訪れました。2008年にコペンハーゲンで行われたCOP15は当時の歴代最多である参加者として4万人以上を記録している。それ以前の回数としては、1万人程度の規模感である。そして奇しくも、最大のモーメンタムが高まっていたコペンハーゲンのCOP15では米中首脳の共同ドラフティングの場がありつつも、議長の退場やクライメート・ゲート事件[注]などがあり、決定予定文書をtake note(留意する)だけとなる結末を迎えた。平たく言えば、何も決まらなかったのである。

そして、翌年のCOP16で無事に「カンクン・アグリーメント」という名前で文書を合意した。ホスト国であるメキシコの議長は、その後しばらくして気候変動枠組み条約(UNFCCC)の議長へと昇進することになる。

注:AR4の作成において人為的な操作がされたという内部告発がウィキリークスに行われ、IPCCの権威が揺らいだ事件。

3.GXと国民運動

現在、経済産業省では、昨年の夏ごろから「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」が活動している。昨年の秋頃からは、環境省で「脱炭素で豊かな暮らしを作る国民運動」を行っている。前者は9割が企業であり、後者は自治体と企業が半々の割合で9割を占める。どちらも、年度内は準備期間であり、4月からの新年度に本格稼働することになっている。

GXリーグにおいては、既に官民の成果としてGX推進法案を内閣にあげ、閣議決定したのち、通常国会で審議されている状況である。国民運動においても令和5年度の予算や令和四年度の補正予算などがぶささげられており、G7/G20などの国際舞台のチャンネルも話題にあがる状態である。

GXリーグにおいては生産者側のアプローチということで、市民団体の介在の余地が極めて少ないことに理解もできるところであるが、国民運動においては、「クールビズ」を未だに神格化している状況で、グリーンライフポイントなどの消費者サイドに配慮した取り組みをしている一方で、自治体や大企業のプレゼン合戦に終始している現状では、消費者マインドをつかみきれず、崖から落ちてしまうのではないかと危惧する。このAR6SYRの契機を持って、コンテストのような思考と体験の機会創出や様々なリサーチが必要だと考える。

4.選挙の動き

4月9日(日)に、わたしたちは統一地方選挙を迎える。3月の選挙ドットコムの調べによると、気候変動やエネルギーを気になる政策としてあげている人は僅か数%であった。政策も進み公募も3回目を終えたというのに、地方においては気候変動はまだまだ自分事になっていないようだ。ゲリラ豪雨や度重なる熱波は、生活や医療、1次産業などに大きな影響を与えるはずであり、血肉になるように各地域で対話のネタになることを祈念する。

気候危機・自治体議員の会には、3月9日現在503人の議員が気候危機への対策に賛同している。みなさんの選挙区にいらっしゃる方であれば、一考してみるのもよいかもしれない。

5.あなたができること

よく「エコやSDGsのために、私に何ができますか。」という質問を頂く、恐縮ながら就職活動の面接においても、同じことを聞くのであろうか。何ができるかは、むしろ相手が知りたいことなのではないか。どうしてこうなるかというと、1つは環境問題などのリテラシーが不足しているからである。

または、自己紹介・自己PRの方法が発展途上だからである。対話ができないと、交渉ができない。交渉ができないと、全体最適化の方法が分からない。そして、方法が分かっても、チャレンジするマインドやパッション、支えてくれる仲間や環境がないと、行動には移せないかもしれません。

オンラインアドバイザーをしておりますので、お困りの際はご一報ください。

ライター:

1986年生まれ。大学時代にSNSベンチャーでエコライターのバイトを行い、ノーベル平和賞を取ったアル・ゴア氏の言葉に、環境問題を生涯の課題と決心する。その後、大学院に進学し、国連の会議に3回出席。CYJ1期生として化石賞の受賞や大臣への意見提出を行う。水道システムSEや環境省総合職を経て、活動15年目の現在はフリーでESG業界のエンパワーメントに挑戦している。座右の銘は「傍観者を演者に」。著書に『衡平な選択』『あなたと共にいつまでも』。

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