
捨てられる食品の残りかすから燃料をつくり、電気に変える。大和ハウス工業が、食品残さに由来するバイオメタノールを使った発電システムの実証実験を始める。
食品残さから取り出したガスを燃料のメタノールに変え、それを使って発電する一連の流れは、日本で初めての取り組みだという。
食品残さから燃料、そして電気へ
同社によると、この一連のプロセスは自社調べで日本初となる(2026年8月末時点)。まず、食品残さを発酵させてバイオガスを取り出し、そのガスからバイオメタノールを合成する。できたメタノールを燃料として発電する。実証は2027年3月19日から9月26日まで行い、栃木県真岡市の栃木二宮工場と、神奈川県横浜市で開かれる博覧会の会場が舞台となる。工場でつくったバイオメタノールを使う発電システムは、2027年に開かれる国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」で展示される予定だ。
博覧会を舞台に選んだのも、来場者に環境技術を体感してもらう狙いがある。食品残さが電気に変わる様子を実際に見せることで、資源循環の可能性を広く伝えられる。博覧会という場は、まだ実験の段階にある技術を社会に知ってもらう入り口にもなる。会期を通じて動かし続けることで、短期間ではわかりにくい連続運転の課題も見えてくる。
1日25キロの残さを資源に
処理の規模も具体的に示されている。同社によると、1日に扱う食品残さはおよそ25キロ。そこから生まれるバイオガスは1日あたり1~2立方メートルで、メタノールを58%含むバイオメタノール水を発電の燃料に使う。会期中に見込むCO2の削減量は、およそ2.7トンだ。小さな規模ながら、食品残さが燃料となり電気を生むまでの流れを、実際に動かして確かめる。今回の実証のために、容量135リットルの3連タンクからなる試験機を新たに開発した。
1日25キロという量は、大規模な発電をまかなうには小さい。しかし、実証の目的は、まず仕組みが成り立つことを確かめることにある。小さく始めて数値を積み上げ、効率やコストの課題を洗い出せば、規模を広げる際の土台になる。段階を踏んで実用化を目指す、堅実な進め方といえる。
大阪大学との共同研究が土台
技術の裏には、大学との共同研究がある。同社によると、大阪大学の大久保敬教授と組み、2022年からカーボンニュートラルな燃料の研究を始めた。2025年には、光による酸化反応の技術を使い、バイオメタノールを高い変換率で合成する方法を開発した。その成果が、今回の実証の土台となっている。実証では、合成できる量やメタンガスの変換効率に加え、コストや安全性、法令への適合性なども検証する予定だ。実験室で培った技術を、実用に近づけるための検証といえる。建設会社が発電やエネルギーの領域に踏み込む背景には、建物やまちづくりを担う立場として、脱炭素に正面から向き合おうとする姿勢がある。
「環境負荷ゼロ」への一歩
大和ハウス工業は、住宅や建築を幅広く手がける建設大手だ。今回の取り組みは、環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」に基づくものだという。創業100周年となる2055年までに、事業に伴う環境負荷をゼロにすることを目指している。その実現には、建物そのものだけでなく、エネルギーのつくり方にまで踏み込む必要がある。
食品残さは、全国で大量に生まれ、その多くが焼却されている。これを燃料に変えられれば、ごみを減らすと同時に、化石燃料に頼らないエネルギーを得られる。資源の循環と脱炭素を、一つの仕組みで結ぶ試みだ。食品ロスの削減と脱炭素は、いずれも国を挙げて取り組む課題でもある。 同社は、バリューチェーン全体での温室効果ガスの削減と、化石燃料に代わるエネルギーの活用を進めている。食品残さから電気を生むこの実証が、実用化に向けてどこまで進むのかが注目される。身近なごみが、まちのエネルギーを支える資源へと変わる日が来るのかどうか。その一歩を占う取り組みといえる。



