
スーパーのレジ前に並ぶ買い物客。画面の案内に従い、商品を読み取り、支払いを済ませる。セルフレジは、いまや日常の風景になった。レジ待ちを減らし、人手不足の店舗を支える便利な仕組みだ。
ところが、その便利さの裏側で、セルフレジを悪用した万引きが問題になっている。関西テレビによると、20年以上の経験を持つ現役の万引きGメンは、セルフレジでの不正について「全然バレている」と指摘する。人の目が少ないように見える場所ほど、実は防犯カメラや記録が残りやすい。セルフレジは“無人”ではなく、別の形で見られている場所なのだ。
「盗む」から「ごまかす」へ、万引きの形が変わった
従来の万引きは、商品をかばんに隠す、服の中に入れるといった行為が中心だった。しかしセルフレジでは、会計の途中で商品数や金額をごまかす形が目立つようになっている。
たとえば、複数の商品を重ねて一部だけを読み取らせる。小さく高額な商品を会計から外す。カートの下段に置いた商品をそのまま通過させる。こうした行為は、見た目には通常の会計に紛れ込みやすい。
ただし、「店員が近くにいないから大丈夫」という考えは通用しない。多くの店舗では、セルフレジ周辺に手元を映すカメラが設置されている。さらに、販売データや在庫管理の記録も残る。会計直後に声をかけられなくても、後から映像とデータを照合される可能性がある。
ユニクロの“置くだけレジ”にもある死角
問題はスーパーだけではない。ユニクロなどで使われる、商品を置くだけで点数と金額を読み取るタイプのレジにも、別のリスクがある。
利用者から見れば、商品を置くだけで会計できる便利な仕組みだ。しかし、商品のタグが正しく付いていることが前提になる。レジに向かう前の段階でタグに細工されれば、システムだけで完全に防ぐことは難しい。
ここに、セルフレジ時代の難しさがある。技術が進めば不正は減ると思われがちだが、実際には技術の隙間を突く行為も生まれる。便利さが増すほど、店舗側には新しい監視と接客の工夫が求められる。
「一番効くのは声かけ」だった
では、セルフレジ万引きを防ぐには何が必要なのか。防犯カメラ、AI、セキュリティタグ、防犯ゲート。対策はいくつもある。しかし専門家が重視するのは、意外にも人の目と声かけだ。
「操作でお困りですか」
「点数の確認をお願いします」
こうした一言は、単なる接客ではない。利用者の操作ミスを防ぎ、不正を思いとどまらせる抑止力にもなる。セルフレジを導入したからといって、店員の役割が消えるわけではない。むしろ、少ない人数でどこに立ち、どのタイミングで声をかけるかが重要になる。
無人化の時代に見えて、実は問われているのは「人の存在感」だ。便利さを守るためには、機械任せではなく、人が関わる余白を残す必要がある。
利用者も「うっかり」に注意が必要
セルフレジでは、悪意のある万引きだけでなく、操作ミスによるスキャン漏れも起こり得る。特に慣れていない人や高齢者、子ども連れで慌ただしく会計する人は、商品点数の確認を忘れやすい。
会計後は、レシートと買い物袋の中身を見比べる。スキャン漏れに気づいたら、すぐに店員に伝える。こうした小さな確認が、トラブルを防ぐことにつながる。
一方で、故意に商品を会計せず持ち帰れば、窃盗罪に問われる可能性がある。金額が少ないから許されるわけではない。店舗側が警察に通報するケースもあり、「軽い気持ち」では済まされない。
セルフレジの便利さは、信頼の上に成り立っている
セルフレジは、買い物を速く、気軽にしてくれる。だが、その便利さは、利用者が正しく会計するという信頼の上に成り立っている。
小売店にとって、セルフレジは人手不足を補う大切な仕組みだ。しかし、万引き被害が増えれば、導入をためらう店舗も出てくる。結果として、買い物客の利便性も失われかねない。
セルフレジ万引きの問題は、一部の不正行為にとどまらない。便利な社会をどう守るのか。人手不足の現場で、技術と接客をどう組み合わせるのか。その答えは、レジの前に立つ一人ひとりの行動にもかかっている。



