
開票センターに、重い空気が流れていた。
候補者名の横に並ぶ「落選」の二文字。支持者たちはスマートフォンを握りしめたまま、静かに視線を落とす。
東京、長野、大阪、静岡、埼玉、愛媛。
この春、各地で行われた市議選で、れいわ新選組の公認候補は6連敗を喫した。しかも、中には「24人中22人が当選」という、極めて当選しやすい選挙区も含まれていた。
かつて“れいわ旋風”を巻き起こした政党に、今、何が起きているのか。
背景を追うと見えてきたのは、単なるスキャンダルでは片づけられない、「熱狂政治」の歪みだった。
「れいわなら勝てる」は、なぜ消えたのか
2月の日野市議選から始まり、上田市、河内長野市、藤枝市、久喜市、松山市と、敗北が続いた。
単なる惜敗ではない。
定員に対して立候補者数が少なく、“滑り込める可能性が高い”と見られていた選挙区でも、れいわ候補は議席に届かなかった。
つまり、有権者は「知らなかった」のではない。
知った上で、“選ばなかった”のである。
党関係者からは、「れいわ公認はプラスにならない」という厳しい声も漏れ始めている。
かつての勢いを知る関係者ほど、現在の状況に危機感を抱いている。
山本太郎が「怒りの代弁者」だった時代
数年前まで、山本太郎という存在は、既成政治への怒りそのものだった。
駅前の街頭演説には、人が集まった。
仕事帰りの会社員。
生活に不安を抱える若者。
年金暮らしの高齢者。
山本氏は、そうした人々に向かって感情をむき出しに語りかけた。
「この国で生きてる人を守りたいんですよ!」
絶叫にも近い訴えに、涙を流す支持者もいた。
他党が慎重な言葉を並べる中、山本氏は怒った。感情を隠さなかった。
それが、「自分たちの苦しさを代わりに叫んでくれる政治家」として支持を広げた理由だった。
れいわ新選組の強さは、政策だけではない。
“熱量”にあった。
だが、その熱狂は次第に“対立”へ変わっていった
転機となったのは、党内外で対立色が強まっていった頃からだ。
特に存在感を強めたのが、大石晃子氏だった。
国会での激しい追及。
他党への強い批判。
SNS上での応酬。
支持者からは「よく言ってくれた」と喝采が上がる一方で、別の層には“攻撃性”として映り始めていった。
政治において、怒りは強力な武器になる。
だが、その熱量を長期間維持し続けると、人は疲弊する。
特に中間層ほど、「怒り続ける政治」から静かに距離を置き始める。
そして今、れいわ新選組は、「庶民の代弁者」というより、「常に誰かと戦っている政党」という印象を持たれ始めている。
地方選の連敗は、その空気が数字になって表れた可能性がある。
元議員の告発で噴き出した“内部不満”
空気がさらに変わったのは、元衆院議員・多ケ谷亮氏が声を上げてからだった。
多ケ谷氏は、「週刊新潮」の取材に対し、秘書問題や党内運営について証言。これをきっかけに、執行部を巡る疑惑報道が相次ぐようになった。
もちろん、現時点で違法性が確定したわけではない。
ただ、有権者が敏感に反応したのは、疑惑そのものだけではなかった。
「なぜ内部から次々と不満が噴き出しているのか」
そこに、多くの人が違和感を覚え始めたのである。
さらに、多ケ谷氏は「切り捨てられた」という感情を隠していない。
党内で何が起きていたのか。
そうした疑問が、支持者の間にも広がり始めている。
「一人も取り残さない」は、どこへ消えたのか
れいわ新選組は長く、「一人も取り残さない」という言葉を掲げてきた。
弱者救済。
生活支援。
反貧困。
それは、既存政治に置き去りにされたと感じる人々にとって、強いメッセージだった。
しかし今回の一連の報道では、
- 切り捨てられたと感じる元議員
- 不満を抱える地方議員
- 告発する元秘書
- 離党予備軍
の存在が次々に語られている。
もちろん、証言には一方的な部分もあるだろう。
だが有権者は、「理念」と「実態」が一致しているかを驚くほどよく見ている。
特に、“弱者の味方”を掲げる政党ほど、その矛盾には厳しい視線が向けられる。
だから今、れいわ新選組が失っているのは、単なる支持率ではない。
「信頼」そのものなのである。
SNS政党が直面した“現実”
れいわ新選組は、SNS時代を象徴する政党でもあった。
YouTube、X、切り抜き動画。
既存メディアを通さず、熱量そのものを拡散して支持を広げてきた。
しかし、地方選は別だ。
地元とのつながり。
日常的な活動。
地域での信頼。
そうした“地上戦”が求められる。
ネットでの熱狂が、そのまま票につながるわけではない。
むしろSNS型政党は、支持も炎上も一気に可視化される。熱狂が強いほど、反動も大きい。
今回の地方選惨敗は、「ネットでは強い政党」が、現実政治で直面した壁とも言える。
れいわ新選組は、再び支持を取り戻せるのか
現在、れいわ新選組の支持率は低迷が続いている。
地方組織の動揺も広がり、離党者も相次ぐ。
そして何より痛いのは、“勢いがある政党”という最大の武器を失いつつあることだ。
政治の世界では、「勝てそう」という空気が人を集める。
逆に、一度“失速感”が漂い始めると、その流れを止めるのは難しい。
かつて、既成政党への怒りを吸い上げ、一気に支持を拡大したれいわ新選組。
しかし今、その怒りは、外ではなく内部へ向かい始めている。
そして有権者は、その姿を静かに見つめている。
なぜ人は「理想の政治」に失望するのか
今回の問題は、単なる政党スキャンダルでは終わらない。
むしろ問われているのは、「理想」を掲げる政治運動が、なぜ内部から崩れていくのかという構造そのものだ。
人は、政治家に完璧を求めているわけではない。
だが少なくとも、
- 言っていること
- やっていること
- 身内への態度
その3つが一致しているかは、驚くほど見ている。
だから今、れいわ新選組に向けられている視線は、単なる批判ではない。
「あなたたちは、本当に弱者の味方だったのか」
という、もっと根源的な問いなのである。



