
遅すぎた免職義務化の背景
文科省の改定は、「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(教員性暴力防止法)に基づく3年見直しの一環だ。従来指針では性暴力等が発生した場合「原則として懲戒免職」との表現だったが、今回これを削除。公立学校だけでなく私立など学校設置者にも就業規則で厳正処分を義務づけるよう求めた。
2025年に発覚した教員グループによる盗撮動画共有事件が直接の契機となった。事件では複数の教員が女子児童の画像をSNSグループで共有しており、社会的批判が強まった。指針改定は即時適用され、データベース(過去処分者情報)の活用徹底や採用時の確認強化も明記された。関係者からは「長年問題視されてきたのに、ようやく義務化」との指摘が出ている。
2025〜2026年に相次ぐ教員性事件
広島市では2025年度に教員の懲戒免職が過去最多5件に達した。元小学校教諭中島健夫被告(39)は勤務先で9〜12歳の女子児童34人に対し、着替え盗撮や教室でのわいせつ行為、児童ポルノ製造などの罪で起訴。
2026年4月の公判で新たに19人分の犯行を認め、「私がしたことに間違いありません」と供述した。検察側は「被害家族は厳しい処罰を望んでいる」と指摘した。東京都大田区立小学校では2026年4月、教諭・若松晃司郎容疑者(39)が教室で8歳女子児童のスカート内を盗撮。逮捕時「教師になった17年前から続けていた」と供述し、保存画像・動画5000件超が押収された。プール着替えなども含まれるという。
名古屋市では2025年に小学校教員らが女子児童を盗撮・共有する事件が発覚。市は再発防止で30項目の対策を策定したが、類似事案が続いた。岩手県や和歌山県でも盗撮・わいせつ事件が相次ぎ、全国的に教員の性犯罪処分件数は2024年度で281人(児童生徒対象134人)と依然高止まりしている。
文科省処分指針の主な強化内容
改定指針は盗撮防止対策を詳細に明記した。教室・トイレ・更衣室の定期点検、整理整頓による隠しカメラ設置防止、私的端末の業務外使用禁止、学校端末画像の持ち出し禁止などが新設された。防犯カメラ設置は学校の実情に応じて判断する。
早期発見策として定期アンケートや相談窓口の整備、発見時の警察連携・被害者支援を強化。再授与審査会では過去加害者の教員免許再取得を極めて厳格に制限する。文科省は「子どもを守る立場の教員による行為の重大性」を強調し、全国の教育委員会に徹底を求めている。
被害者・保護者の声「信頼が揺らぐ」
保護者説明会では不安と怒りの声が相次いだ。名古屋市の事件後、説明会で泣き出す保護者がおり、「好かれていた先生なので信じられない」「キモい…」との意見が出た。別の保護者は「学校に全て任せていたのに、不安で疑いの目が向いてしまう」と語った。
広島市の事件では被害家族が厳罰を望む姿勢が公判で示された。保護者からは「水着着替え練習を何度もさせていた」などの疑問が上がり、学校側の初動対応への不満も強い。
大田区事件では緊急説明会が開かれ、心のケア対象児童11人に支援が開始されたが、全体的な信頼回復は課題だ。被害児童には長期トラウマの懸念があり、保護者は「子どもを守るために何を信じればいいのか」と困惑を口にするケースが多い。
指針改定は重要な一歩だが、「遅すぎた」との指摘は避けられない。文科省は隠しカメラ発見器導入や講習強化を自治体に促すが、過去処分歴のない教員による犯行も多く、採用時確認の限界が露呈している。学校・保護者・地域の連携強化が求められる中、子どもたちが安心して通える環境づくりが急務。



