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法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

サステナブル・ラボ株式会社

https://suslab.net/

〒100-0004 東京都千代田区大手町2丁目6-2 日本ビル4階

日経平均5万円でも、なぜ私たちは不安なのか?サステナブル・ラボがデータで挑む、資本主義の“矛盾”の修正

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
ステークホルダーVOICE 社員・家族 経営インタビュー
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サステナブル・ラボ 高橋
高橋浩太郎さん(撮影:加藤俊、以下同)

国連の「世界幸福度ランキング2025」において日本は55位に低迷し、内閣府の調査でも78.2%の国民が「日常生活に悩みや不安を感じている」と回答している。株価は5万円を超えても、人は幸せになれない。この巨大な“歪み”を現代資本主義の構造的な欠陥と捉え、極めて論理的かつデータドリブンなアプローチで修正を試みるのが、サステナブル・ラボ株式会社だ。

同社が扱うのは、環境への配慮や働く人々の活力といった、財務諸表には表れない「非財務データ」である。これらを数値化・可視化することで、資本主義のルールそのものを持続可能な形へ書き換えようとしている。今回は、同社の執行役員兼COOである高橋浩太郎氏に、多岐にわたる事業の全貌と、その根底にある想いについて伺った。

 

見えない価値を「データ」で証明する、2つの事業アプローチ

――まずは、サステナブル・ラボがどのような事業を行っている企業なのか、教えていただけますか。

サステナブル・ラボ 高橋さん

高橋:私たちのビジョンは「データサイエンスの力で、サステナブルな世界を創ること」です。これまで資本主義のメインストリームは、ROI(投資利益率)やコスパといった財務的な観点のみで回ってきました。しかし、そこに一種の歪みが生まれているのは誰もが感じているはずです。我々は、あらゆる経済活動の意思決定に「非財務的な判断基準」をデータとして実装し、社会の行動変容を促そうとしています。

具体的には、大きく分けて2つの事業ドメインがあります。
1つ目は、金融機関や投資家向けの非財務データ分析プラットフォーム「TERRAST(テラスト)」。
2つ目は、大手企業(発行体)向けの「非財務分析支援サービス(コンサルティング)」です。

この「投資家側」と「企業側」の両輪からアプローチすることで、市場のルールを変えようとしています。

――金融機関・投資家向けプラットフォーム「TERRAST」とは、どのような課題を解決するものなのでしょうか。

高橋:機関投資家や金融機関が企業に投資・融資する際、これからは「サステナブルな取り組み(非財務情報)」を評価に組み込む必要があります。しかし、財務諸表と違って非財務情報はルールが定まりきっておらず、各企業の統合報告書やウェブサイトに情報が散らばっている、非構造化データがほとんどです。これでは投資家は比較・分析ができません。我々はAIと専門家の目を活用し、この散らばったデータを投資家が使いやすい形に標準化・構造化して提供しています。

――海外にも大手のESGデータプロバイダーは存在しますが、それらと「TERRAST」の違い、競争優位性は何でしょうか。

高橋:一言で言えば、日本企業に関する細かいデータの圧倒的な正確性です。実は、海外の大手データベースや金融情報端末であっても、日本の非財務データに関しては開示言語やフォーマットの違いなど、様々な壁が存在することもあり、必ずしもハイ・クオリティな提供ができる訳ではありません。

我々は国産ESGデータベンダーとして有価証券報告書の注記や、PDF化された社外取締役のスキルマトリックスに至るまで、かねてからAIと人の目によるダブルオペレーションを構築し、徹底的に情報を拾い上げています。現在数百に及ぶ国際的な開示フレームワークの情報から日本独自の指標に至るまで、「かゆいところに手が届く、正確でノイズのないデータセット」を構築し、日本を代表する大手の運用機関やアセットマネジメント会社などで導入が進んでいます。

投資家の方々には、TERRASTの画面上で自社のポートフォリオ全体のサステナブル度合いを他社と比較・測定したり、個別の日本企業の非財務データを評価したりと、日々の投資判断の材料としてご活用いただいています。また、昨今の生成AI活用が進む中、AI-readyな構造情報を提供する役割も担う機会が出てきており、市場環境の変化にも対応しております。

 

企業の「なんとなく」を羅針盤に変える『非財務分析支援』

――もう一つの柱である、大手企業向けの「非財務分析支援サービス」についてもお聞かせください。こちらはコンサルティングに近い関わり方なのでしょうか。

高橋:例えば、企業は「女性活躍」「働きがい向上」「地域貢献」など様々なサステナブル施策を行っていますが、経営資源には限りがあるため、その全てに120%の投資をすることはできません。本質的にどの非財務資本や取り組みが、自社の企業価値向上、ROEやPBRなどに影響を及ぼし得るのか、社内でも確信を持てず、投資家にも論理的に説明できないという課題を多くの企業が抱えています。

弊社ではこれまで蓄積してきた膨大な非財務・財務情報と、独自のアルゴリズムを用いることで、「この非財務指標は33%くらいまではROEに右肩上がりで貢献するポテンシャルがあるが、40%を超えると単なる数値の向上だけでなく、育児休暇の取得しやすさや心理的安全性といった別の要素との組み合わせが必要になる」といった、貢献度のピークやボトムまでを統計的に可視化・表現できるモデルや解釈ナレッジを構築してきました。

――具体的には、どのように伴走するのですか。

高橋:ひとつのプロジェクトで、大体半年程度は伴走するケースが多いです。マテリアリティ(重要課題)や現場レベルのKPI(例えば従業員満足度など)がある場合、それらをベースに「各指標を改善すると、店舗の運営効率や顧客満足度にどう波及し、最終的に財務にどう結びつくのか」というロジックツリーの仮説を企業と共に描き出します。これができると、企業は投資家に対して「なぜ我々はこの非財務資本に投資しているのか」「それが中長期的にどう自社の価値向上に繋がるのか」を、確固たるデータとストーリーを持って説明しやすくになります。実際に支援先からは、「投資家と、短期的な利益以外の観点で建設的な対話ができるようになった」と高い評価をいただいています。

最近では、統合報告書の「AI可読性」の診断なども始め、非常に大きな反響をいただいております。今や機関投資家や評価機関は、企業の開示情報をAIで読み込んで分析しています。どんなに素晴らしいサステナビリティの取り組みをしていても、統合報告書のデザインや構成のせいで「AIが読み取れない・誤読する」状態になっていれば、評価の俎上にすら載りません。そこで我々は、「AIから見てその情報がどう読み取られているか」を診断し、AIフレンドリーな統合報告書やIRサイトを作るための仕様や実装方法を提供するという支援も行っています。

 

日本の99%を占める中小企業から、アジアのインフラへ

――その他の取り組みについても教えてください。

高橋:大企業だけでなく、地方銀行などとも連携して中小企業の支援も行っています。日本の企業の9割以上は非上場の中小企業です。彼らが当たり前に非財務諸表を作り、金融機関がそれを融資の判断材料にする。そのために、我々は全国約70行の金融機関が加盟する団体の事務局として、非上場企業向けのサステナビリティ開示ガイドライン作りを主導しています。

例えば、地域金融機関がサステナブル・リンク・ローンなどを提供する際、「何を基準にサステナブルとするか」というルールとデータ取得のツールを提供しています。これにより、リソースが限られる中小企業でも、システム上で基本的な質問や指標に答えていくだけで、自社の非財務データを簡単に計算・可視化できるようになっています。

そして、その仕組みをアジアにも広げています。昨年より、フィリピンの政府機関(DTI)と連携し、現地のSME(中小企業)向けに非財務データを計算・開示できるプラットフォームの提供を始めています。日本企業のアジアにおけるサプライチェーンでも、非財務データがなくて困っているケースは多いのです。今年は更に東南アジア各国へのサービス提供を通じ、アジア最大の非財務データ流通の基盤を現地パートナーと共に構築を進めていく想定です。

摩天楼とスラムの狭間で見た「資本主義の限界」

――高橋さんご自身は、なぜこの領域に足を踏み入れたのでしょうか。

高橋:もう10年以上前になりますが、前職時代のフィリピンでの経験が原体験ではないかと思います。マニラの中心部にある高層ビルに入居するクライアントに訪問する機会があったのですが、訪問が終わりエレベーターを降りて数ブロック歩いただけで、そこにはスラムが広がっていました。その強烈なコントラストを目の当たりにし、「なぜひとつの狭い街なのに、こんな構造になっているのか」と衝撃を受けました。

行き過ぎた資本主義や経済合理性が格差を助長しているという構造を目の当たりにした事や、日本で良く言われ始めていた、世界と比較して幸福度が低いという論調の中で、経済的な豊かさと心の豊かさは必ずしも相関しない事に身をもって気づき、この掛け違えたボタンを直す、あるいは改善する方法はあるものかと悶々と考えるようになりました。

これまで関わってきたITやテクノロジー業界としてのバックグラウンドを武器に、こうした社会課題を解決するようなことに、今後の時間を使いたいと思うようになり、会社をやめてロンドンへ渡りました。そこで学んだのは、社会課題を「システム(構造)」として俯瞰的に捉える視点です。例えばイギリスでの医療費や公衆衛生といった課題も、遡っていくと、移民政策の歴史やエリアによって全然違う多様な地域文化、更には同じスーパーでもエリアによって置いている商品や価格に格差が存在するなど、様々な要因が相互に繋がり、起きている問題も多数存在しています。

社会にインパクトを出すには、川下の対症療法だけでなく、上流の仕組みから変えていく必要がある。金融や投資判断に関わる事業を最初に始めたのは、その時の着想に基づいています。

――サステナブル・ラボとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

高橋:環境領域でのビジネスモデルを構想し事業立ち上げ準備をしていた2021年頃、ロンドンからの一時帰国中に、同社代表の平瀬と出会いました。彼は既に会社を創業し壮大なビジョンがありましたが、プロダクトがまだない状態でした。一方で私には前職での経験も踏まえたプロダクトの構想があり、そこで、「お互いの武器を合わせればビジョンを実現できる」と確信し、ロンドンでのMBAの卒業式を待たずに急いで帰国し、ジョインする事に決めました(卒業は無事に出来ました)。

「強さ」と「優しさ」を共存させる組織へ

――サステナブル・ラボを通じてどのような社会を実現したいとお考えですか。

高橋:私たちが目指しているのは、「強さ」と「優しさ」を兼ね備えた組織、そして社会です。社会課題を解決するにはビジネスとして勝ち抜く「強さ(経済合理性)」が必要ですが、それだけでは既存の仕組みと変わりません。一方で、想いだけの「優しさ」では持続可能な仕組みは作れません。

私はライフワークとしてプロのコーチングも行っているのですが、マクロな仕組みを変える一方で、ミクロな「個人の幸福や生き方」に向き合うことも重要だと考えています。

投資や融資、さらには個人の就職活動や購買活動において、企業の「非財務的な価値(優しさや誠実さ)」が当たり前に判断基準となるインフラを作る。資本主義の仕組みに非財務的な価値観を一つ一つ埋め込んでいくことこそが、私たちの目指すゲームチェンジなのです。

プロジェクト、Wellbeing Commons(ウェルビーイング・コモンズ)

 

――「個人の幸福や生き方にも向き合っている」というお話がありましたが、最近新たに取り組まれているプロジェクトについても教えてください。

高橋:はい、実は「Wellbeing Commons(ウェルビーイング・コモンズ)」というプロジェクトを立ち上げています。これは一言で言うと、内省と対話を通じて、個人の主体性とウェルビーイングを育む“場”を社会に実装していく取り組みです。

――サステナブル・ラボの事業とは、どのように関係しているのでしょうか。

高橋:非常に深いところで繋がっています。サステナブル・ラボでは、非財務データを通じて「企業や市場の意思決定」を変えようとしています。一方でWellbeing Commonsは、その前提となる「人の意思決定そのもの」にアプローチしています。

例えば、企業の中でどれだけ良い制度やKPIを設計しても、そこで働く一人ひとりが自分の価値観や納得感を持って意思決定していなければ、本質的な変化は起きません。
つまり、

  • マクロ:資本市場・企業の意思決定(サステナブル・ラボ)
  • ミクロ:個人の内面・主体性(Wellbeing Commons)

この両方を同時に変えていく必要があると考えています。

――具体的にはどのような活動をされているのですか。

高橋:主に、企業・自治体・教育機関に対して、対話型のプログラムやワークショップを提供しています。

特徴は、単なる研修ではなくて、異なる立場の人たちが交わる「対話の場」を設計することです。
例えば、

  • 企業であれば、若手社員とマネジメント層
  • 自治体であれば、職員と地域のプレイヤー
  • 教育機関であれば、学生と社会人

こういった人たちが一緒に、「自分は何を大切にしているのか」「どんな社会をつくりたいのか」といったテーマについて対話することで、個人の主体性が引き出されると同時に、組織や地域全体の関係性も変わっていきます。

――一般的なコーチングや人材開発とは、どのような違いがあるのでしょうか。

高橋:大きく2つあります。

1つ目は、個人で完結させないことです。
従来のコーチングは個人の変化にフォーカスしがちですが、私たちはそれを「組織」や「社会」にどう波及させるかまで設計します。

2つ目は、公共性のある領域に踏み込んでいることです。
企業だけでなく、自治体や大学といった領域にも積極的に関わり、「ウェルビーイングや主体性を社会インフラとして実装する」ことを目指しています。

――なぜ今、このような取り組みが必要だと考えているのでしょうか。

高橋:一つは、AIの進化です。これからの時代、知識やスキルはどんどん代替されていきます。その中で人間に残る価値は、「何をやるかを自分で決める力」、つまり主体性です。

もう一つは、社会全体の閉塞感です。日本では多くの人が不安や停滞感を感じていますが、その根底には「自分の意思で選べていない感覚」があると思っています。

だからこそ、外側の制度や仕組みだけでなく、一人ひとりが自分の価値観に基づいて意思決定できる状態をつくることが、結果的に社会全体の活力にも繋がると考えています。

――今後、Wellbeing Commonsをどのように展開していきたいと考えていますか。

高橋:短期的には、日本国内での企業・自治体・教育機関との実証を重ねながら、モデルケースを増やしていきたいと考えています。

一方で中長期的には、アジアやグローバルにも展開していきたいですね。サステナブル・ラボで非財務データのインフラをアジアに広げているのと同様に、ウェルビーイングや主体性を育む「場のデザイン」も、グローバルに価値があるテーマだと思っています。

最終的には、「経済的に成功しているけれど不安な社会」ではなく、一人ひとりが納得感を持って生きながら、持続的に成長できる社会を実現したいですね。

【企業情報】
サステナブル・ラボ株式会社
代表取締役CEO:平瀬 錬司
執行役員 兼 COO:高橋 浩太郎(兼 Wellbeing Commons発起人)
事業内容:「サステナビリティ特化型のデータサイエンス」のパイオニアとして2019年に創業。AIと人の力を融合させた非財務データプラットフォーム「TERRAST」や、日本最大級の非財務データバンクの構築を通じ、環境・社会貢献と経済合理性を両立させる「サステナブルな資本主義」の実現を目指す。

ウェルビーイングコモンズの詳細はこちら:https://wellbeingcommons.com

 

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ライター:

Webライターとして活動。主にエンタメ系、サステナビリティ関連の記事などを扱っています。

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