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株式会社エコリング

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〒671-0232 兵庫県姫路市御国野町御着352番地

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リユースの地平を切り拓くB Corpの理念――エコリングとオシンテックが描く「物を大切にする」社会の未来像

サステナブルな取り組み ESGの取り組み
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エコリング オシンテック Bcorpイベント
B corpイベントが開催されたエコリング本社にて

2026年3月10日、株式会社エコリングの本社(姫路市)にてB Corpのイベントが開催された。

本イベントでは、リユース業界のトップランナーである同社の歩みと、国際的な認証制度「B Corp」がもたらす経営の質的変化、そして変化の激しい現代社会におけるリユースの未来像をEco Ring Japan Holdings 代表の桑田一成氏(以下、桑田氏)と国際的な制作動向の分析ツール等を提供するオシンテック代表の小田真人氏の対話を通じて、これからの企業が持つべき価値観と社会貢献の在り方を探るものである。

鈴木勘一郎氏が語る、挫折から辿り着いた「価値観」の経営

イベントの冒頭、基調講演に登壇したのは、立命館アジア太平洋大学(APU)名誉教授である鈴木勘一郎氏。

エコリング オシンテック Bcorpイベント
立命館アジア太平洋大学(APU)名誉教授である鈴木勘一郎氏

鈴木氏は、冒頭でかつてシリコンバレーでの起業や上場後の経営危機、そしてリストラを余儀なくされた痛切な経験を振り返り、「本質的にやりたいことは何なのか」を問い直す過程が、大学教育や事業会社への助言のベースになったという。

この「本質的にやりたいことは何か」という深い自省のプロセスこそが、鈴木氏の提言の核となり、その後のエコリングとの伴走に繋がっていく。

鈴木氏とエコリングとの出会いは2014年に遡る。鈴木氏は当時の代表取締役桑田氏に対し、「会社が大きくなるにつれて、質的にも良くなっていかなければならない」と説き、翌年2015年から幹部経営研究会をスタートさせた。

その後、ESG(環境・社会・ガバナンス)の研究を進める中で、2017年と2018年にエコリングの幹部らと共にサンフランシスコやシリコンバレーを視察に訪れ、そこで出会ったのがB Corpという認証制度であった。

鈴木氏は、エコリングの桑田代表がB Corp取得を決意した当時の決断を「歴史的な転換点」であったと述べている。

それは単なる認証取得への挑戦ではなく、企業としての「質的変容」の始まりであったからだ。この判断の正しさは、その後のB Corp認証の爆発的な広がりに裏付けられている。

エコリングが認証を取得した2021年当時、日本の取得企業はわずか6社、同社は7社目という極めて先駆的な存在であったが、現在では国内76社、世界で1万社を超える規模へと拡大している。

このB Corpの飛躍は、志を同じくする企業群が大きなな社会的インパクトを生み出し、日本企業にとっても無視できない「大きなチャンス」の潮流となっていることを如実に示している。

インフレとVUCAの時代を生き抜く、B Corpという羅針盤

続いて鈴木氏は、世界のリユース市場を取り巻く潮流と、これからの経営戦略について言及した。

現在の世界情勢は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧さ)の頭文字をとったVUCAにFake(嘘)が加わった「VUCA+F」という混沌とした時代にあるという。

このように先の見えない環境下ではあるが、リユース市場は急速な拡大を見せている。その背景には、世界的な若い世代の変化や日本でもデフレからインフレへと言う経済環境の変化が挙げられる。

鈴木氏の分析によれば、アジア太平洋地域や中東・アフリカにおいてリユースの成長は続いていく。

地政学的なリスクは存在するものの、サステナビリティへの関心は底堅い。特に世界で環境問題に対してセンシティブな若い世代が、市場に変化をもたらすアクセラレーターとしての役割を果たすと期待されている。

また、政治的にいろいろな変化があったとしても、すでに行政や産業界は長期的なCO2削減計画に基づいて動いているため、大きな流れが急変することはないとの見解を示した。

エコリング オシンテック Bcorpイベント

一方で、企業による「グリーンウォッシュ」などに対する社会の目は厳しくなっている。格好だけのESGやSDGsではなく、内側からの真摯な取り組みが求められている。

こうした状況に対し、鈴木氏がエコリングの幹部研修で常に問い続けているのが「What is the most important?(何が最も大切なのか)」という本質的な問いである。

またこうした不透明な未来に対する具体的な処方箋として、鈴木氏は「ノーリグレット(後悔しない)戦略」と「リアルオプション(現実的選択肢)戦略」の二段構えを提唱した。

「ノーリグレット(後悔しない)戦略」とは、どのようなシナリオが実現してもやり続けるべき基本的な取り組みを指す。具体的には省エネ、データの整理、透明性の確保、サプライヤーの多様化などがこれに当たる。

一方、「リアルオプション(現実的選択肢)戦略」とは、将来の不確実性に備えて「種をまいておく」投資である。小さな投資から始め、数年後にその継続または撤退を判断するという柔軟性を担保する。事前に撤退のルールを決めておくことで、右往左往することなく変化に対応できる。

鈴木氏は、これからの経営の源泉を「ドル$とハート♡」(経済性と社会性)の両輪であると表現した。B Corp認証を通じて信用と共感を高め、それが信頼へと繋がり、最終的に業績へと結びつく。

人的資本への投資やガバナンスの強化といった「将来に対する種まき」は、自分たちの行動を律し、長期的な成長を実現するための必要条件であると、講演を締めくくった。

リユースの最前線――ガンダーラの仏像からワイシャツのボタンまで

続いてのセッションでは、桑田一成氏と小田真人氏により、リユースビジネスの現場感覚とマクロな視点を交えた深い議論が行われた。

まず導入として語られたのは、エコリングがこれまでに扱ってきた驚くべき商品の数々だ。

ギネス世界記録にも認定されたという貴重な「ガンダーラの仏像」から、持ち主のマジックで名前が大きく書かれたブランドバッグ、さらには「ワイシャツのボタン」に至るまでも買い取り対象となるという事実である。

桑田氏は、衣服に付いているボタンの事例を引き合いに出し、リユースの本質を詳しく解説した。1個だけでは市場価値がつかないボタンであっても、1,000枚のシャツから外して1万個という単位で集めれば、それは立派な商品として世界のどこかで需要が生まれる。

この「個では無価値なものに集積と編集の力で新たな経済的価値を生み出すダイナミズム」こそが、リユースビジネスの核心であり面白さであると強調した。

エコリング オシンテック Bcorpイベント
Eco Ring Japan Holdings 代表の桑田一成氏

この「モノの価値」に対する深い洞察に対し、小田氏は北欧で広がる「リペアカフェ」の事例を提示した。小田氏は、壊れたものを自分たちで修理し、新たな命を吹き込むプロセス自体を単なる節約ではなく「楽しさ」や「豊かな体験」として捉える文化的な側面を強調。

「リペアを楽しむという新しい消費者の感覚が広がる中で、エコリングのようなリユース企業が今後どのように発展していくのか、非常に楽しみにしている」と期待を寄せ、リユース業界のさらなる進化への問いを投げかけた。

エコリング オシンテック Bcorpイベント
オシンテック代表の小田氏

これを受けて桑田氏は、経営者としての率直な葛藤と、その末に辿り着いた意識の変化を明かした。当初は、リペア文化が普及して一つのモノが長く使われれば、買い取りに出される商品が減り、自社のビジネスを圧迫するのではないかという懸念を抱いていたという。

しかし、消費者の行動を深く見つめ直す中で、「商品を大切にするという根本の思いは、リペアもリユースも地続きであり、全く同じものである」との確信に至った。両者をを利益を奪い合う対立構造で捉えるのではなく、所有物を大切にするという共通の価値観に基づく活動として再定義したのである。

続けて、単にモノを買い取る受動的な立場に留まらず、個人が愛着を持って商品を使い続ける文化そのものを積極的に支援していく方針を示し、エコリングの短期的な利益を優先するのではなく、モノを大切にする価値観を社会に広めることが、結果として社会全体に資する活動となり、ひいてはリユース業界全体の持続可能性を高めていくという共生のビジョンを力強く語った。

環境から「生活防衛」へ:物価高騰が変えるリユースの意義

続いて議論は、リユースが現代社会で果たすべき役割の変遷という、よりマクロなテーマへと移行した。

小田氏は、リユースを取り巻く潮流が、かつての「環境保護(環境ファースト)」という理念主導のフェーズから、より現実的で切実な「生活防衛」や「安全保障」へと劇的に移行しているという現状分析を提示した。

「昨今、インフレ対策や経済安全保障の文脈からサーキュラーエコノミーを捉える人が増えてきました。新品調達コストや資源入手リスクが高まる中で、自国内の資源を回さなければならない状況になってきたことがよくわかります。これは、環境意識の高い層だけがサーキュラーエコノミーといっていた時代よりも面的に広がった点は良かったことだと言えるのですが、一過性にしないためにも、リユースがさらに日常に溶け込み、当たり前の選択肢になっていくことと、本質理解をする人を増やすことが必要だと思います。」 小田氏の指摘は、市民の物価高への懸念や産業界の資源調達リスクを背景に、政策・行政側も実利的なインフレ対策として舵を切っているというマクロな構造を浮き彫りにしている。

だからこそ、この潮流を「のど元過ぎれば」の一時的なトレンドで終わらせず、リユースを社会の不可欠なインフラとして深く定着させていく必要があるというメッセージだ。

エコリング オシンテック Bcorpイベント

こうした社会構造の変化と要請に対し、桑田氏は、企業が社会的な「公器」として機能するためには「圧倒的な信頼を勝ち取ること」が不可欠であると応じた。

不確実な時代において、大切な商品を託される「資源の回収窓口」となるためには、単なる商取引の枠を超えた高度な透明性と倫理性、そして自らを律する厳格なガバナンスが求められる。

その信頼を客観的に担保し証明する手段として、エコリングはB Corp認証の取得を決断したという。

B Corp認証は単なるマークの取得ではなく、企業の社会貢献度を可視化し、社内のガバナンス体制を強化するためのツールであった。つまり、客観的な証明を通じて、誠実な企業運営を継続する基盤を整えたのである。

桑田氏は、リユース事業を通じて社会的な信用を地道に積み上げ、商品を回収し循環させる「社会的な窓口」としての公器性を高めていくことが、エコリングの使命であると断言した。

不確実な世界情勢下でも、リユースというインフラを通じて人々の生活に安心と潤いを提供し、持続可能な未来を構築していく決意が、この対談を通じて明確に示された。

エコリング オシンテック Bcorpイベント

桑田氏の語る「信頼に基づく経営」と、小田氏の説く「社会のインフラとしてのリユース」は、変化の激しい現代において企業が進むべき道筋を照らしている。リユースは、生活防衛の要として、そして社会の信頼を紡ぐプラットフォームとして、その存在感をさらに増していくに違いない。

ワークショップ:RESET分析で構想する2030年のリユースの姿

イベントの後半では、参加者も交えたワークショップが行われ、「RESET分析」という手法を用いて2030年のリユースの未来像が描かれた。

RESET分析とは、オシンテック社(TIC)が開発した独自の分析手法であり、ルール(R)、自然環境(E)、社会の価値観(S)、経済的価値(E)、テクノロジー(T)の5つの視点から未来を予測するフレームワークである。

(RESET分析:https://www.tankyu-intelligence.org/reset-framework

会場では、今後5年以内に「優良事業者の基準と規制」「リユース先進自治体の出現」「不適切な海外輸出への規制」といった大きな変革がすべて起こり得る可能性があるという予測が共有され、参加者からも、それぞれの専門領域に基づいた多角的な未来像が提示された。

クリーニング業界に身を置く参加者からは、社会(S)の変化に注目し、お気に入りの服を直して使い続けることが「かっこいい」とされる文化の広がりを予見。

また、建築設計を専門とする参加者からは、経済(E)の転換について、蔵屋敷を宿泊施設に再生する事例を挙げ、新築にはない「歴史やストーリー」といった情緒的な価値が今後の経済活動の核になると説いた。

これらの多様な視点は、リユースが単なる物の売買を超え、あらゆる産業と交差しながら新しい価値を生み出していく可能性を示唆していた。

意志を持って「より良い価値観」を発信する

イベントの締めくくりとして、B Corpコンサルタントの岡氏から、これからの時代を生きる私たちに向けた重要なメッセージが送られた。それは、「世界がどうなるかを単に予測するのではなく、我々が世界をどうしたいのかという意志を持つこと」である。

B Corpという枠組みを通じて、企業がより良い価値観を発信し、社会の変革をリードしていく姿勢こそが、今求められている。今回のエコリングで行われたB Corpイベントは、リユースという営みが社会をどう支え、どう変えていくべきかという壮大なビジョンを共有する場となった。

鈴木氏が示した「ノーリグレット」な覚悟、そして対談で浮き彫りになった「信頼とガバナンス」を基盤とした経営は、リユースが生活防衛や安全保障の要となる未来への確かな布石である。

2030年に向け、リユースは人々の価値観と資源循環を繋ぐ、社会の「信頼のインフラ」へと進化していくに違いない。

エコリング オシンテック Bcorpイベント
参加者との集合写真
エコリング 姫路本社

B corpイベントが開催されたエコリング本社。国際的な環境建築認証であるLEED認証と環境性能とウェルネスを高水準で実現した建物としてCASBEEのスマートウェルネスオフィス認証Sランクを取得している。

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ライター:

広告代理店でディレクター・メディアマーケターとして活動後、フリーライターとして独立。広告業界時代には、多くの企業経営者やマーケティング担当者への取材を手がけ、戦略的コンテンツ企画に携わる。現在は、企業取材の執筆を中心に、ライター・編集者として活動中。

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