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医工連携の最前線!新生「東京科学大学」が描く医療イノベーションの未来 ― Science Tokyo Innovation Day イベントレポート

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Science Tokyo Innovation Day イベントレポート

2026年1月27日、東京科学大学(Science Tokyo)湯島キャンパスにて、Bio Engineering Capital株式会社(BEC)と東京科学大学医療イノベーション機構の共催により「Science Tokyo Innovation Day」が開催された。

2024年10月の大学統合を経て、医療系と理工系の英知が融合した同大学。イベント直前には「国際卓越研究大学」として正式認定を受けるなど、社会からの期待が最高潮にもなっていた。医工連携の強みを社会価値へと転換する熱気あふれる1日をレポートしていく。

医工連携による社会実装を加速させる「Science Tokyo Innovation Day」

アカデミア発の高度かつ冷徹な技術と、スタートアップの情熱が交差する会場。本イベントは研究シーズの社会実装を目指すピッチイベント「HARBOR Medical Innovation Challenge Demo Day」と、企業の革新的技術を紹介する「医療機器フォーラム」の二部構成で行われた。

Science Tokyo Innovation Day イベントレポート

開会の挨拶に立った田中雄二郎学長は、統合によるシナジーについて次のように語った。

「研究成果の事業化に挑戦する本フォーラムと、医療の先端技術を医療現場の視点から捉え直して新たな可能性を探る医療機器フォーラムが同時に開催されています。そのような日である今回は、まさに意義深い日」(田中氏)

この機会を通じて研究、技術、臨床、事業のそれぞれの立場を超えた対話を深め、新たな連携や挑戦への具体的な一歩を踏み出す契機にしたいと語った。会場には投資家や企業関係者が来場し、アカデミアの枠を超えた「共創」への強い関心が寄せられていた。

「HARBOR Medical Innovation Challenge Demo Day 採択プロジェクト」医療の未来を切り拓く6つの革新的ピッチ

Bio Engineering Capital(以下、BEC)の代表である島原佑基氏からの挨拶が行われたあと、スタートアップ6社によるピッチが行われた。

第一部「HARBOR Medical Innovation Challenge Demo Day採択プロジェクト」では、予選を勝ち抜き、3ヶ月程度のBECによるメンタリングを経て磨き上げられた6名が登壇。それぞれの研究をいかにして「社会の豊かさ」に繋げるか、熱いプレゼンテーションが繰り広げられた。

1. 薬剤耐性PCOS患者への新たな選択肢(WireTech株式会社 川越雄太氏)

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「薬と体外受精の間にある『空白』を埋めたい」 という願い。

世界で4,000万人という数字は、子供を望んでいるのに薬が効かない多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者の数だ。現在、排卵誘発剤が効かない「薬剤耐性」の患者に残された選択肢は、全身麻酔を伴う腹腔鏡下手術か、高額で負担の大きい体外受精(IVF)しかない。川越さんは「投薬と体外受精の間に選択肢がない。このギャップを埋めたい」と訴えた。

川越さんが開発したのは、経膣超音波を用いて外来で完結できる「超低侵襲卵巣穿刺デバイス」だ。既存の手術よりも低侵襲で、卵巣に局所的な刺激を与えて排卵を誘発する。所要時間はわずか15分程度で、新たな設備投資も不要。すでにモデル動物でのPoC(概念実証)を取得し、コア特許も確保済みだ。

 「コストはIVFの10分の1以下。痛みも副作用も最小限に抑え、自然妊娠を目指せる第三の選択肢を作る」という言葉に、会場からは大きな期待が寄せられた。質疑応答では、患者数の多い海外市場(米国など)から早期に展開していく戦略も語られた。

 

2. 次世代光免疫療法のための硬性鏡(東京科学大学 岡田隆平氏)

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頭頸部がんは、手術や放射線治療によって「声が出ない」「飲み込めない」といった重い後遺症が残ることがある。

これに対し、がん細胞だけを壊す「光免疫療法(アルミノックス治療)」が注目されているが、現在の技術には「光の当てムラ」や「術者の経験によるバラつき」という課題があり、光が漏れると正常組織を傷つけるリスクがある。

頭頸部外科医である岡田さんが開発したのは、プロジェクションマッピング技術を応用した「ダイナミックプロジェクション硬性鏡」だ。

内視鏡の先端から、腫瘍の形に合わせて正確に光を投影する技術で、高速3次元画像取得とAIによる腫瘍認識を組み合わせている。 「経験や勘に頼らない、誰でも正確にできる治療にしたい」と岡田さん。

2026年中にPMDA相談を行い、2028年の承認申請を目指す。質疑応答では、将来的には胃がんや食道がんなど多臓器への応用や、手術で切除しきれない微細ながんへの適用も見据えていることが語られた。

3. 在宅レーザーによる“せき”治療(カミマ株式会社 石橋直也氏)

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「いつ咳が出るか分からず眠れない、会議に出られない」という人々のよくある悩みに対して提示するのが、石橋さんの研究だ。薬が効かない難治性の慢性咳嗽(せき)に苦しむ患者は国内だけで数十万人いるとされる。 

石橋さんが提案したのは、薬ではなく「光」で咳を止めるという全く新しいアプローチだ。首筋に5分間レーザーを当てるだけで、咳や痛みを伝える神経(Aデルタ繊維・C繊維)の興奮を抑制し、即効で咳を鎮めることができるという。

自ら発見した「レーザーによる神経抑制メカニズム」を基に開発し、動物実験では咳の回数を30〜40%抑制することを確認済み。

「飲み薬は効くまでに1.5時間かかるが、レーザーなら5分。しかも全身の副作用がない」と、既存薬(P2X3受容体拮抗薬など)に対する圧倒的な優位性を強調した。 ビジネスモデルとして在宅医療機器としてのレンタルモデルを構想しており、呼吸器内科医からも「止めるべき咳を止めるための待ち望まれた技術」との評価を得ている。

4. 小型眼底診断支援装置の開発(国立がん研究センター東病院 水野優氏)

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「『ついで』の検査で、失明ゼロの世界を作る」「100歳まで、お孫さんの顔がしっかり見える世界を作りたい」という思いを持つ眼科医の水野さんは、チームで「小型眼底カメラ」と「診断支援AI」を開発した。

失明の原因となる緑内障や糖尿病網膜症は、早期発見すれば防げる。しかし、眼科医は内科医の10分の1しかおらず都市部に偏在しているため、受診のハードルが高く手遅れになるケースが後を絶たないことが、主な理由に挙げられる。

最大の特徴は、独自の光学系技術により瞳を開く薬(散瞳薬)を使わずに撮影できる点と、患者の眼の動き(固視微動)を逆利用して動画から高精度の静止画を抽出する「発想の転換」だ。従来数百万円した機器を10分の1程度のコストで提供可能にする。

 

5. 歯ぎしり測定システム(東京科学大学 大森浩子氏)

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日本人が歯を失う第3の原因である「歯の破折」。その大きな要因が、無意識に行われる「歯ぎしり(ブラキシズム)」という。しかし自覚症状が乏しく、既存の検査は入院が必要だったり、パートナーの証言頼みだったりと正確な診断が難しかった。

大森さんが開発したのは、自宅で手軽に測定できるテレメトリー型のセンシングシステムだ。顎に貼るセンサーとマウスピース型のデバイスで、睡眠中の噛む力(咬合圧)と筋肉の動き(筋電図)を測定し、スマホで可視化する。

「歯ぎしりは、体の異変を知らせる『炭坑のカナリア』」と大森さんは語る。測定データを基に、歯が折れる前に予防したり、マウスピースの効果を確認したりする「データ駆動型の歯科診療」を提案。歯科医院を通じてデバイスをレンタルし、データをフィードバックするというビジネスモデルで、800億円規模の市場開拓に挑む。

6. AIワーファリン内服量自動調整システム(東京科学大学 藤原立樹氏)

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心臓血管外科医の藤原さんが挑むのは、人工弁や補助人工心臓の患者に不可欠な抗凝固薬「ワーファリン」の管理問題だ。

この薬は個人差や食事の影響を受けやすく、投与量が適切でないと血栓ができたり出血したりする危険がある。医師は頻繁な電話対応や微調整に追われ、患者も不安な日々を過ごしている。

藤原さんは、過去15年分・世界有数の臨床データを学習させたAIモデルを開発。「AIと専門医の判断の一致率はほぼ100%に達している」と自信を見せた。

このシステムを使えば、医師の業務負担は10分の1に激減し、患者はスマホ入力だけで安心して生活できるようになる。現在は特許出願準備中であり、まずは国内の補助人工心臓患者から導入を目指す。

「将来的には抗がん剤や免疫抑制剤など、調整が難しい他の薬剤管理へも展開したい」と、医療DXによる現場改革への熱意を語った。

「社会実装は研究を届けるための翼」アカデミアとスタートアップ思考の融合

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ピッチ後には、Boston Medical Sciences株式会社 代表取締役CEOの岡本将輝氏による特別講演が行われた。

下剤を使わない大腸がん検査AIを開発し、グローバル展開を目前に控える岡本氏は「研究の完成は、患者価値の完成ではない」と断言した。

アカデミアが持つ「科学的妥当性」とスタートアップが持つ「不確実性への適応力」。この両輪が必要であるとし、「社会実装は、意味ある研究をより遠く、より多くの患者に届けるための『翼』である」という言葉で聴衆を鼓舞した。

産学連携の「港(HARBOR)」から世界へ。共創が紡ぐ医療イノベーション

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別会場で開催された「医療機器フォーラム」では、株式会社化繊ノズル製作所をはじめとする企業が、自社の微細加工技術を医療へ応用するための展示を行い、産学の枠を超えた具体的な技術マッチングが進められた。

イベントの締めくくりとして、LINK-Jの富山明彦氏は「イノベーションにはつながりが不可欠。今日のネットワークを活かし、ぜひこの『HARBOR(港)』から世界へ出航してほしい」とエールを送った。

アカデミアの知見、スタートアップの情熱、そして企業の技術力。これらが三位一体となって融合した「Science Tokyo Innovation Day」は、日本発の医療イノベーションが次々と社会へ実装されていく、輝かしい未来を感じさせる一日となった。

◎Bio Engineering Capital 代表 島原佑基氏には、以下の記事でもお話を伺っています。

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ライター:

1999年8月6日生まれ。早稲田大学文学部社会学コース卒業。Webマーケティング企業にて勤務したのち、フリーライター・ディレクター・メディアマーケターとして幅広く活動している。主にITやSDGs・メンタルヘルス、サブカルチャー、ライフスタイル分野に関わる。

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