
「ママ、転売ヤーって何?」 もし子供にそう聞かれたとき、胸を張って自分の仕事を説明できるだろうか。
在宅ワークや副業が当たり前になった昨今、「せどり」や「転売」は手軽な収入源として広まった一方、買い占めや高額転売といったネガティブなイメージもつきまとう。
しかし、その「物を仕入れて売る」という行為を、企業の在庫ロス解決と女性の自立支援を両立させる「ソーシャルビジネス」へと昇華させた企業がある。
株式会社Merone(メローネ)。2025年5月期で年商約4億円、会員数約2,300名を誇る急成長企業だ。
同社が運営する在宅型サステナ物販スクール「Re:che(リッシュ)」は、単なる収入を得る方法を教える場所ではない。
ここは、女性たちが「Re:seller(リセラー)」という新たな職業、働き方を身につけ、社会課題に向き合いながら誇りを持って生きるための「サードプレイス」となっている。
代表取締役の森川くみこ氏と、取締役COOの清水翔氏に、その独自のビジネスモデルと根底にある想いを聞いた。
「余っているのに足りない」不均衡を解消する
Meroneのビジネスモデルの核心は、アパレル業界が抱える「過剰在庫」と、働きたくても働けない「女性の労働力」のマッチングにある。
「物流の本質は『必要な商品を必要な人に届けること』です。しかし現状は、企業様が過剰在庫を抱え、ブランド毀損を恐れて廃棄せざるを得ない現実があります。一方で、育児や介護、あるいは障害などで外に働きに出られず、経済的な選択肢を持てない女性たちがいます。この両者を繋ぐのが私たちの役割です」と森川氏は語る。
Meroneは、提携するメーカーやリユース企業から、販売時期を逃した商品や滞留在庫を独自のルートで仕入れる。それをスクールの生徒たちが適正価格で購入し、メンテナンスや魅力的な商品紹介を加えて、メルカリなどの二次流通市場で販売する。

一般的な「転売」が市場の価格差のみを狙うのに対し、Meroneが育成する「リセラー」は、商品に新たな価値を吹き込む。
「単に横流しするのではなく、なぜこのブランドが愛されているのか、デザイナーはどういう想いだったのか、歴史や背景まで学びます。そうすることで、中古品であっても『安ければいい』ではなく『この価値ある一点物が欲しい』という付加価値をつけて次の方へ繋ぐことができるのです」。
この「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」のモデルは、業界内でも高く評価されている。事実、Meroneの会員が参加する古物市場では、一般的な相場の1.5倍で落札されることもあるという。
「ママたちの『これ可愛い!』という感性と、『絶対に売れる』という自信が、相場そのものを押し上げ、商品の価値を再定義しているのです」と森川氏は胸を張る。
孤独なママの「駆け込み寺」であり「滑走路」として

Meroneが急成長している背景には、現代の女性たちが抱える切実な経済的不安がある。森川氏によると、夫に内緒で数百万円規模の借金を抱えている女性も珍しくないという。
自己投資の失敗や生活費の補填など理由は様々だが、外に働きに出られない状況で追い詰められているケースが多い。
そんな彼女たちにとって、前述のRe:cheや、BPOサービス+BPO人材育成スクール「nomama(ノママ)」、すでに独自の溝座ビジネスを持たれている方へのサービスでもあるオンラインスクール特化型コンサルティング「SKETch(スケッチ)」といった多角的な入り口を持つMeroneのサービス群は、まさにセーフティーネットとして機能している。
特筆すべきは、「Re:che」のユニークな運営体制だ。一度入会金を支払えば、無期限で在籍が可能。育児や体調不良で休んでも、いつでも戻ってくることができる。
「いつでも帰ってこれるサードプレイス」というコンセプトのもと、稼ぐためのノウハウだけでなく、税理士や弁護士への無料相談、ファイナンシャルプランナーによる家計相談、さらには生活支援のクーポンまで、26年1月現在で500種類以上の生徒のための福利厚生を用意している。
「稼ぐというのは欲求段階としてはまだ低いところにあると思います。その先にある『なりたい自分』や『家族との幸せ』を実現するために、私たちは人生丸ごとをサポートしたい。だからこそ、孤独になりがちなママたちが、互いに励まし合い、自分の価値を再確認できるコミュニティ(文化)作りを徹底しています」。

COOの清水氏は、自身も過去に事業を営む過程で詐欺被害にあい多額の借金を背負い、そこから再起した経験を持つ。だからこそ、Meroneが提供する「考え方(マインドセット)」の教育に強い意義を感じている。
「入会後のグループインタビューで、99%の生徒さんが『収入が上がった』ではなく『人生が変わった』と言ってくれるんです。自分のことを自分で好きでいたい、誠実でありたい。そう願う女性たちが、誇りを取り戻していく場所になれていることが私たちの誇りです」と清水氏は語る。
「Re:seller」を憧れの職業へ
森川氏自身の原点もまた、挫折からのスタートだった。過去に大怪我を負い、職を失い、経済的に困窮した経験がある。自宅にある不用品を売ることで糊口をしのいだ経験が、現在の「在宅でできる物販」というビジネスの着想に繋がった。
「私自身、ママでも何でもないのですが(笑)、社会から評価されにくい『ママ』という属性の方々が、誰よりもポテンシャルを秘めていることを知っています。だからこそ、彼女たちが『転売ヤー』と後ろ指をさされるのではなく、環境問題に貢献し、経済を回す『Re:seller』として胸を張れる世界を作りたいのです」。
Meroneが見据えるのは、リユースを女性支援で回すことが当たり前になる未来だ。廃棄衣料という社会課題と、女性のキャリアという社会課題。この二つを掛け合わせ、鮮やかに解決していく彼女たちの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
感謝を伝えたいステークホルダーへのメッセージ
森川 くみこ 氏(株式会社Merone 代表取締役)より ブックオフコーポレーション株式会社 担当 森田様、および現場の皆様へ
ザッツファッションウィークエンド/ファッションバンク関係者の皆様へ



