ログイン
ログイン
会員登録
会員登録
お問合せ
お問合せ
MENU

法人のサステナビリティ情報を紹介するWEBメディア coki

星野源が紅白出場へ 不出場説を覆した特別企画と新番組始動

コラム&ニュース コラム ニュース
リンクをコピー
星野源さん
星野源さん Xより

紅白不出場説がささやかれていた星野源が、今年も大みそかの舞台に立つ。NHKは12月16日、シンガーソングライターで俳優の星野源(44)が『第76回NHK紅白歌合戦』に出場すると発表した。

昨年の選曲変更をめぐる騒動を経て、11回目の紅白は「特別企画」という異例の形に。さらに2026年1月からは、星野が企画に関わる新音楽番組がNHKで始動する。紅白出場と新番組、その連動の意味を読み解く。

 

紅白不出場説が流れた異例の年

12月に入っても紅白出場歌手の発表に星野源の名前が見当たらず、ファンの間では不出場説が広がっていた。2015年以降、10年連続で紅白に出場してきた星野にとって、名前が挙がらない状況は異例だった。

背景には、昨年の紅白で起きた選曲をめぐる混乱があると見られていた。紅白は国民的番組である一方、出演者にとっては発言や選曲の一つひとつが社会的な意味を帯びる場でもある。星野にとって、紅白との距離感が改めて問われた一年だった。

 

任天堂と結びついた特別企画

12月16日、NHKは星野の出場を「特別企画」として発表した。今回披露される楽曲は、今年発表されたアルバム『Gen』収録の『創造』。世界的な人気ゲーム「スーパーマリオブラザーズ」35周年のテーマ曲として制作された楽曲だ。

『創造』は、任天堂ゲーム機の起動音やゲーム内サウンドが随所に織り込まれ、歌詞にも任天堂が大切にしてきた言葉が散りばめられている。単なるタイアップではなく、星野自身の創作姿勢とゲーム文化への敬意が交差する一曲となっている。

パフォーマンスの舞台は京都にある「ニンテンドーミュージアム」。任天堂の歴史を体験できる施設で、アーティストがパフォーマンスを行うのは初めてだ。音楽関係者の間では、「任天堂側が場を預ける判断をしたのは、星野との長年の信頼関係があってこそ」との見方が出ている。

 

昨年の選曲騒動が残した影

星野と紅白を語るうえで避けて通れないのが、昨年の選曲変更騒動だ。昨年12月23日、星野が披露する楽曲が『地獄でなぜ悪い』だと発表されると、ネット上では批判が相次いだ。

同曲は映画監督・園子温氏による同名映画の主題歌で、園氏をめぐっては2022年に性加害疑惑が報じられ、2024年に報じた出版社との和解が成立している。

こうした経緯から、「紅白での歌唱は二次被害にあたるのではないか」という声が上がった。

批判を受け、NHKと星野サイドは3日後に曲目を『ばらばら』へ変更すると発表。星野は公式サイトで、『地獄でなぜ悪い』は自身がくも膜下出血で倒れた闘病期に書いた楽曲であり、映画のストーリーを表現したものではないと説明したうえで、二次加害の可能性を完全には否定できないと判断した背景を明かした。

 

異質だった紅白本番の姿

昨年の紅白歌合戦で星野源が見せた姿は、これまでの常連出場者としてのイメージから大きく逸脱していた。本番で星野は、NHKホールではなく局内の別スタジオから中継という形で出演。司会者からの呼びかけに対する応答は最小限で、トークらしいやり取りはほとんどなかった。

パフォーマンスの始まりも異様だった。ギターを抱えた星野は、椅子に腰かけたまま約15秒にわたり沈黙し、視線を落としたまま動かなかった。

紅白という生放送の舞台では異例とも言える「間」が置かれ、その緊張感は視聴者にもはっきりと伝わった。歌唱が始まってからも、星野は一度も笑顔を見せず、淡々と、しかし強い集中を感じさせる表情で『ばらばら』を歌い切った。これまで紅白では、会場の空気を包み込むような柔らかな表情や観客との呼応が印象的だっただけに、その変化は際立っていた。演出というよりも、星野自身の心情がそのまま表に出たような印象を受けた視聴者も多かった。

ネット上では放送直後から反響が広がり、「怒りと絶望に満ちた表情だった」「曲変更が本意ではなかったのでは」「あの沈黙にすべてが詰まっていた」といった声が相次いだ。一方で、「あれほど誠実な姿勢はなかった」「無理に明るく振る舞わなかったことに救われた」と、星野の在り方を支持する意見も見られ、評価は割れた。

このパフォーマンスは、単なる出来不出来の問題ではない。紅白という国民的番組の枠組みと、個人の表現が真正面から衝突した瞬間だったと言える。選曲をめぐる批判と変更という経緯を経てなお舞台に立つこと、その行為自体が星野にとって重い意味を持っていたことは明らかだ。

結果として、昨年の紅白は「いつもの星野源」を確認する場ではなく、彼が紅白という舞台とどう距離を取り直すのかを視聴者に突きつける時間となった。その経験があったからこそ、今年は無条件の出演ではなく、特別企画という形が選ばれたと見ることができる。

 

新音楽番組始動と紅白出場の連動

今回の紅白出場を読み解くうえで、見逃せないのが、2026年1月からNHK総合で始まる星野源企画の新音楽番組の存在だ。星野は新番組で、俳優の松重豊とともに出演し、音楽を軸に人や場所と向き合う構成に挑む。スタジオにとどまらず、街や旅先へ出向き、日常の風景の中で音楽を聴き、語り合うという内容で、星野自身が企画段階から深く関与している。

この番組は、楽曲を披露することを主目的とした従来型の音楽番組とは異なる。音楽が鳴る「場」によって、聴こえ方や意味がどう変わるのかを掘り下げる構成で、星野がこれまで断続的に手がけてきた音楽番組の延長線上に位置づけられる。歌手として前に出るだけでなく、音楽を編集し、語り、再定義する役割を担う点が特徴だ。

この新番組の始動と、紅白歌合戦での「特別企画」という扱いが同時期に示されたことは、NHKの編成意図を考えると象徴的だ。紅白は年末の国民的番組であると同時に、翌年の注力コンテンツや方向性を示す舞台でもある。通常の出場歌手枠ではなく、特別企画として星野を起用したことは、単なる歌唱以上の価値を提示したいという意思の表れと受け取れる。

昨年、選曲変更をめぐる騒動を経験した星野にとって、紅白は無条件で立てる場所ではなくなった。公共性の高い舞台で表現することの難しさを痛感したからこそ、今回は事前収録という形を選び、場所や楽曲、演出を含めて表現の条件を整えたと見ることができる。その姿勢は、新番組で目指す「自分の速度で音楽と向き合う場づくり」と重なっている。

紅白で披露される『創造』は、任天堂との信頼関係のもとに成立した楽曲であり、音楽と文化、歴史を横断する試みだ。年明けから始まる新番組は、その延長線上で、音楽を消費する対象ではなく、考え、感じ直す対象として提示していく場になる。

つまり、今回の紅白出場は新番組の単なる前宣伝ではない。昨年の混乱を踏まえ、星野源とNHKが関係性を組み直した結果としての接点だ。紅白の特別企画は、新番組へと続く入口であり、星野源という表現者が次の段階へ進むことを静かに示す場となっている。

 

安堵と驚きの声の先にある十五周年

出場発表を受け、Xには「ホッとした」「もう出ないと思っていた」といった声が広がった。星野にとって今年はソロデビュー15周年の節目でもある。

紅白という巨大な舞台に無条件で立つのではなく、表現の条件を整えたうえで向き合う。その姿勢は、新番組で描こうとしている世界観とも重なる。

星野源は今、紅白に迎合する存在ではなく、距離と条件を選び直した表現者として立っている。今回の特別企画は、その現在地を静かに示すものとなりそうだ。


Tags

ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

関連記事

タグ

To Top