決裂から決着まで 資本関係と株式の行方

炎上騒動の渦中にあった「冷感アイスポンチョ」事件が、ようやく幕を下ろした。
令和の虎の出資者として知られる安藤功一郎氏が、自身のYouTubeチャンネルで詳細を語った。
「冷感ポンチョを販売していた株式会社STEADについて、一つの区切りがついた」と語る安藤氏。その口調は穏やかだが、内容は重い。
発端は、志願者として番組に出演した金城猛男氏と、安藤氏が共同で設立したアパレル会社だった。資本金は1,000万円。折半の約束で始まったものの、当初金城氏には資金がなく、安藤氏が全額を立て替えた形で登記した。
そして今年夏、「通販の虎」で紹介された“冷感アイスポンチョ”が大ヒット。数億円の売上を記録し、一時は成功の象徴のように見えた。だが、配送の遅れや顧客対応の混乱が重なり、事業は急速に傾いていった。
その最中、金城氏が「もう一緒にできない」と離脱を申し出る。安藤氏は「せめて資本金の整理だけは」と申し入れたところ、8月29日、金城氏から500万円が振り込まれたという。
「正直、驚きました。あの状況でも筋を通したのは彼の誠実さです」と安藤氏。
ネット上で「逃げた」「踏み倒した」といった言葉が飛び交う中で、金城氏が約束を果たした事実は、安藤氏にとって大きな救いだった。
その後、双方が弁護士を立てて会社の価値(株価)を算定。最終的に、安藤氏が金城氏の持分50%を買い取ることで合意した。金額は非公開だが、正式な契約を結び、株式会社STEADは安藤氏の完全所有となった。
「感情的なもつれを引きずるより、お互いに前へ進もうと思いました。これで一区切りです」と安藤氏は語った。
3億円売れたのに、現金がない 残高“ゼロ”の衝撃
だが、話はここで終わらない。株式譲渡を終え、会社の銀行口座のIDとパスワードを受け取った安藤氏が目にしたのは、信じがたい現実だった。
「ログインして通帳を確認したら、残高がほとんどなかったんです。3億円近く売り上げたはずなのに、会社の口座にはお金がほぼ残っていなかった」
動画の中でそう語る安藤氏の表情には、疲労と困惑が入り混じっていた。
会社の決算は10月末。にもかかわらず、消費税や法人税を払う資金すら不足しているという。現在は安藤氏が個人資金を貸し付ける形で、会社をつなぎ止めている状態だ。
「どこでどう使われたのか、いま調べています。正直、予想していたよりもずっと厳しい」と、彼は率直に語った。
3億円の売上がどこに消えたのか。仕入れや広告、外注費などの支出に消えた可能性もあるが、詳細は明らかにされていない。ネット上では「横領ではないのか」という声も上がっているが、安藤氏は「いまは訴えるつもりはない」と静かに言葉を選んだ。
社名変更、「STEAD Technology」として再出発
安藤氏は同時に、会社名を「株式会社STEAD」から「株式会社STEAD Technology」に変更したと明かした。
「アパレル×テクノロジー=アパテック」という新しいカテゴリーを作りたい——。それが彼の次の目標だ。
冷感ポンチョに続き、現在は“温まる”生地を使った「温感ポンチョ」を開発中だという。
「冷やすだけじゃなく、暖める。日本の繊維技術は世界でも通用する」と語り、再起への決意をにじませた。
また、これまで兼任していた他社役職をすべて辞任し、STEAD Technologyに専念することも発表。「これからは、この会社一本で勝負します」と宣言した。
SNSでは賛否両論 「誠実な大人」か、「3億円の謎」か
動画公開後、SNSにはさまざまな声が寄せられた。
「人を悪く言わない、貶めない。安藤さん素敵な大人だな。追い詰めても良いのに」
という称賛のコメントもあれば、
「3億円も売れたのに現金がないと言われると横領の可能性を考えてしまいます。もしそうなら訴えてほしい」
「なんであれだけ売れててキャッシュ無いんだよw 税逃れと責任逃れで売りたかったんだろうな…」
と、疑念を投げかける声も少なくない。
ネットの反応を受け、安藤氏は「数字で示すしかない」と語り、今後は会計を透明化し、第三者によるチェック体制を導入する意向を示した。
“売れた後”をどう支えるか YouTube発ビジネスの試練
冷感ポンチョ騒動は、YouTube通販の「爆発力」と「脆さ」を象徴している。動画で一気に火がつく一方で、在庫・物流・カスタマー対応の基盤が整わなければ、信用を失うリスクが高い。
「売れることがゴールじゃない。売れた後に支える仕組みをどう作るか。そこに尽きます」と安藤氏は語る。
社名を変え、全てを背負い直した安藤氏。冷感ポンチョが残した教訓は、YouTube発ビジネスが抱える“構造的な弱点”そのものだった。



