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GENKING.(SANA)×BELMISEコルセット“酷似疑惑”と浴場論争──デザインとジェンダーが交錯する現代の境界線

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genking(SANA)さん Instagramより

タレントでインフルエンサーのGENKING.(SANA/本名:田中佐奈、40)が、着圧ウェアブランド「BELMISE(ベルミス)」と共同開発した新商品「魔法をかけるコルセット」をめぐり、実業家インフルエンサー“元鈴木さん”が手がける「Enchanted Corset(エンチャンテッド コルセット)」との“酷似疑惑”が浮上している。
同時に、GENKING.が女性用浴場を利用していることをきっかけに、SNS上ではトランスジェンダーの公衆浴場利用をめぐる賛否が噴出した。
一見無関係に見える二つの論争は、いずれも「身体」「自己表現」「社会的受容」をめぐる現代的な問題として深くつながっている。

 

GENKING.(SANA)──変化を恐れず、自己表現を続ける存在

1984年生まれ、愛知県出身のGENKING.は、インスタグラムで“謎の美男子”として注目を集め、テレビ出演をきっかけに人気タレントとなった。
2025年現在、40歳を迎える彼女は、年齢を公表した上で「年齢や性別に縛られたくない」と語り、自然体の生き方を貫いている。

2017年には性別適合手術を受け、戸籍上も女性に変更。その後は「ありのままの自分を愛すること」をテーマに、美容やファッションを軸に発信を続けている。
現在は「SANA」名義で活動し、ブランドプロデュースや講演、YouTube配信など多方面で表現を展開。性別や年齢を超えた生き方を語り、男女問わず支持を集めている。
自己変化を恐れずに挑戦し続ける姿勢こそ、GENKING.という人物の本質であり、今回のコラボ商品にもその哲学が息づいている。

 

「魔法をかけるコルセット」に浮上した“酷似疑惑”

BELMISEが発表した「魔法をかけるコルセット」は、2025年10月20日に先行販売、11月に本販売を予定している。
「姿勢を整え、気持ちまで前を向かせる」「自分を好きになる変身アイテム」というコンセプトが特徴で、GENKING.自身も「200種類以上のコルセットを試して理想にたどり着いた」と語っている。

しかし発表直後、X(旧Twitter)上では、元鈴木さんが代表を務めるAlyo社の「エンチャンテッド コルセット」と似ているとの指摘が急拡大。
リングファスナー、編み上げリボンの構造、さらには「自分を好きになる」といったメッセージまでが重なるとされ、炎上状態に発展した。

BELMISE側は「特定の商品を参考に設計した事実はない」と否定した上で、「製造会社と連携し、権利関係には細心の注意を払っている」と説明。
一方で「国内外の多くの製品を参考調査した可能性はある」とも述べ、Alyo製品がその一部に含まれていた可能性を完全には否定しなかった。

Alyo側は「弊社とは関係のない商品」と表明しつつ、「日本製にこだわり、自分を好きになる魔法という理念を込めて製作している」と主張。両者の溝は依然として埋まっていない。

 

デザインは“模倣”か“偶然”か──法的判断の難しさ

意匠の類似を法的に立証するのは極めて難しい。
意匠権が登録されていれば形状の一致が争点になるが、コルセットのような機能性を重視する商品では、保護範囲が限定的になる。
不正競争防止法も、消費者が混同するほど似ているかどうかを立証しなければならず、キャッチコピーや構造の一部が重なる程度では違法とまでは言い切れない。

また「自分を好きになる」「魔法」「変身」といった表現は一般的で、独自性を主張することは難しい。
つまり、今回の争点は“模倣の有無”よりも“ブランドとしての対応姿勢”に移りつつある。

BELMISEは「誹謗中傷を控えるよう呼びかける」声明を出し、SNS上の憶測や人格攻撃を戒めた。
現代の炎上社会では、事実関係よりも“対応の誠実さ”がブランド信頼を左右する。BELMISEの冷静な姿勢は、その意味で注目に値する。

 

浴場利用をめぐる論争──公共空間の線引き

もう一つの火種となったのが、GENKING.が女性用浴場を利用しているという話題だ。
この情報をきっかけに、X上では「トランスジェンダーの公衆浴場利用をどう扱うべきか」という議論が再び活発化した。

「生物学的性別で区分すべき」「女性客の安心感を守るべき」という声が多数を占める一方、「性自認を尊重する社会であるべき」「排除は差別だ」との意見も見られた。
法的には、公衆浴場法に明確な性別規定はないが、厚生労働省は2023年に「男女は身体的特徴で区分する」と通知しており、施設運営者の裁量を認めている。
このため、実際の運用は施設ごとに異なり、全国的な統一基準は存在しない。

この論争が示しているのは、社会がまだ“多様性”を現実の制度へ落とし込めていないという事実だ。
GENKING.が体現する「自分を偽らず生きる」という生き方は、称賛と反発の両方を呼ぶ。
それは同時に、社会が変化の途上にあることを意味している。

 

二つの論争が映す“今”──自分らしさをどう受け止めるか

コルセットのデザイン問題と浴場利用の是非。
そのどちらも、結局は「自分をどう表現するか」と「他者とどう共存するか」という同じ問いに行き着く。

BELMISEとAlyoの対立は“創造の境界”を、
浴場利用をめぐる議論は“社会の境界”を浮かび上がらせた。

GENKING.という存在が両者の中心にいるのは偶然ではない。
見た目や立場の変化を通して「本当の自分で生きるとは何か」を問い続ける彼女の姿は、時に賛否を巻き起こしながらも、人々に“自分らしさ”の定義を考えさせる。

“魔法をかける”とは、他人を変えることではなく、自分を信じる力を持つこと。
今回の論争が教えてくれるのは、誰もがその「魔法」を必要としているという現実だ。

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ライター:

千葉県生まれ。青果卸売の現場で働いたのち、フリーライターへ。 野菜や果物のようにみずみずしい旬な話題を届けたいと思っています。 料理と漫画・アニメが大好きです。

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