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ジャパネットたかた「おせち1万円値引き」は不当表示か?消費者庁と通販王国の対立、その背景

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じゃぱねっとおせち 
ジャパネットたかたより

大手通販会社ジャパネットたかたが、2025年正月用のおせち料理の販売において、消費者を誤認させる不当な価格表示を行ったとして、消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けた。同社はキャンペーン期間中に1万円値引きする広告を出していたが、実際にはキャンペーン終了後に通常価格で販売する計画がなかったと公正取引委員会が指摘。これに対し、ジャパネットたかたは「不当表示にはあたらない」と真っ向から反論し、法的な対応も検討する構えを見せている。

 

消費者庁の指摘:景品表示法違反「有利誤認」にあたる

今回の措置命令は、ジャパネットたかたが2024年7月22日から11月23日にかけて販売した2025年正月用「特大和洋おせち2段重」に関するものだ。消費者庁と公正取引委員会(以下、公取委)の調査によると、同社はこのおせちをウェブサイト上で「通常価格2万9980円」と表示し、「早期予約キャンペーン」として1万円値引きの1万9980円で販売していた。

しかし、公取委は、この「通常価格」に十分な根拠がないと判断した。理由は、キャンペーン終了後の11月24日以降に「通常価格」で販売する計画がなかったためだ。ジャパネットは「セール期間中に完売した」と説明しているが、公取委は、そもそも「合理的で確実に実施される販売計画」がなければ、将来の価格を比較対象として表示することは景品表示法違反(有利誤認)にあたると結論付けた。

景品表示法は、消費者が商品やサービスをより有利に購入できると誤解させるような不当な表示を禁止している。今回のケースでは、「キャンペーン期間を過ぎると高くなる」と消費者に思わせることで、購入を急がせ、不当に消費者の購買意欲を煽ったと見なされた。消費者庁は、ジャパネットに対し、今回の件を消費者に周知し、再発防止策を策定することなどを命じている。

今回の措置命令は、2020年12月に消費者庁が策定した「将来の販売価格を比較対象価格とする二重価格表示に関する執行方針」に則って出された初めての事例であり、今後の広告表示のあり方に大きな影響を与える可能性がある。

ジャパネットたかたの反論:「有利誤認には該当しない」

 

一方、ジャパネットたかたは、消費者庁の措置命令に対して、自社のウェブサイト上で長文の反論を掲載し、法的対応も検討する姿勢を示している。その主張は大きく分けて三つだ。

1. ビジネスモデルと企業努力の正当性

ジャパネットは、一括大量仕入れによってメーカーと協力し、高品質な商品を低価格で提供することを基本方針としていると強調。今回のおせちも、本来29,980円で販売できる商品を、43万個という大規模な仕入れによって19,980円で提供したものであり、企業努力による値引きだと主張している。さらに、おせちのように時期を過ぎると廃棄につながりやすい商品を、早期予約で需要を予測し、食品ロスを削減することは企業の社会的責任であるとも付け加えている。

2. 法令ガイドラインの準拠

ジャパネットは、消費者庁のガイドラインで「過去に販売した価格」を比較対照に用いることが認められていると指摘。今回の件でも、キャンペーン直前まで「通常価格29,980円」で販売しており、表示に適切な根拠があったと主張している。

3. キャンペーン終了後の販売計画

2022年と2023年の実績として、同様のキャンペーン終了後に通常価格で販売していたことを挙げ、2024年も同様の計画だったと説明。しかし、期間内に完売したため、販売を終了せざるを得なかったと述べている。「安く購入できる機会を公平に設けており、表示の正当性を失うものではない」と反論している。

「二重価格表示」とは?消費者庁と通販王国の見解の隔たり

 

今回の争点は、「二重価格表示」の正当性だ。二重価格表示とは、価格を比較して表示することで、消費者に「今買えばお得」だと感じさせる手法を指す。例えば、「通常価格1万円のところ、今だけ5000円」といった表示がこれにあたる。

この二重価格表示には、大きく分けて二つのパターンがある。

  1. 「過去の販売価格」との比較
    過去に実際に販売していた価格を比較対象に用いる場合。この場合、比較対象となる価格で実際に販売されていた実績がなければならない。
  2. 「将来の販売価格」との比較
    将来的に販売予定の価格を比較対象に用いる場合。これが今回のジャパネットのケースだ。この場合、消費者庁の新たな執行方針では、「合理的かつ確実に実施される販売計画」がなければ、不当な表示と見なされる。

ジャパネットは、過去にも29,980円で販売していた実績があり、また来年も同じような価格で販売する計画があったと主張している。しかし、公取委は、おせちという商品特性上、キャンペーン終了後に販売する計画がないことは明らかであり、ジャパネット側の「期間内に完売した」という説明は、あくまで結果論に過ぎないと判断している。

過去にもあったジャパネットと消費者庁の対立

 

実は、ジャパネットたかたが景品表示法違反で措置命令を受けるのは今回が初めてではない。2018年10月にも、エアコンとテレビの販売価格を巡って同様の措置命令を受けている。この時も、「ジャパネット通常税抜価格」として販売実態のない価格を表示し、それより安く見せる「二重価格表示」をしたとして、5180万円の課徴金納付を命じられている。

この時のケースも、今回の件と構図は似ている。販売実態のない「通常価格」を比較対象とすることで、消費者に不当な有利性を誤認させたというものだ。ジャパネットは、この時も自社のビジネスモデルの正当性を主張したが、消費者庁はそれを認めなかった。

今回の措置命令は、その2018年の件以降に消費者庁が定めた新たな執行方針に基づいている点が重要だ。消費者庁は、今回の措置命令が「新たな方針に則って初めての事例」であることを強調しており、これは通販業界全体に対する警告であると解釈できる。

まとめ:消費者が「お得」を見抜くために

「期間限定」や「今だけ」という言葉に惑わされず、その価格が本当に適正なのか、他の商品や過去の販売実績と比較してみましょう。企業が強調する「通常価格」に、明確な根拠があるかどうかも見極める必要があります。今回のジャパネットたかたのケースは、消費者庁の新しい方針に基づく初めての措置命令であり、今後も同様の事例が増える可能性があります。私たち消費者が賢く買い物をして、公正な市場を育むことが求められているのです。

参考:消費者庁からの景品表示法に関する措置命令に対する当社の見解(ジャパネットたかた)

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ライター:

新聞社で記者としてのキャリアをスタートし、政治、経済、社会問題を中心に取材・執筆を担当。その後、フリーランスとして独立し、政治、経済、社会に加え、トレンドやカルチャーなど多岐にわたるテーマで記事を執筆

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