
株式会社メタプラネット(東証スタンダード、コード3350)が9月10日未明に発表した海外募集による新株発行価格の決定が、株主に大きな衝撃を与えている。発行価格は1株553円と、前日終値614円から9.93%のディスカウントで設定された。
発行株数は3億8500万株に確定し、想定していた5億5500万株を下回ったものの、既存の発行済株式数7億5597万株に対して大幅な希薄化効果をもたらすことは避けられない。調達額は総額約2041億円に達する見込みで、そのうち1837億円をビットコインの追加購入に充てると説明している。
株主の嘆き「自分たちの株が薄まるだけ」
今回の増資をめぐっては、株主の間から怒りと失望の声が噴出している。SNSでは「可哀想なメタプラホルダーのために」と題して、わかりやすく解説される投稿が拡散している。
「会社が新しい株を5.5億枚も作って売ろうとしている。しかも“定価”より安い値段で。今まで株を持っていた人の株の価値がどんどん薄まって損してしまう。逆に特別に安く買える人たちだけが大儲け。これは『株主を大事にしていない』ということだ」と指摘され、既存株主にとっての不利が強調された。
さらに「本来は公募増資のときに価格を決めるはずなのに、あえて遅らせたのは暴落を見越して時間稼ぎをしたのではないか」という疑念も広がっている。
前場で愕然とした株主たちの声
9月10日午前、東京証券取引所の板を見つめていた個人株主の一人は「まさかここまで下がるとは思わなかった」と声を失ったという。寄り付き直後から売りが膨らみ、板に並んだ売り注文の厚みに目を疑う投資家も少なくなかった。
「ここまでやられると信用買いしていた人は完全に追い込まれる。含み損が膨らんで身動きが取れない」と語る株主の様子は、まさに愕然とした表情そのものだった。SNSにも「前場で心が折れた」「売るに売れず、ただ眺めるだけ」という嘆きがあふれ、投資家心理の冷え込みを象徴した。
株価は続落、「落ちるナイフ」状態
実際に市場は敏感に反応した。8月下旬に増資発表が行われて以降、同社株は30%以上下落。9月10日の取引では一時前日比8.3%安の563円まで下げ、約4カ月ぶりの安値をつけた。
SNS上では「ぎゃあああああ!」と絶叫する投稿や、「落ちるナイフ状態で底が見えない」「信用買い勢は全員諦めよう」という悲観論が相次いだ。中には「会社はこの金でディスカウントMBOして伝説を残してほしい」と自虐的に語る声も見られる。
メタプラ側の事情 ビットコイン戦略への執念
では、なぜメタプラネットはここまで株主の反発を招くスキームを選んだのか。背景には、ビットコイン購入を軸にした独自戦略がある。ホテル運営から転じた同社にとって、仮想通貨投資は新たな成長の柱であり、今回の増資によって一気に保有BTCを拡大する狙いがある。
資金調達の方法としては、これまでもMSワラントや優先株といった「株主にとっては不利だが、会社側には柔軟な資金調達を可能にする手段」を活用してきた。株価が低迷する中でも手元資金を確保し、ビットコイン市場が再び上昇基調に入った際に大きな果実を得る──経営側はそうしたシナリオを描いている可能性が高い。
一方で、既存株主から見れば「未来の夢に賭けるために、現在の自分たちが犠牲になっている」構図に他ならない。この乖離こそが、今回の阿鼻叫喚を生んでいる。
東証の姿勢にも批判
一方で、東証がこの増資スキームを許容したことに対する批判もある。「既存株主を犠牲にするやり方を市場が認めてしまっている」との不信感は根強く、資本市場全体への信頼を揺るがしかねない状況だ。
ホテル事業からビットコイン投資事業へと舵を切ったメタプラネット。その資金調達戦略は巧妙さを見せる一方、株主の信頼を犠牲にしているとの見方は避けられない。
阿鼻叫喚の渦中にある株主たちは、この先さらに株価が下落するリスクに震えている。投資家にとっては、損切りか、あるいは奇跡的な反発に賭けるか、苦渋の選択を迫られている。