
国連は8月22日、パレスチナ自治区ガザ地区で飢饉(ききん)が発生していると正式に宣言した。ユニセフのラッセル事務局長は「子どもは泣く力もなく静かに餓死している」と訴え、イスラエルによる支援物資制限の緩和を各国に要請。英国のラミー外相も「完全に予防可能だった人災」と強く非難した。イスラエル政府は「完全なうそ」と反発している。
ユニセフ「救える命がある」
来日中の国連児童基金(ユニセフ)のキャサリン・ラッセル事務局長は、東京都内での取材に応じ「筆舌に尽くし難い地獄のような状態だ」と表現。ガザでは271人が栄養失調や飢餓で死亡し、そのうち112人が子どもだった。
「物資を入れられれば救える命は多くある」とし、日本を含む各国に働き掛けを強めるよう求めた。
英国外相「義憤を覚える」
国連の発表を受け、英国のデイビッド・ラミー外相は声明で「イスラエル政府が十分な援助を拒否したことで人災が引き起こされた」と非難。「義憤を覚える」と強い表現で批判し、事態改善に向け即時停戦を訴えた。
また、ガザ市での軍事作戦を「飢饉の震源地をさらに悪化させるものだ」と指摘し、軍事行動の停止を求めた。
国連「飢饉」正式宣言、イスラエルは否定
国連(UN)は22日、ガザ地区の食料危機を最も深刻な「飢饉」と公式に宣言。報告書では、ガザ住民の約50万人が壊滅的な飢餓に直面し、9月末までに被害が中部デイルアルバラや南部ハンユニスへ拡大する可能性を示した。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は声明で「イスラエルには飢餓政策はない」と否定。「戦争開始以来、200万トンの物資を搬入している」と反論している。
支援の遅れ、国際社会の課題
ガザへの人道支援は、停戦交渉決裂を背景に一時全面停止され、その後も厳しい検査や現地での略奪により住民に行き渡っていない。国連や人道団体は「イスラエルによる組織的な妨害」と批判している。
ラッセル事務局長は「遠い国の悲劇ではなく、自分の子どもに起きたと想像してほしい」と訴え、国際社会に持続的な支援を求めた。