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名古屋拠点のFIRSKY、フェンタニル密輸の司令塔か トランプ激怒の裏に“日本の鈍感”の噂

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中国系企業「FIRSKY」の実態と浮かぶ法制度の盲点

フェンタニルの密輸組織
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名古屋市に拠点を構えていた中国系企業「FIRSKY株式会社」が、合成麻薬フェンタニルの前駆物質を米国へ不正輸出する中国組織と関係していた疑いが浮上した。法人登記を経て日本に拠点を築いたFIRSKYが、物流・資金管理の拠点として機能していたとの情報をもとに、厚生労働省や愛知県が対応を強化している。

 

中国・武漢と結びつく企業 “EV企業”の仮面

FIRSKY株式会社は2021年6月、沖縄県那覇市で設立され、その後2022年に名古屋へ本店を移転した。代表取締役の夏(Xia Fengzhi)氏は、中国・武漢に本拠を置く化学メーカー「湖北アマベルバイオテック(Hubei Amarvel Biotech)」との人的・資本的な関係が指摘されており、日経新聞の報道によると、同社を通じたフェンタニル前駆物質の米国向け不正輸出が疑われている。

名古屋での活動当初、夏氏は「バッテリー関連の事業を展開したい」と語り、華僑関係者を通じて市内のオフィス一室を借りていた。だが実際には、武漢の化学企業と結びついた薬物関連事業の拠点だった可能性がある。SNSではビルを“自社施設”と偽って投稿し、ホテル予約サイトや決済サービスにも共通のアカウントが残されていた。

名古屋の拠点では、フェンタニルの前駆物質を保管・梱包した上で、国際郵便を使って米国へ発送していたとみられる。代金は仮想通貨でやりとりされ、追跡を困難にする仕組みも構築されていた。FIRSKYは2024年7月に法人を清算しているが、ちょうどその頃、米国では提携先の化学企業をめぐる公判が始まっていた。

 

善意が裏切られた華僑社会 「同胞でも見極めは必要」

名古屋の華僑社会で長年活動してきた中部日本華僑華人連合会会長の金大一氏は、FIRSKYの夏氏にオフィススペースを貸していた。「技術もあるし真剣だと見えた。だから助けようと思った」と語るが、後に薬物密輸の疑いを知り、「だまされた」と肩を落としたことが日経新聞で報道されている。

金氏によれば、夏氏とは一時期しか会っておらず、事務所の使用実態や出入り人物の詳細については把握していなかったという。家賃の支払いも途絶えたまま、FIRSKYは姿を消していた。

 

善意の隙間を突かれた現地社会 “摩擦のなさ”が盲点に

この日本人と華僑コミュニティの間にある「摩擦のなさ」こそが、監視の目を曇らせる要因になっていたとの指摘もある。外見や言語の類似性、文化的な親和性があることで、日常的な違和感が生まれにくく、不審な動きに対する警戒心が薄れやすい。実際、名古屋でFIRSKYの代表・夏氏にオフィスを貸していた華僑団体の代表者も、本人を何度か見かけただけで、具体的な事業内容や出入りする人物の情報までは把握していなかった。

華僑社会は長年にわたり、日本での定住や事業活動を通じて地域と信頼関係を築いてきた。その中で、表面的には問題を起こさず、丁寧に立ち回る人物が突然“裏の顔”を見せた場合、既存の人間関係では異常を感知しにくい構造がある。善意で支援した相手に裏切られた地元関係者の落胆は大きく、「同胞であっても見極めは必要だ」との声も漏れる。

制度や技術の整備と同様に、地域社会の中で生まれる信頼や交流にも、犯罪組織が巧みに入り込む余地がある。国籍や文化の違いではなく、「警戒すべきは誰か」という視点の更新が、これからの共生社会に求められている。

 

厚労省・愛知県が対策へ 制度的課題も顕在化

厚生労働省は7月1日、全国の自治体に対し、フェンタニル原料を取り扱う事業者に対する監視強化を指示。疑わしい取引を確認した場合には行政への届け出を徹底するよう求めた。愛知県はこれを受け、県内26事業所を対象に立ち入り検査を開始している。

同省は6月末、訪日外国人向けの薬物規制告知ページにもフェンタニルを追記し、情報提供を強化している。

 

日本は“中継地”ではなく“拠点”だったのか

今回の事案は、単なる通過地ではなく、日本国内に“密輸の中核的拠点”が存在していた可能性を示している。名古屋港という物流要衝、外国人の法人設立が容易な制度、華僑社会という文化的な緩衝地帯。

これらが複合的に作用し、FIRSKYのような組織の活動を見えにくくしていた。

日本の対応に“激怒”の米国 トランプ氏が報復関税を示唆

 

この事件の報道が出た直後、トランプ大統領は専用機内で記者団に対し、日本との交渉に「極めて不満」と述べ、「30%か35%、あるいは我々が決めた数字の関税を課す」と通告した。公には、日本が米国車を受け入れない姿勢や農産品市場の開放に消極的なことなどが不満の背景とされている。

ただ一部では、日本がフェンタニル密輸の“中継地”というより“拠点”として機能していたとの情報に対し、政府の対応が後手に回っていたことに米国が苛立ちを募らせたのではないか、との見方もある。フェンタニル問題をめぐる日本政府の鈍さに対して、米側が水面下で不満を抱いていた可能性は否定できない。

 

そもそも今回の密輸情報自体が米国当局から日本経済新聞に「リーク」された可能性も指摘されている。赤沢亮正経済再生担当相は今年に入り7度にわたって訪米したが、6月下旬には米閣僚と会談の機会すら得られなかったという。また、政府首脳によるNATO首脳会議の欠席も含め、日本の外交姿勢に対して米政権が不信感を強めているとの観測が流れている。

こうした動きは、今月9日に迫る「相互関税」上乗せ分の停止期限をめぐる交渉に影を落としており、対米通商政策はさらに厳しい局面に入りつつある。

赤沢亮正経済再生担当相がたびたび訪米しながらも、首脳レベルの会談に至らなかったことや、NATO首脳会議を欠席した石破政権の外交姿勢に対しては、国内外からの懸念も広がっている。

 

グローバル犯罪にどう向き合うか 問われる制度と信頼

出入国在留管理庁の発表によると、日本国内の華僑・華人は80万人を超え、過去30年で4倍に増加している。外国人起業支援策が地方創生の一環として推進される一方で、制度の“死角”を突くケースも出てきた。

今回のFIRSKY事件は、日本が麻薬密輸の「物流」「資金」「偽装」のすべての要素において活用されていた可能性を示しており、国家としての対応力が問われている。真に信頼される国であるためには、開放性と安全保障のバランスを見直す必要がある。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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