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【2025年6月猛暑の原因】東大・京大が「温暖化なしでは起きなかった」と結論

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WACが発表、「6月の異常高温は人為的温暖化によるもの」

6月の猛暑の原因は人
DALL-Eで作成

国内の気象研究者で構成される「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」は6月26日、6月中旬に記録的な高温をもたらした気象現象について、「人為的な地球温暖化がなければ発生しなかった」とする分析結果を発表した。WACは、東京大学と京都大学の研究者有志により2025年5月に発足。異常気象と気候変動の因果関係を科学的に解明する日本初の拠点として注目を集めている。

WACが分析対象としたのは、6月16日から18日にかけての3日間。この期間、日本列島上空およそ1500メートルの平均気温は17.2度に達し、1950年以降で最も高い水準を記録した。気象庁の統計でも、5月から6月中旬にかけて猛暑日(最高気温が35度以上)を観測した地点は200カ所を超え、観測史上最多となった。

 

気象庁の統計でも異常 全国200地点超で猛暑日を観測

高温の直接的な要因には、太平洋高気圧の勢力拡大がある。日本列島が広範囲にわたり暖かい空気に覆われたことで、通常よりも気温が上昇したとみられている。しかしWACは、こうした自然現象のみでは今回の異常高温は説明できないと指摘する。

WACは、異常気象に地球温暖化が与える影響を科学的に定量化する「イベント・アトリビューション」という手法で今回の事象を解析した。その結果、上空1500メートルの気温が17.2度を超える確率は6%、すなわち約17年に1度の頻度でしか発生しない現象であることがわかった。一方で、人為的な温暖化が存在しなかったと仮定した場合、この高温が生じる確率は「ほぼ0%」であるという。

 

体感でも「異常だった」6月 銀座の通行人、小学校、労働現場の声

この分析は、単に気温の異常性を示すにとどまらない。今回の異常高温は、実際に生活現場でも深刻な影響を及ぼしている。たとえば、東京都中央区・銀座では6月17日、午前中からアスファルト上に立つだけで強烈な熱気に包まれ、通行人が日陰を探して立ち止まる姿が多く見られた。都内の消防局によると、16日から18日の3日間で熱中症の疑いによる救急搬送は前年同期比で約1.5倍に達したという。

 

また、建設現場で働く40代男性は「6月にしては異常。例年の7月中旬並みの体感。1時間外に出ているだけで消耗が激しい」と語る。都内の小学校では、体育の授業を中止した学校も出ており、教員からは「これが6月の気温なのかと驚いた」との声が上がる。物流や配達など屋外業務に従事する労働者にとっても、「体が持つのか不安になる夏の始まり」となっている。

2050年には「この6月」が“普通”になる? 環境省とIPCCが示す未来

 

こうした「体感的異常」は、今後さらに常態化する可能性がある。環境省が公表している「気候変動予測データセット」によれば、2050年の東京の6月平均気温は現在より1.5〜2.0℃上昇する見通しだ。これは「朝から熱中症リスクのある気温」が1カ月続くことを意味する。WACの分析で「17年に1度」とされた今年の異常高温は、30年後には「毎年のように訪れる6月」になるという現実が迫っている。

すでにその兆しは日常生活の随所に現れつつある。桜の開花時期は年々早まり、旧来の季語とのずれが目立ち始めている。夏の甲子園は熱中症対策を理由に、試合開始時刻の繰り下げが常態化している。こうした変化は単なる気象の異変ではない。「気候」が私たちの文化や生活の骨格にどれほど深く結びついていたかを、改めて気づかせる現象でもある。

 

四季を失うということ 文化と自然の境界線が曖昧になる時代

WACの研究者らは、今回の高温を「自然の異常」ではなく「人間活動がもたらした結果」として定義した。太平洋高気圧の張り出しという自然要因が重なっても、温暖化という“温度の底上げ”がなければ今回のような高温には至らなかった。これは、「自然」と思っていた気候の姿が、すでに人間の行動によって変質していることを意味する。

 

私たちはいま、四季を“失う”時代の入口に立っているのかもしれない。かつて春の訪れを告げた梅の香り、夏の夕立、秋の虫の声、冬の空気の鋭さ——こうした感覚は、やがてデータと記憶の中にしか残らなくなるのかもしれない。

「自然現象ですら人為的」な時代へ WACが示した問いかけ

 

今回のWACの報告は、単に「今年が暑かった」という観測結果ではない。それは、科学というフィルターを通じて「未来に起こることの予行演習」が、すでに始まっていることを示す警鐘でもある。

気温という「物理量」が、生活者の「実感」を裏づけ、文化と自然の境界を揺さぶる。いま問われているのは、「どれだけ暑くなったか」ではない。「どこまでこの異常を“当たり前”にしてしまうのか」である。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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