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「環境」が国語や数学と並ぶ?福岡の私立校、リンデンホールスクールの先端教育とは

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オーガニック給食でJAS認証も取得、グローバル人材を育むユニークな学びの現場に迫る

リンデンホールスクールのHP
リンデンホールスクールのHPより

「国語」「数学」「理科」…に続いて「環境」?そんなユニークな時間割を持つ学校が福岡にある。太宰府市と筑紫野市にキャンパスを構える私立の小中高一貫校、リンデンホールスクールだ。文部科学省より「環境教育課程特例校」に指定されている日本唯一の学校であり、環境を「基礎科目」として正式にカリキュラムに組み込んでいる。

授業は座学にとどまらない。海岸清掃で拾ったマイクロプラスチックを分析したり、自分が1日で出すごみの量をグラフ化したりと、環境課題を“自分ごと”としてとらえる工夫が満載だ。教室を飛び出し、フィールドワークやデータサイエンス、海外発表まで経験するこの教育は、単なる体験型学習にとどまらない。グローバル社会で活躍するために必要とされる「考える力」「伝える力」「実行する力」を土台から育てている。

 

英語イマージョンとIBプログラムで世界とつながる学び

リンデンホールスクールのもう一つの大きな柱が、英語イマージョン教育と国際バカロレア(IB)プログラムの導入だ。小学校から英語を日常言語として扱い、高校1年後期からは英語で行うIBディプロマ・プログラムに参加。生徒たちは英語でレポートを書き、ディスカッションを交わしながら、環境・倫理・経済など複雑な社会課題への洞察力を磨いていく。

リンデンホールスクール授業の風景
リンデンホールスクール授業の風景(提供:学校法人都築育英学園)

こうした教育の成果は、進学実績にも表れている。2023年度卒業生の約半数が海外大学に進学。ケンブリッジ大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、UCLA、コロンビア大学など世界トップレベルの名門校に合格している。

JAS認証取得──学校給食が「学び」の一環に

食育の一環として、給食で出た野菜や果物の皮などは、生徒がコンポスト(堆肥)にし、それを使って校内にある畑で野菜を育てる取り組みを行っています。
食育の一環として、給食で出た野菜や果物の皮などは、生徒がコンポスト(堆肥)にし、それを使って校内にある畑で野菜を育てる取り組みを行っているようだ。

また、リンデンホールスクールは「食」でも環境教育を実践している。2024年、同校は小中高すべての課程において「オーガニック給食の通年提供」により、日本農林規格(JAS0004)の認証を取得した。これは日本初の事例である。

提供されるのは、地元の無農薬農家や養鶏場、市場から届く食材を使った和定食が中心。給食で出た野菜の皮やくずはコンポストにし、校内の畑で育てた野菜として循環。実際に畑でスナップエンドウを育てて研究発表を行った高校生もおり、「食」を通じた学びが日常に根付いている。

この給食を支えるのが、2009年から都築育英学園の総料理長を務める杉本氏だ。フランス料理や和食の修業を経て渡仏経験も持つ杉本料理長は、「体を作る食材に妥協しないことが、子どもの健やかな成長には不可欠」と語る。

「給食で認証を取るのは本当に困難でした。途中で心が折れそうになったこともあります。でも、どうすれば有機JAS法をクリアできるかを考え続けた結果、ようやくここまで来られました。子どもたちは、今はその価値を理解できないかもしれません。でも、いつの日か『あの給食が自分の健康を支えてくれた』と思い出してくれることを願っています」(杉本総料理長)

同校のオーガニック給食は、自然の摂理に合わせて旬の食材を用い、メニューも月ごとに調整されている。下処理に時間のかかる有機野菜をあえて選ぶのも、「地球にも体にもやさしい選択を」という信念に基づく。完璧を求めすぎず、挑戦を続ける姿勢が、食を通じた教育にも表れている。

校長・都築明寿香氏の言葉に見る教育への信念

中高学部の都築明寿香校長は、今回のJAS認証について次のように語っている。

リンデンホールスクール(小・中高学部) 都築明寿香校長
都築明寿香校長

「日本で初めて小・中・高すべての課程でJAS0004認証を取得できたことを、心から誇りに思います。これは『環境にも人にも優しい野菜を使用し、児童・生徒に安心・安全で美味しい食事を届けたい』という、私たちの願いが形になったものです。学校だけでなく、保護者や地元生産者の方々、スタッフ全員の努力の結晶です。」

この言葉には、教育とは知識の授与だけでなく、子どもたちの感性と行動を育てる営みであるという信念が込められている。実際、リンデンの教育では、生徒が自らの研究成果を国内外のフォーラムや大学で発表することが推奨されており、「考えて終わり」ではなく「発信する力」を重視している。

 

社会を変える若者を育てるために

政府は2023年、「体験を通じた環境教育」の重要性を明記した基本方針を改定した。だが、これを実践し、成果として示している教育現場はまだ少ない。リンデンホールスクールはその先陣を切る存在として、今後の教育のあり方に一石を投じている。

「環境問題を“他人事”ではなく“自分ごと”として捉える力」。この力こそが、地球規模の課題に立ち向かう次世代の必須スキルだ。同校で育つ子どもたちは、確かにそれを身につけ始めている。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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