
老化は避けられないもの。そう思っている人に朗報だ。健康食品大手のファンケルは、老化細胞を減らす成分「アグリモール」を世界で初めて特定したと発表した。この発見は、加齢に伴う体の不調や疾患の予防に新たな道を切り開く可能性がある。ファンケルは今後、アンチエイジングを目的としたサプリメントの開発を進めるという。老化予防に関心のある人々にとって、注目すべきニュースとなりそうだ。
老化細胞とは? 加齢とともに増える“厄介者”
老化細胞とは、細胞分裂が停止し、本来の機能が失われた状態の細胞を指す。これらは「老化促進物質」を分泌し、周囲の細胞の老化を加速させる。加齢とともに体内に蓄積し、さまざまな疾患や身体機能の低下を引き起こす要因とされている。
これまで老化細胞の測定は困難とされてきたが、ファンケルはわずかな採血で加齢の進行具合を測定できる「老化細胞の測定方法」を確立。これにより、老化細胞の状態を可視化できるようになった。
ファンケルが発見した“老化細胞除去成分”とは?
ファンケルが特定したのは、バラ科の植物「キンミズヒキ」に含まれる抗酸化物質「アグリモール類」だ。古くから日本や台湾、中国などでお茶や食用として親しまれてきたキンミズヒキに、老化細胞を除去する効果があることを発見した。
この成分の働きについて、ファンケルは「キンミズヒキ由来のアグリモール類が体内に蓄積した老化細胞に働きかけ、除去する作用が確認された」と説明している。
臨床試験で実証された効果
ファンケルは、日本人の40歳〜60歳未満の男女110人を対象に臨床試験を実施。試験では、キンミズヒキ由来のアグリモール類を含んだサプリメントを摂取したグループと、プラセボ(偽薬)を摂取したグループで比較を行った。
その結果、キンミズヒキ由来のアグリモール類を摂取した男性グループで、血液中の老化細胞の減少が確認されたという。特に、キラー細胞と呼ばれる免疫細胞に含まれる老化細胞の減少が顕著だった。
この研究結果は、スイスの栄養学専門誌「ニュートリエンツ」に掲載され、科学的根拠のある成果として評価されている。
老化細胞除去がもたらす健康効果
老化細胞の蓄積が原因とされる疾患には、神経の異常、目の機能低下、悪性腫瘍などがある。ファンケルによると、老化細胞を減らすことで、これらの加齢に伴う疾患のリスク軽減が期待される。
また、老化細胞が減少することで、細胞の活性が高まり、肌のハリや健康維持の効果も見込まれるという。これにより、「アンチエイジング効果」への関心が高まっている。
サプリメント開発への期待
ファンケルは今後、この成分を活用した機能性表示食品やサプリメントの開発を進める方針だ。特に、40代以降の健康維持や美容に関心のある層に向けた製品が期待される。
ファンケルの機能性食品研究所の寺本祐之所長は、「健康寿命を延ばし、歳を重ねても元気に過ごせる社会を目指したい」と語っている。高齢化が進む日本において、老化対策の新たな選択肢として注目される。
老化は防げる時代へ?
これまで「老化は避けられない現象」と考えられてきたが、近年の研究では「老化は防げる」「改善できる」という考え方が広まりつつある。ファンケルの発表は、その可能性を大きく広げるものとなった。
キンミズヒキ由来のアグリモール類が持つ可能性は、老化による身体機能の低下や病気の予防にとどまらず、「若さを保つ」というアンチエイジングの観点からも期待が寄せられている。
ファンケルが開発するサプリメントが市場に登場する日も近いかもしれない。
【参照】
人の血液中における老化細胞定量法の確立とキンミズヒキ由来アグリモール類摂取による人での老化細胞除去作用の検証(ファンケル)