さとこ整形外科が提唱する「運動器美容」が注目を集めている。整形外科が地域住民の健康寿命延伸に取り組む新たなアプローチとは何か。
香川県から生まれる新サービスの紹介
香川県丸亀市に拠点を置くさとこ整形外科は、2025年1月に予防医療サービス「Satoko Style Plus」を開始した。同クリニックの伊坂聡子院長は、整形外科の専門領域である運動器を対象とし、その健康維持・向上を目的とした独自のコンセプト「運動器美容」を提唱している。
運動器とは筋肉、骨、関節および関連する神経系を含む組織の総称であり、日常生活を支える要となる部分である。しかし、その重要性に比して、一般的な認知度は低い。伊坂院長は、加齢による運動器の衰えが介護を必要とする主因の一つであることを指摘し、予防的介入の重要性を強調している。
Satoko Style Plusの独自性
Satoko Style Plusの最大の特徴は、医学的根拠に基づいた予防医療を提供する点にある。同サービスでは、国家資格を有する整形外科医や理学療法士が指導するピラティスレッスンをはじめ、運動器美容に特化した生活指導を展開。個々の生活習慣や身体の状態に応じた運動処方、栄養指導、さらにはサプリメントの活用法まで、包括的な支援を行う。
また、同クリニックは地域住民が積極的に参加できるよう、定期的な講座やイベントを開催し、「運動器美容」という概念の普及にも力を入れている。このように、治療から予防まで一貫したアプローチを提供する取り組みは、同業他社との差別化につながっている。
健康寿命延伸を支える哲学
伊坂院長は、自身の臨床経験を通じて、患者の健康寿命の延伸が地域医療の大きな目標であると確信している。日本では健康寿命と平均寿命の間に大きな乖離がある中で、「運動器美容」がこの課題を解決する鍵になると考えた。
令和4年の健康寿命の平均は、男性が72.57年、女性が75.45年である。一方、同年の平均寿命は、男性が81.09年、女性が87.14年であり、健康寿命と平均寿命の差は男性で約8.52年、女性で約11.69年となっている。この差は、2010年以降徐々に縮小傾向にあるものの、依然として課題が残る。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されない期間を指し、平均寿命との差を埋めることは、国民の生活の質の維持や社会保障制度の持続可能性にとって重要な課題である。
さらに、同クリニックの活動は地域コミュニティとの深い結びつきを重視している。地域住民の健康意識を高め、彼らが能動的に自分自身の健康管理に取り組むきっかけを提供することが目的である。その哲学は、単なる医療サービス提供を超え、地域全体の健康文化を築く試みにほかならない。
この会社から学べる事
さとこ整形外科の取り組みは、予防医療が個人の健康と地域社会の持続可能性に与える影響を再認識させる。病気を未然に防ぐためには、医療機関と地域住民の密接な連携が不可欠である。同クリニックの「運動器美容」という明確なコンセプトと多角的なアプローチは、他地域でも応用可能なモデルケースといえる。
さらに、専門的知見に基づく情報発信や、住民との双方向的なコミュニケーションの重要性も示している。健康寿命延伸のために必要な知識や行動を広めるには、医療機関側が積極的に教育的役割を担うことが求められる。