フランスの大手紙『ル・フィガロ』とニュース専門局『BFM TV』が、元SMAPのメンバーである中居正広氏に関する問題を詳細に報じた。この報道を受けてと思われるタイミングで、日本国内の民放各局がようやく中居氏への聞き取り調査に乗り出したことも明らかになった。
しかし、問題の核心は、フジテレビが被害を把握していながら1年以上も中居氏の番組出演を継続させたという点にある。
シンガポールでも報道される中居氏の性的トラブル
海外メディアによる中居氏の報道はシンガポールでも行われている。シンガポールの主要メディア『CNA(Channel News Asia)』は、フランスのメディアと同様に「性的不祥事」という言葉をタイトルに用い、今回の件を大々的に報じた。
『CNA』の記事では、SMAPがアジアで広く知られていることもあり、中居氏のスキャンダルについて詳細に経緯を説明している。また、ジャニー喜多川氏の性加害問題や松本人志氏の不祥事についても触れ、これが日本の芸能界全体の構造的問題であることを示唆している。
海外メディアの報道内容
フランスの大手メディア『ル・フィガロ』は、中居正広氏が2023年に女性に対して多額の示談金を支払ったことを報じ、同氏が性的不品行を理由に日本の主要テレビ番組から降板されたと1月9日に伝えた。
記事は、SMAPが長年日本とアジア全域で活躍した人気グループであることを強調し、今回のスキャンダルが日本の芸能界に与える影響についても言及している。
一方、『BFM TV』は、中居氏のトラブルに対する日本の放送局の対応が著しく遅れている点を問題視し、特にフジテレビが状況を把握していながら、出演番組の打ち切りを決断するまでに時間を要したことを批判した。
また、報道の中で、日本のメディアが問題に対して及び腰である現状にも触れ、旧ジャニーズ事務所の性加害問題と同様、海外からの報道によって日本のメディアがようやく動く構図が繰り返されていると指摘した。
フジテレビの対応不備が浮き彫りに
海外メディアの報道内容はまさに日本の視聴者にとっても、納得性の高いものだ。今更ながら、日本の民放各局は中居氏に関する聞き取り調査に乗り出したという。しかし、一番の問題はフジテレビが問題が社内で発覚した段階で、すでに状況を把握していたにもかかわらず、中居氏のレギュラー番組を継続させていたことである。
特に、フジテレビが被害女性に対し、相談を受けながらも適切な支援を行わず、問題の隠蔽を図ったとの指摘もあり、企業としてのガバナンスが問われる事態となっている。内部通報窓口が設置されているにもかかわらず、問題が隠蔽され、被害者支援が不十分であったことは、放送局としての社会的責任を果たしているとは言えない。
外圧でしか動かない日本のメディア界
今回の問題は、旧ジャニーズ事務所の性加害問題の対応と共通点が多い。多くの被害者を生んだモンスター、ジャニー喜多川の長年にわたる性加害問題が最初に明るみに出たのは、イギリスのBBCによる報道がきっかけだった。今回も、国内メディアが自発的に報じることなく、海外メディアの報道を受けてようやく事態が動き出した。
SNS上では、日本のメディアが忖度により報道を抑制していることに対する批判が相次いでいる。
総務省の対応と放送免許取り消しの可能性
フジテレビの対応に対し、一部の視聴者からは、総務省に対して放送免許の取り消しを求める声も上がっている。公共の電波を使用する放送局が、組織としての透明性やガバナンスを欠いている場合、免許取り消しは現実的な選択肢として検討されるべきという意見である。
現段階で免許取り消しというのはいささか過激な意見であるが、こうした意見がでるのも、フジテレビ側がきちんとした形で第三者委員会や外部調査委員会を立ち上げるなど対応しないからである。何より、トップ自ら対外的な説明を早急にすべきである。
総務省がどのような対応を取るかは今後の焦点となるが、少なくとも現状のままでは、フジテレビが視聴者の信頼を取り戻すことは難しいだろう。
第三者委員会の設置はいつに?
フジテレビが抱える問題は、単なるイチ、タレントの不祥事に留まらず、企業としての組織風土やガバナンスの欠如に根差している。日本のメディアが海外からの圧力でようやく動くという構図は、今後も繰り返される可能性が高い。
放送局としての信頼を回復するためには、迅速かつ徹底的な対応が不可欠である。ただ、自浄作用がきく内部統制は期待できない。何より、中居氏の問題を把握しながら番組に起用し続けた事実など社会通念上理解しがたい行為の数々に対しては、第三者委員会の設置で解明するしか道はないのではないか。