手帳製造・OEMを手掛ける伊藤手帳株式会社(愛知・名古屋市)のテーマ「デジタル化時代に必要な手帳」で実施された、学生向けビジネスプランコンテスト「Sカレ(Student Innovation College)2024冬カン」にて、神戸大学吉田ゼミ華麗集チーム(黒田康介、森若菜、石原理暉の3名)が考案した「学び直しの資格手帳」が優勝した。
12月14日に福岡大学で開催された同カンファレンスで、伊藤手帳と同志社大学石田大典先生による審査を経て選出された。
手帳でリスキリングを支援
受賞した「学び直しの資格手帳」は、資格取得やリスキリング(学び直し)のニーズの高まりを受け、学習計画の管理やモチベーション維持をサポートする手帳だ。近年、資格勉強に手帳を活用するユーザーの声が多く寄せられていたという伊藤手帳は、華麗集チームの提案の明確な課題設定、ターゲット層の分析、そしてユーザー目線に立った具体的な工夫を高く評価した。
デジタル化が進む現代においても、紙の手帳ならではの利点を活かし、学び直しを支援するツールとして、多くの学習者に価値を提供できる点が選出理由となった。
神戸大学学生チームの喜びの声
受賞した華麗集チームは、「約8ヶ月間、デジタル化が進む現代の時代背景や顧客のニーズに向き合い、新たな価値の創出に向けて奮闘してきた。今回3人の力を合わせて生み出したプランが評価され、商品化できることが非常に感慨深く、嬉しい。」と喜びを語った。彼らは、特に子育てなどで勉強から離れていた主婦・主夫層や、効率的な学習計画を立てたい人など、スキルアップを目指す人々にこの手帳を使ってほしいと考えている。
伊藤手帳と商品化へ
今後、伊藤手帳と華麗集チームは商品化に向けた協議を進める。販売は伊藤手帳のECサイト「ユメキロック」に加え、学生が提案する販路も検討する予定だ。
伊藤手帳:手帳づくりの老舗
昭和12年創業の伊藤手帳は、80年以上にわたり手帳製造に特化してきた老舗企業だ。愛知県小牧市にある2つの工場で年間1000万冊もの手帳を製造し、多様なニーズに応えている。2021年からは産学連携プログラムにも取り組み、愛知大学、一宮商業高校、聖徳学園中学校と共同で手帳開発・販売を行い、手帳需要の裾野を広げる活動にも力を入れている。
代表メッセージ:お客様の“相棒”となる手帳
代表取締役の伊藤亮仁氏は、コーポレートサイトの代表挨拶で「良い手帳は、お客様の充実した生活と仕事の成果につながる最高の“相棒”です。私たちは、時代のニーズとお客様のご要望に真摯に向き合い、お応えすることによって、お客様の“相棒”となることを目指しています。」と語り、手帳への強いこだわりを示す。
同社の社是「ものは人がつくる」には、どんなに機械化が進んでも、人の情熱がなければ良い製品は作れないという信念が込められている模様だ。
SDGsへの取り組み
伊藤手帳はSDGsの達成にも積極的に取り組んでいる。地域社会への貢献として、次世代人材育成のための産学連携プログラムを実施。環境対策としては、利用開始月を自由に選べる「コウシ手帳」の開発・販売や、手帳カバーに余剰ビニールを再利用するなど、資源の有効活用や環境負荷低減に努めている。
さらに、多様な人材が活躍できる職場環境づくりにも注力し、ディーセント・ワークを推進していることが明記されている。
SDGsなどのサステナビリティ開示を実践する中小企業は多いが、取り組みの宣言に留まる企業が多い。伊藤手帳にも今後は、各取り組みを定点観測し、取り組みの現況の定量化を期待したいところだ。
各取り組みSカレとは?
Sカレ(Student Innovation College)は、2006年に発足した大学生向けのビジネスプランコンテスト。学生たちは実際の商品化を目指し、市場調査、商品企画、マーケティング戦略などを実践的に学ぶ。他大学のチームと競い合いながら、商品開発のプロセスを体験できる貴重な場となっている。Sカレ2023には32大学38ゼミ552名の3年生が参加した。