長年勤めた会社員への功労金である退職金。その課税見直しの議論が政府・与党で再燃している。
働き方の多様化や少子高齢化を背景に、現役世代への減税も視野に入れられている。
「サラリーマン増税」との批判もある中、私たちの老後資金はどうなるのだろうか。
なぜ今、見直しが必要なのか
政府・与党は15日、退職金課税の見直し議論を再始動した。
勤続20年を境に控除額が変わる現行制度は30年以上変わっておらず、働き方の変化に合わなくなっていることが背景にある。転職の増加や企業の給与重視の傾向も指摘され、税制を時代に合わせる必要性が叫ばれているのだ。
現役世代の減税は実現するのか
今回の見直しでは、現役世代の減税幅が拡大する可能性もある。少子高齢化による現役世代の負担増を軽減するため、退職金課税を見直すことで財源を確保する狙いがあるとみられる。
退職金課税の見直しについては、SNS上で様々な意見が出ている。
懐疑的な意見の一方、以下のような意見もSNS上では見受けられた。
終身雇用崩壊で退職金制度はどうなる?
識者の意見の中には、終身雇用崩壊に伴い退職金制度も見直すべきだという意見もある。年功序列や終身雇用は人口減少社会では成り立たず、企業は戦略的に縮小しながら成長分野にシフトしていく必要があると指摘されている。人事制度の見直しやスキルアップの重要性も強調されているのだ。
長年勤めた会社員への功労金
退職金は、長年にわたり会社に貢献してきた従業員に対する功労金としての側面を持つ。特に、バブル崩壊後の経済停滞期に、給与の大幅な上昇が見込めなかった世代にとっては、将来の生活設計を支える重要な資金である。「我慢して働いてきたのは退職金のため」という意見も、こうした背景を理解すれば納得できるものだ。勤続年数に応じて退職金が増える仕組みは、長期雇用を前提とした日本型雇用の象徴でもあった。
グローバル基準との比較
日本の退職金制度は、諸外国と比較すると独特の制度である。
欧米では、退職後の生活保障は公的年金や個人年金が中心であり、企業が退職金を支給することは一般的ではない。終身雇用を前提とした日本型雇用との違いが、退職金制度にも反映されていると言えるだろう。
賃金上昇への期待と不安
退職金課税の見直しによって、企業が退職金に充てる資金を賃金に回すようになれば、現役世代の賃金上昇につながる可能性がある。しかし、その一方で、将来受け取れる退職金が減額されることへの不安も拭えない。特に、若年層にとっては、将来の生活設計が不透明になることへの懸念が大きいだろう。
また、転職やフリーランスなど、多様な働き方が広がりつつある現在、従来の終身雇用を前提とした退職金制度は、こうした新しい働き方に対応しきれていない面もある。転職者やフリーランスでも公平に老後資金を確保できるような制度設計が求められているのだ。
丁寧な議論と情報公開を
退職金課税の見直しは、国民生活に大きな影響を与える重要なテーマである。「サラリーマン増税」との批判を避けるためにも、政府・与党は、国民への丁寧な説明を尽くし、透明性の高い議論を進める必要がある。また、税制改正によるメリットとデメリットを明確に示し、国民の理解と納得を得ることが不可欠である。