11月11日は「ポッキー&プリッツの日」。毎年この日に合わせて行われる様々なキャンペーンは、消費者の購買意欲を刺激し、大きな経済効果を生み出している。
本稿では、この「ポッキー&プリッツの日」を軸に、江崎グリコのマーケティング戦略、ロングセラー商品開発の秘訣、そしてサステナブルな取り組みなど、今後の展望について考える。
ポッキーとプリッツ:ロングセラーの理由
ポッキーとプリッツは、共に半世紀以上愛され続けるロングセラー商品だ。その背景には、綿密な市場調査に基づいた商品開発と、時代を捉えた巧みなマーケティング戦略が存在する。
開発秘話:プリッツの成功がポッキーを生んだ
プリッツは1963年に発売された。当初はスナック菓子として販売されていたが、後に子供向けのおやつとして甘い味付けに転換し、大ヒット商品となった。このプリッツの成功が、後のポッキー誕生のきっかけとなった。当時、板チョコ市場で苦戦していた江崎グリコは、プリッツにチョコレートをコーティングするという斬新なアイデアを考案。
1966年、「世界初の棒状チョコレート菓子」としてポッキーが誕生した。
マーケティング戦略:時代を捉えた販売戦略
ポッキーの成功は、商品力だけでなく、時代を捉えたマーケティング戦略にも支えられている。1970年代には、大人の空間でウイスキーと共に楽しむ「ポッキー・オン・ザ・ロック」や、旅行ブームに合わせた「旅にポッキー!」といったライフスタイル提案型の訴求を行い、消費者の心をつかんだ。
近年では、「Share happiness!」というスローガンを掲げ、家族や友人と分かち合う喜びを訴求することで、更なるブランド力の向上を図っている。
グローバル戦略:世界展開の成功要因
ポッキーは現在、世界30カ国以上で販売されているグローバルブランドだ。海外展開においても、それぞれの国の文化や嗜好に合わせた商品開発やマーケティング戦略を展開することで、世界的な人気を獲得している。
ポッキーの日はいつから始まった?
ポッキー&プリッツの日が11月11日と定められたのは、1999年。江崎グリコが一般社団法人日本記念日協会に申請をして、認定されてから20年以上を経た現在、11月11日は消費者に広く知られる日となり、SNSなどでも盛んに投稿がされるようになっている。
ギネス世界記録とポッキーのブランド力
ポッキーは、2020年、2021年に「チョコレートコーティングされたビスケットブランドの世界売上No.1」としてギネス世界記録に認定された。
これは、江崎グリコの巧みなマーケティング戦略と、世界的なブランド力の高さを証明するものである。売上向上に大きく貢献したとされる、チョコレートマーケティング部部長(当時)小林正典氏の著書「結果を出すのに必要なまわりを巻き込む技術」には、停滞していたポッキーの売上を5年間で50億円も伸ばした秘話が記されているという。
ギネス記録の達成は、ポッキーが世界中で愛されている商品の証と言えるだろう。
今後の展望:持続的な成長のための戦略
50年以上もの間、愛され続けているポッキーとプリッツ。しかし、市場の変化は激しく、消費者の嗜好も多様化している。江崎グリコは、更なる成長に向けて、どのような戦略を描いているのだろうか。
具体的な内容は明らかになっていないものの、国内外における更なるブランド認知度の向上、新商品開発、新たなマーケティング戦略などが予想される。5年後、10年後も、ポッキーが市場を牽引する存在であり続けるために、更なるイノベーションが期待される。
ロングセラー商品から学ぶビジネス戦略
ポッキーとプリッツの成功は、優れた商品力だけでなく、時代を捉えたマーケティング戦略、そして柔軟な変化への対応力によって支えられている。これらの要素は、他の企業にとっても、ロングセラー商品を生み出すための重要なヒントとなるだろう。「ポッキー&プリッツの日」は、単なるイベントではなく、江崎グリコのビジネス戦略の成功を象徴する日と言えるだろう。
江崎グリコのサステナブルな取り組み
そんな同社だが、サステナブルな取り組みでは何をしているのだろうか。
10月23日のPRTIMESの開示によると、江崎グリコは、株式会社ジェイエアと共同で、赤ちゃん連れでも安心して移動できる「ユニバーサルツーリズム」の実現を目指す「スマイルフライトプロジェクト」を開始する模様だ。
スマイルフライトプロジェクトとは?
このプロジェクトでは、機内で乳児用ミルク「アイクレオ 赤ちゃんミルク」を提供し、赤ちゃん連れの旅行者を支援することを目的としている。同社が、7月12日~16日に600人に対して実施した「赤ちゃんと飛行機に関する意識調査」というインターネット調査の結果によれば、子育て世代の約7割が赤ちゃんとの飛行機旅行に不安を感じており、全世代の約9割が応援の意向を示している。
旅行のバリアフリー化が求められる現状を受け、江崎グリコとJ-AIRは、誰もが安心して移動できる環境の実現を目指すと表明している。
「アイクレオ 赤ちゃんミルク」は常温で使用でき、シートベルト着用サイン中にも簡単に授乳が可能とのこと。さらに、1歳以上3歳未満の子どもには「こどもスムージー」を提供する場合もある。
また、江崎グリコの専門資格を持つ社員がJ-AIRの客室部門教育に協力し、赤ちゃん連れの乗客が安心して利用できる環境づくりを支援する。両社は機内外での発信を通じて、赤ちゃん連れが移動しやすい雰囲気の醸成も目指している。
ポッキー&プリッツの日に、江崎グリコのサステナブルな取り組みを知ることで、ポッキーやプリッツがより一層美味しく感じることができるかもしれない。