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Luup、元警察官僚を監査役に 「天下り」の声も、成長戦略への布石か?

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樋口 建史
樋口 建史さん(PR TIMESより)

電動キックボードや電動アシスト自転車のシェアリングサービス「LUUP(ループ)」を展開する株式会社Luupは、この10月、経営体制の強化を発表した。社外取締役や監査役に、錚々たる顔ぶれが名を連ねたことが話題を呼んでいる。中でも、元警察庁長官の樋口建史氏が監査役に就任したことが、SNSを中心に注目を集めている。

元警察官僚の監査役就任に「天下り」の声も

X(旧Twitter)上では、今回のLuupの発表に対して、「天下り」と揶揄する声も上がっている。スタートアップ企業が、政治家や官僚経験者を役員に迎えることは、しばしば「癒着」や「既得権益の温存」といったネガティブなイメージで語られがちだ。

しかし、Luupのように事業を急拡大させているスタートアップにとって、豊富な経験と人脈を持つ人材の登用は、決して珍しい話ではない。むしろ、企業が成長するために必要な戦略的投資の一つと言えるだろう。

シェアリングポート数国内最多、Luupの成長戦略

Luupは、電動キックボードと電動アシスト自転車のシェアリングサービスを通じて、「街じゅうを『駅前化』する」というビジョンを掲げている。現在、東京、大阪、横浜、京都など、全国主要都市でサービスを展開し、そのポート数は、国内のシェアサイクル業界で最多を誇る。

Luupが目指すのは、単なる移動手段の提供にとどまらない。街中のあらゆる場所にポートを設置することで、駅から少し離れた場所でも、気軽に移動できる環境を整備し、人々の行動範囲を拡大しようとしているようだ。

安全対策強化の鍵となるか?元警察官僚の知見

Luupのサービス拡大に伴い、その安全対策も喫緊の課題となっている。電動キックボードの違法走行や事故のリスク、歩行者とのトラブルなどは、社会問題としてもクローズアップされつつある。

こうした状況下で、元警察官僚である樋口氏の監査役就任は、Luupにとってどういった意味を持つのだろうか。樋口氏は、警察庁長官として、交通安全対策や法令遵守の徹底に取り組んできた経験を持つようだ。Luupは、樋口氏の知見を活かすことで、安全対策を強化し、社会からの信頼獲得につなげたい考えのように思える。

新しいサービスと法規制の狭間で

Luupの事例は、イノベーションと法規制のバランスという、現代社会における重要なテーマを浮き彫りにしている。

Xでは、「この国で新しいことをするには、偉い人に天下りポジションを用意して政府にコネを作ることが最優先」という、シニカルな意見も見受けられた。確かに、新しいサービスを社会実装するには、既存の法規制との調整や、政府関係者との協力が不可欠となるケースは少なくない。

しかし、こうした動きは、日本に限った話ではない。海外では「ロビー活動」として、企業が積極的に政治や行政に関与し、自社の主張を訴えることが一般的だ。

むしろ、ロビー活動が全く行われていない国の方が少ないと言えるだろう。Luupのように、新しい技術やサービスが既存の枠組みに当てはまらない場合、法規制との調整は避けて通れない道であり、そのプロセスにおいて、行政との適切なコミュニケーションは必要不可欠と言えるだろう。

Luupのような新しいモビリティサービスが、社会に広く受け入れられるためには、従来の枠組みを超えた柔軟な対応が必要となるだろう。

成長過程における「天下り」の是非

Luupの事例は、スタートアップ企業が成長する過程で、経験豊富な人材を活用することの重要性を改めて示している。同時に、法規制とのバランスをどのように取っていくのか、という課題も突きつけている。

元警察官僚の監査役就任が、「天下り」という批判を浴びる一方で、Luupの安全対策強化、そして社会への浸透に繋がるのか、今後の展開に注目が集まっている。

一方で、このような革新的なサービスが導入される度に、ネガティブな意見が先行し、必要以上の議論が巻き起こる日本社会の現状を、経済成長が停滞した30年の証拠と見る意見もある。新しい技術やサービスを柔軟に受け入れ、その可能性を最大限に引き出すことこそが、未来の日本を切り開く鍵となるのではないだろうか。

最後に、記事を書いている私自身の立場は、Luupの愛用者である。サービスを利用している一人として、駅から目的地まで、「ちょっと歩くには遠い」距離を、手軽に移動できるという点は、他の移動手段の代替となりうる可能性を実感している(最近は、渋谷などの繁華街で終電を越えた時間となると、もはや借りれる機体がなく、あったとしてもそれは充電が不足している機体などであり、活用したいときに活用できないもどかしさは感じるので、あまり利用しなくなってしまったが……)。

イチ愛用者の意見なので、この記事は公平な見方ではないかもしれないが、ネットの悪評ばかりが目立つなかで愛用者もいることは声をあげておきたい。何より、革新的なスタートアップが社会的に受け入れられる環境が醸成されてほしいと切に願っている。

Luupの役員陣
PRTIMESより
岡井 大輝(Daiki Okai)代表取締役CEO / 共同創業者マイクロモビリティ推進協議会 会長
牧田 涼太郎(Ryotaro Makita)取締役COO / 共同創業者元マッキンゼー
向山 哲史(Satoshi Mukoyama)取締役CFO元三菱商事、ユニゾン・キャピタル
大西 賢(Masaru Onishi)社外取締役元日本航空 代表取締役社長
杉田 浩章(Hiroaki Sugita)社外取締役ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー、
早稲田ビジネススクール 教授
川崎 裕一(Yuichi Kawasaki)社外取締役元スマートニュース シニア・バイス・プレジデント/執行役員
中路 隼輔(Shusuke Nakaji)社外取締役ANRI シニアプリンシパル
橋本 佳奈依(Kanae Hashimoto)常勤監査役公認会計士、元有限責任監査法人トーマツ
樋口 建史(Tateshi Higuchi)監査役元警視総監
國峯 孝祐(Kosuke Kunimine)監査役弁護士、元経済産業省
Luupの取締役・監査役陣

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。社会的養護の自立を応援するヒーロー『くつべらマン』の2代目。 連載: 日経MJ『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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