「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、2023年3月期から有価証券報告書における「サステナビリティに関する考え方及び取組」が記載項目として追加されてから、企業各社にはサステナビリティ関連の記載が求められるようになった。
上場企業あるいは上場企業と取引のある企業にとって、サステナビリティ対応・開示は待ったなしの状況となっている。
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を考慮したESG経営は、企業価値を高めるための必須条件として、ますますその重要性を増している。
しかし、ESG経営を推進し、社会から求められる企業へと成長していくためには、従来の枠にとらわれない、より戦略的な視点が求められる。
フューチャー株式会社では、グループ会社である株式会社ワイ・ディ・シー(以下、YDC)が中心となり、企業のESG経営を支援する全く新しいサービス「ESG経営共創サービス」の提供を開始した。
本サービスは、企業がESG経営を通じて、社会課題の解決に貢献しながら、競争優位性を築き、持続的な成長を実現するためのものだ。
企業の競争力を高める「スコープバリュー」とは?
ESG経営共創サービスの最大の特徴は、フューチャーグループが提唱する「スコープバリュー」という新しい概念を取り入れている点にある。
ESG経営においては、自社の事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量を「スコープ1,2,3」で可視化することが一般的だ。
- スコープ1: 事業活動における直接排出(燃料の燃焼、工業プロセスなど)
- スコープ2: 他社から購入した電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
- スコープ3: サプライチェーン全体における排出(スコープ1,2を除く)
フューチャーはさらに「スコープ4」、すなわち企業が社会に与えるプラスの影響、削減貢献量の可視化に着目している。
例えば再生可能エネルギーの導入や省エネ製品の販売によって、社会全体のGHG排出量削減に貢献している場合、その貢献量を「スコープ4」として捉える。
そして、この削減貢献量を企業価値へと転換していくことを「スコープバリュー(スコープV)」と定義し、企業の競争力強化に繋げようとしているのだ。
コンソーシアムで描く、日本のESGをアップデートする未来
フューチャーは、ESG経営共創サービスの基盤となる知識やノウハウを構築するため、早稲田大学ガバナンス&サステナビリティ研究所と共同で、企業コンソーシアム「SFL(Sustainable Future Leadership)コンソーシアム」を設立した。
2023年11月にスタートしたこのコンソーシアムには、ENEOSやサントリーホールディングス、住友化学などすでに6社が参加。業種を超えた企業が連携し、日本のESG経営の課題や将来展望について議論を重ねている。
「ESGやサステナビリティの議論が進む中で、どうしても海外主導のルールや評価軸に翻弄され、日本企業が不利な立場に置かれているという現状があります。
私たちは、このコンソーシアムを通じて、日本発のルールメイキングや価値創造の仕組みを創出し、世界に発信していきたいと考えています」と、フューチャーグループでESG経営共創ビジネスを牽引する株式会社ワイ・ディ・シーの大江さんは語る。
このコンソーシアムでは、企業向け勉強会やルールメイキングに向けた意見交換などを行っている。特徴的な取り組みの一つとして、次世代を担う高校生へのESG教育プログラムがある。
福岡県立八女高等学校と連携し、企業の抱える具体的なESG経営の事例を題材とした授業を展開。生徒たちは、企業の担当者から話を聞いたり、グループワークを通じて、自らの意見やアイデアを提案したりすることで、ESG経営に対する理解を深めている。
業界の常識を変える? 自動車のCO2ラベリングで描く未来
ESG経営共創サービスでは、コンソーシアムで得られた知見や、フューチャーグループが各業界で培ってきた豊富な知見・ノウハウを活かし、企業の課題やニーズに合わせた最適なソリューションを提供する。
その一例が、自動車部品業界におけるCO2ラベリングだ。
自動車業界では、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減が急務となっており、部品メーカーに対しても、製品の製造段階におけるGHG排出量を可視化するよう求められている。
YDCは、ある自動車部品メーカーと共同で、製品にGHG排出量を表示するCO2ラベリング(カーボンフットプリント:CFPと同種)の仕組みを構築。
将来的には、この取り組みを業界全体に広げ、デファクトスタンダードを目指していくという。
「食品のカロリー表示のように、将来的には、自動車部品にもGHG排出量が当たり前に表示される時代が来るかもしれません。GHG排出量の少ない製品を開発・製造することは、企業のブランド価値向上、ひいては売上増加にも繋がるはずです」と大江さんは言う。
フューチャーグループだからできる、伴走型支援で描くESG経営
フューチャーグループは、多種多様なお客様にITコンサルティングサービスを提供してきたフューチャーアーキテクトや、製造業とそのバリューチェーンの変革を推進してきたYDCをはじめ業界に特化したコンサルティングを行っており、各業界の商習慣に精通している。
その知見を活かし、経営戦略からシステム開発・導入、運用までを一貫して支援できることが強みだ。
ESG経営共創サービスにおいても、単にGHG排出量の算出や可視化を行うだけでなく、そのデータを活用して、企業の競争力強化や新規ビジネス創出に繋がるような提案を行っている。
具体的には、スコープVとして、自動車部品業界ではCO2ラベリング、鉄鋼・化学業界では自動エネバランス、金融ではグリーンインパクト投資などへの展開を想定している。
「お客様の課題やニーズを深く理解し、最適なシステムやサービスを組み合わせながら、伴走型で支援していくことが、私たちの強みです。特に、業界に特化したGHG排出量算出サービスを提供することで、サプライヤーの皆様における、メーカーからのCSR調達アンケート対応などの工数削減にも貢献していきたいと考えています。
また、算出したGHG排出量をもとに、グループの強みを活かし、実際に削減効果のある施策や取り組みなどを提供できることも、他社サービスと比較した際の大きな違いです」と大江さんは強調する。
「コストセンター」から「価値創造の場」へ ESG経営の意識変革を促す
ESG経営は、短期的な視点で取り組むものではなく、長期的な視点で、企業の成長戦略と一体的に推進していくことが重要だ。
フューチャーグループは、ESG経営共創サービスを通じて、企業がESG経営を「コストセンター」と捉えるのではなく、「価値創造の場」として捉え直し、持続的な成長を実現していくための支援を行っていく。
「ESG経営は、決してコストではありません。企業の競争力を高め、新たな価値を生み出すための、大きなチャンスなのです」と大江さんは力を込める。
フューチャーグループは、今後もESG経営に取り組む企業を支援し、持続可能な社会の実現に貢献していく。