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脱炭素DX研究所所長 我有 才怜さん |ひと足さきに、ほしい未来へ – 八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談

コラム&ニュース コラム
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はじめまして。八木橋パチです。普段は日本アイ・ビー・エムという会社でコラボレーション・エナジャイザーとして働いたり、WORK MILLというオンラインメディアに #混ぜなきゃ危険 をテーマに体験談を書いたりしています。

このたび、縁あってcokiで連載をスタートさせていただくことになりました。「どんなことを書いたら、みんなに喜んで貰えるだろう? 自分が意義を強く感じられるだろう?」としばらく考えたのですが、やっぱり自分の得意なことは「その人その人が持つ特有のステキさに光をあてること。そのステキさを、社会にも届けることじゃないだろうか」と思いました。

そんなわけで、これから「ソーシャルグッドな活動をしている誰か」を訪ねて、その人との雑談を通じてその活動内容や思いなどをご紹介していくこととしました。
題して「八木橋パチの #ソーシャルグッド雑談」。

第1回目は、株式会社メンバーズがこの4月に新たに創設した「脱炭素DX研究所」の所長となられた我有 才怜(がう さいれい)さんにご登場いただきました。

パチ

脱炭素DX研究所の所長就任おめでとうございます。今日は脱炭素DX研究所のことや所長就任について、「我有さんの想い」みたいなことを聞こうと思っているんだけど、その前にまず、なんでおれが我有さんに話を聞こうと思ったのかを説明させて。

今回、記念すべきcokiでの連載第1回だからさ、やっぱりおれが今一番気になっている人の話をじっくり聞いてみたいと思って。そう考えたときに、一番最初に頭に浮かんだのが我有さんだったんだよね。

今日は、我有さんが日々どんな想いを持って過ごしているのかとか、具体的に何をどう変えていきたいと考えているのかとか、普段の生活ではあまり口にすることがないであろう、そういう大きなことを聞いてみたくて。

我有

改めてこうやって話をすること、少し緊張しますけど私にとっても自身のリフレクションになるのでありがたいです。相手がパチさんなのも嬉しいです。そして先日の京都の結婚式にも参列してもらって、とても嬉しかったです。手紙に書きましたけど、こんなふうに信頼してなんでも話せる年上の先輩がいるって、私にとっては本当に大きな意味があることなんです。

resizedPachiGau33LF ソーシャルグッド雑談
数年前のトークイベントでの一枚。デンマーク視察旅行から帰ってきて「しあわせに働く方法」についての考察を発表中。

左: 我有 才怜(がう さいれい)

2017年にメンバーズ新卒入社。社会課題解決型マーケティングを推進するほか、幸福度ランキング上位国デンマークのデザインコンサル会社Bespokeとともに「Futures Design」というメソッドの日本展開に従事。また、社内のクリエイターとともにサステナブルWebデザインLab.を運営。気候変動への危機感や市民運動への興味から国際環境NGOでも活動中。2023年4月1日、メンバーズ社内に開設された「脱炭素DX研究所」の初代所長に就任。IDEAS FOR GOODと共にWebメディア「Climate Creative」も運営中。

右: 八木橋 パチ(やぎはし ぱち)

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャー、およびソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちと社内外でさまざまなコラボ活動を実践し、記者として取材、発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。 合い言葉は #混ぜなきゃ危険 #民主主義は雑談から #幸福中心設計
パチ

まず簡単に自己紹介してもらっていい? 記事に表示されている経歴以外の部分で。

我有

パチさんとは社会人2年目からの付き合いなので、改めて自己紹介するとなると、何を話していいやら…。

パチ

そうだよね。じゃあ、これまでの歩みやパーソナルな話は、雑談の中でおいおい語ってもらうとして、いきなりだけど今日の核心的な部分の話をしようか。まず、脱炭素DX研究所とはなんなのか。そして我有さんはそこで何を行なって、何を実現したいと思っているの?

メンバーズという会社の思惑と、我有さんの思惑と重なっている部分とそうじゃない部分がきっとあるでしょう? 両方の視点で聞いてみたいな。

参考: 「脱炭素DXカンパニー」および「脱炭素DX研究所」を設立 〜環境への影響に配慮した商品・サービスの開発・運用・マーケティングを支援〜
参考: 脱炭素DXレポート

我有

いきなり難しいですね。でも、とても重要な話だと思うので、まず「脱炭素DX研究所」がなんなのかからお話しさせてください。

まず、私が所属しているメンバーズは、2030年までのCO2排出量46%削減をビジネスの観点から支援しています。そこで4月に「脱炭素DXカンパニー」という社内カンパニーと、その横並びのような形で「脱炭素DX研究所」が開設されました。

「脱炭素DXカンパニー」は、具体的には大きく3つの事業を中心にしていて、「脱炭素DX人材の育成および提供」「脱炭素DXマーケティング支援」「LCA算定支援と、LCAを基にしたサービスやプロダクトデザイン支援」となります。

パチ

最初の2つは、ここ数年メンバーズが取り組んできた従来のビジネスの延長線上だよね。
それをさらに強化するのと同時に、LCAが加わると。ところでLCAってなんだっけ?

我有

「ライフ・サイクル・アセスメント」ですね。
製品やサービス、システムなどの原料調達から製造、流通、使用・維持、そして廃棄・リサイクルに至る全工程を対象に、環境への影響を評価したり、より環境負荷の少ない方法への道を探る手法です。

そして、脱炭素DXカンパニーの事業を後押しできるように、「脱炭素DX研究所」は、脱炭素ビジネスにおけるDXをテーマに、脱炭素に関する調査報告書や事例、スコープ3やLCAに関する情報などを有識者やパートナー企業と協力して発信していきます。

そういう意味では、今日のパチさんとの対談も脱炭素DX研究所の活動の一環になるのかなと捉えています。

パチの心の声

メンバーズの脱炭素DX研究所解説のアナウンスを見たとき、その場で「客員研究員になる!」と即時立候補したおれ。無事認められ、第一号になっています。ただ、気になっていたことが2つありました。
それは「脱炭素DX」という言葉の選び方・使い方と、所長という肩書きと役割です。
おれにとって「脱炭素」という言葉も「DX」という言葉も、両方どこかフワフワしているというか、何を指しているのかがはっきりしないというイメージがあります。そしてどちらも都合よく使われることが多い。その2つがくっついたら、ますますよく分からないというか…。
そもそも、脱炭素もDXも、どちらも本質的には手段であり目的ではないと思うんだけど…いいのかな? 悪く言えば「バズワード2つつなげたよね?」と言われそうな言葉だなぁって思うんだけど。

我有

私も、「脱炭素DX」という言葉の選び方には正直ちょっと抵抗がありました。脱炭素という言葉で私たちが示そうとしているのがなんなのかを、折に触れて発信して対話し、確認することが大事ですよね。

でもその一方で、課題をしっかりと正しく認識してもらって、それに向き合うのには、まずは興味を持ってもらう必要があるし、メンバーズとしてこれまでもこの言葉を推進してきているので、一貫性があることも大事だと理解しています。

resizedMembers_DecarbonizationDX
メンバーズが推進する脱炭素DX|メンバーズ
resizedMembersYoutubeChannel ソーシャルグッド雑談
我有

そして「脱炭素というのが手段であって目的ではない」というのはパチさんの言うとおりだし、私にとっては、脱炭素が意味するのは脱「炭素依存社会」です。炭素自体は自然界に欠かせないもので、自然界で重要な役割を担っています。

それから…、これは少し私としては勇気のいる発言で、「不都合な真実」的な話かなと思うんですが、私は炭素依存から脱却した社会が成立するまでのプロセスで、経済のスローダウンもあっていいと思うし、デ・グロース(脱成長)という考えも必要な時期があるんじゃないかと考えているんです。炭素予算は限られてるから。

研究所は「CO2排出量を抑えながら経済的にも成長させよう」と謳っているので、それとは現在において異なる見解になってしまうんですけどね…。でも、これも可能性の検討・追求をしていきたいです。

参考: デ・グロース(脱成長)とは・意味

パチ

なるほど、たしかに言いづらい話かもね。でも、それをしっかりオープンにすることがとても大切だとおれは思うよ。そういう考え方なのに、それを押し殺して会社の意見だけを伝える人間は信用できないもん。

ましてやそれが所長という役割の人であれば、研究所そのものだったりその在り方も信用できなくなるし、そこから発信される研究や調査データだって眉唾ものになっちゃうからね。

我有

パチさんにそう言ってもらえるとホッとします。

何十年も前から、過剰な炭素排出が地球温暖化という危機を招くということは分かっていたんですよね。
それなのに、今に至るまでそこから抜け出すための意思決定ができない社会構造になってしまっている…。この仕組み・構造からまず脱することが大事だと思うんです。

仕組みからの「脱」なしに、炭素だけ「脱」しようとしても、きっとウェルビーイングにはつながらないだろうと思います。

パチ

いいね!おれもカーボン・ニュートラルは間違いなくとても重要なことだけど、公正な移行とセットで考えるべきだと思うんだよね。おれにとっても、「これ以上多くの『被害者』を社会に生み出さないための取り組み」、違う言い方をすると「自分たちがこれ以上『加害者』で居続けないために」という意味合いが強いかな。

つまり、脱炭素や温暖化対策がしっかり行われた後の世界では、さまざまな格差問題の根源とも言われている「グローバルサウス」の貧困・環境・人権問題も解消する、あるいは解消に近づいているのかな?

参考: グローバルサウスとは・意味

我有

正直、私もそこは想像できていないんですよね。脱炭素DX研究所の取り組みには、そうした観点からの調査もぜひ入れ込みたいですね。

うろ覚えですけど、たしか日本の憲法の第何条だったかには、「生命、自由及び幸福追求の権利」、「健康で文化的な生活を営む権利」、それから「公共の福祉のために自由と権利を利用する責任」がしっかりと謳われていましたよね。私は、脱炭素依存の過程も結果も、こうした理念にしっかりつながっているものであってほしいなって強く思っています。

前にぱちはらダイアログにゲストで呼んでもらったとき、パチさんが「グッド・アンセスター、よき祖先であれ。でも未来の人たちの権利だけじゃなくて、過去に生きた人たちの人権も考えるべきでは?」って話をしましたよね。あの話に私はすごい感銘を受けて。

「今ここ自分」にフォーカスする大切さは分かっていたつもりだったけれど、そこには過去や未来という時間軸も内含されているんだなって思ったんです。

resizedぱちはら63w我有さん ソーシャルグッド雑談
ぱちはら準メンバーでもある我有さんがこの度結婚されました。そこでなんでも民主主義のネタにしてしまうぱちはらでは「民主主義と結婚」をテーマにお祝いを兼ねてダイアログすることに。どうなるやら。ロケ場所はお店のご好意で、新宿ゴールデン街老舗ハングリーハンフリー。

参考: 
日本国憲法第12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

日本国憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

パチの心の声

ここで日本国憲法の話が出てくるとは思っておらず、我有さんと話した後、不勉強なおれは「どれのことだろう?」と調べてみました。おそらく上の12,13,25条のことじゃないかな? 我有さん、違ったら教えて!
ところで、これを呼んでいる皆さんは「所長」って立場になったことありますか? 「長」といえば、おれは小学生の頃に学級委員長を1回やったのと、中学で「なんちゃって柔道部部長」をやったことしか記憶にありません。我有さんは所長、それも研究所の所長ってことで、拝命されるのに抵抗はなかったのかなぁ?
我有

いやー、めっちゃありました。やっぱり会社組織の中で「研究所」を名乗り、その「所長」まで肩書きに付くと、責任の大きさと重さがすごくて…「本当に私でいいのかな?」って自信のなさや迷いが正直ありました。…いや、今もまだなくはないです。でも、「20代女性が所長になる」ということが、既存社会に対する問いかけにもなるのかなとも思ったんです。

それに脱炭素という、いろんな見方や意見、アプローチがあって、「唯一無二の正解」があるわけでもないし、幅も広い研究テーマだからこそ、「分かりやすいキレイなアウトプットを出すことだけが目的じゃない」であったり、「あえてみんなで白黒のつかないところへ踏み出していく」という熟議民主主義的な方法論も取りやすいのかな? とも思えたんです。それも含めて、必要なチャレンジじゃないのかなって。

私もメンバーズで5年6年とまがりなりにもチャレンジを続けてきて、パチさんたちとデンマークに行ってフューチャーズ・デザインという手法の実践方法を学んだり、社会変革を実践してきた方たちに直接会って話を聞いてきたりして、「チャレンジして失敗してまたそれを糧にチャレンジして…」ということが、当たり前にならなきゃいけないし、それを当たり前にしていくのも重要な役割なんじゃないかなって思えたんですよね。

参考: メンバーズ公式YouTube脱炭素DX関連動画

パチ

知ってると思うけど、その考え方と実行力をすごくリスペクトしてます。そして全力でサポートさせてもらいます。これからもよろしくね!

ところで、coki連載の次回は、若くして歴史ある団体のトップとなり「学長」を名乗っている女性にソーシャルグッド雑談をしてもらいに行こうと思ってるんだけど、我有さんも一緒にどう? シブヤ大学2代目学長の、大澤 悠季(おおさわ ゆき)さん。

我有

行きたいです。ご一緒させてください。

パチ

じゃあ決定! ねえ我有さん、今後、おれ一人でいろんな人に会いに行くより、我有さんと行ったほうが楽しそうだし、より実のあるものになるんじゃないかって気がするんだ。次回だけじゃなくて、毎回参加してよ!


というわけで、連載第1回目はおれの大好きな我有さんにご登場いただきました。
そして次回からは、我有さんと一緒に雑談しに行く「3者雑談」になるかも!?

お楽しみに!

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ライター:

バンド活動、海外生活、フリーターを経て36歳で初めて就職。2008年日本IBMに入社し、社内コミュニティー・マネージャー、およびソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。持続可能な未来の実現に取り組む組織や人たちと社内外でさまざまなコラボ活動を実践し、記者として取材、発信している。脱炭素DX研究所 客員研究員。 合い言葉は #混ぜなきゃ危険 #民主主義は雑談から #幸福中心設計

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