三井ホームは、1974年創業の、注文住宅専門のハウスメーカーである。2×4工法を強みとして、長く選ばれ続ける住宅メーカーである三井ホームの塚原様に、現在の業界構造とこれからの展望、そしてその変化に対応していくために必要な人材像を聞いた。
・取材:木原凛太郎、Che Alice、鈴木彪太
・文:木原凛太郎
・取材先:三井ホーム株式会社 人事部 人材開発グループ 塚原知宣様
・業界:住宅
-建設・住宅・不動産業界とはどのような構造になっているのですか?
「家というものはそう何度も建てるものではないため、人口減少下の近年でも着工戸数は簡単に増えるものではありません。家を建てるということはすなわち職人さんのような、様々な面で関わる人の雇用を増やす機会になります。ですから、国としても不景気の時こそハウスメーカーに支援をしてくれる場面は多いです。逆に景気のいい時に家を買うと金利が高く、ローンの返済額が大きくなってしまうのであまりお勧めしませんね(笑)
近年では、小規模工務店が縮小し、大手企業が業績を拡大している業界でもあります。大手企業は海外にも進出しており、三井ホームの海外事業はほとんどが北米に集中しています。なぜハウスメーカーが海外進出できるのかというと、日本の家づくり技術は世界的にも評価されているからです。地震や台風、豪雨など、私たち日本人を取り巻く環境は厳しいですよね。その結果、過酷な環境に耐える家づくりの技術が磨かれ、世界に通用するようになったのです。」
-同業他社との違い、三井ホーム独自の強みは何ですか?
「三井ホームの物件は、同業他社と比べると平均2割くらい高い値段で建築されています。そのため私たちがターゲットする顧客は富裕層の方々が多いです。お客様の拘りに応える良い家を提供することに専念しています。それを踏まえたうえで、三井ホームの物件の強みは3本の柱からなります。一つは耐震性、次にデザイン性、そして快適性です。木造住宅・全館空調という点からこのような強みを実現しています。
それから、三井ホームではメンテナンスやリフォームなども一括で取り扱っている点も強みといえます。これらがなければ物件の価格も安くはなりますが、それでは安心できる住まいづくりはできません。
『快適さ』の面で言うと、木造の強みが出ます。木造の建物内では脳の集中力が上がるなどの科学的な実証がなされています。また、あまり大型ではない3、4階建て以下の建物の場合は、鉄骨の建築物よりも、共振しにくく耐震性が強いため、安心してご利用いただけます。」
-業界全体のこれからの課題はどんなことが考えられますか?
「これからの課題としては、少子高齢社会に対応していくことが挙げられます。高齢者の方の持つ土地の活用は、その一つの解決策になりえます。近年では病院や老人ホーム、保育園といった施設の建設にも力を入れています。そういった「人を預ける場所」はやはり預ける側にとって安心できる空間である必要があります。特に保育園では、その第一歩として快適でデザイン性の高い保育園を作り、『この保育園で働きたい』と思う人を増やすことで雇用を増やし、結果的に受入数が増えることで、保育園不足の問題にも対応できると思っています。」
-海外戦略は、北米以外の地域での展開は考えていますか?
「今後は北米だけでなく、オーストラリアへの進出も考えています。その理由は、三井ホームの売りである2×4(ツーバイフォー)構法の家作りが主流だからです。木造建築には、梁や柱を組み合わせた軸組と呼ばれる作りと、2×4という壁構造の作りがあります。軸組みは風通しが良いという点、2×4は逆に断熱性に優れるという点が特徴です。日本を含む多くのアジア地域では、高温多湿に対応するため軸組み工法が伝統的に行われてきましたが、近年では2×4の作りが増えています。
理由としては、温暖化が進む中、風通しだけでは暑さに対応しきれないことが挙げられます。それならば断熱性のある住居に変えて、全館空調にした方が快適です。他にも花粉対策や大気汚染の対策にも効果的です。このように、住居も時代に合わせて変化を遂げています。」
-最後に、学生に求めることやアドバイスはありますか。
「三井ホームに興味を持っている学生さんには、「人が好き」「モノ作りが好き」という2軸を持っていてほしいと思います。私たちの仕事は、「人」のために「モノ」を作ることだからです。入社してからも税金のこと、土地のこと、家の構造のことなどさまざまなことを学ぶことになりますが、それらを吸収していくだけの向上心があるといいと思います。向上心を持ってたくさん質問してくれる後輩は育てやすいですし、自身の成長も早いと思います。
入社後の職種は営業をやったり人事を担当したりと、働き方はさまざまです。ですから学生時代から、いろんな世界に足を踏み入れ、いろんな話を聞いてみてください。アルバイトやサークルなど、常に人と話せる場所に身を置くことで、幅広いことに興味・関心を持ってほしいと思います。」