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教育格差の解消を目指して。原体験から起業、公教育のアップデートへ挑む東大生遠山さくらさんの軌跡

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遠山さくらさん
遠山さくらさん(撮影:加藤俊、以下同)

東京大学に在籍しながら、株式会社Dot&.ドットアンドの代表を務め、公立小学校の学習支援ボランティアとしても活動する遠山さくらさん。彼女の行動力の源泉は、幼少期の原体験から生まれた「教育格差・経済格差」への強い問題意識だ。大学在学中にはフィリピンの貧困地域で教育支援に飛び込み、帰国後には「社会を変える人材を輩出したい」とキャリア支援事業で起業。会社は2期目で売上3,100万円へと急成長を遂げた。

しかし、彼女は利益を追うことよりも「貧困で苦しむ人をなくしたい」という自らの使命を選び、公教育の現場へと向かった。葛藤を乗り越え、社会課題の解決に挑み続ける彼女の軌跡と、同世代へのメッセージをお届けする。

 

東大での原体験と「絶対的貧困」の現場で見つけたライフミッション

—— 現在は、非常に多岐にわたる活動をされていますね。

遠山さくらさん(以下、遠山): はい。現在は株式会社Dot&.ドットアンドの代表として大学生向けのキャリア支援事業や企業向けの集客支援事業を行いつつ、公立小学校で学生支援員(学習支援ボランティア)として現場に入り、新公益連盟の事務局としても活動しています。

今後は、会社の事業も続けながら、私の原点である「教育活動」や「公立学校教員の負担改善」のほうへ軸足を移し、新たな法人として組織化していきたいと考えています。

—— 教育格差や経済格差に関心を持たれた原体験は、どのようなものだったのでしょうか。

遠山: 教育格差を強く意識したのは東大に入学した時です。私は茨城県の土浦市出身なのですが、親族でも大学進学者が珍しいという環境でした。浪人してなんとか東大に入学したものの、周りの学生たちは高校時代から国際会議を運営したりと、経験や教養の差に圧倒され、コンプレックスを感じました。

また、幼少期、経済的に厳しい中で育ててくれた両親の背中を見てきたことも原体験の一つです。両親も若くして僕らを育ててくれたので、経済的にゆとりがない時期もあり、それが家庭内の緊張感に繋がることも少なくありませんでした。親の愛情はありつつも、やはり環境の厳しさが家庭のあり方にどうしても出てしまう。そんなリアルな状況を経験してきたことが、今の活動の原点にあります。

—— 大学入学後は、その環境を跳ね返すように多様な活動に挑戦されていますね。

遠山: そうですね。浪人生活を経て、とにかく世界を広げたいという思いで動きました。「おてつたび」でのインターンや「ICCサミット」の運営スタッフなど様々な経験をしましたが、中でも大きかったのが、社会課題について学ぶ「川人ゼミ」です。

そこで社会問題の当事者や最前線で戦う方々のお話を聞き、こんなに発展した社会でも放置されている深刻な問題があることに憤りを覚えました。「社会課題の解決を自分のライフミッションにしよう」と決意した原点です。

—— その後、休学してフィリピンへ渡られます。現地での教育支援はいかがでしたか?

遠山さくらさん フィリピンにて
遠山さくらさん フィリピンにて(提供:ドットアンド)

遠山: 色々な活動を経て、やはり自分の原点である「貧困や環境の格差」に正面から取り組みたいと思い、休学してフィリピンのカミギン島で教育支援や雇用創出を行うNPOに参加しました。現地は産業が乏しく、日本とは違う「絶対的貧困」の状況を目の当たりにしました。経済的な厳しさから自分の可能性を信じられずにいる人も多かったのですが、私は現地スタッフの採用・育成を任され、一人ひとりと粘り強く向き合いました。

遠山さくらさん フィリピンにて(提供:ドットアンド)
遠山さくらさん(左手前) 採用試験に合格した際の様子(提供:ドットアンド)

あるスタッフが採用試験に合格した時、心から喜んで「あなたを一生忘れない」と言ってくれたんです。その言葉に私自身が希望をもらいましたし、「どんなに厳しい環境にいても、やればできる」と思ってもらえたことに強い手応えを感じることができました。

 

年商3,100万円の光と影。事業成長の裏で直面した「本当の目的」との葛藤

—— 帰国後、就職ではなく起業を選んだ背景を教えてください。

遠山: 帰国して就活を始めた際、多くの東大生が「とりあえず大手」「とりあえずコンサル」と、正解主義的なキャリア選びをしていることに違和感を抱きました。私は彼らのような層こそが社会課題を解決するリーダーになってほしいと思っていたのに、個人のキャリアの最適化ばかりに向かっている。 そこで、「自分らしいキャリアを歩む学生を増やし、社会を変える人材を輩出したい」と思い、就活を辞めて起業を決意しました。

—— 起業後の業績は、1期目1,100万円、2期目3,100万円と急成長されていますね。

遠山: 当初はキャリア支援に特化したイベントやフィリピンでのスタディツアーの開催などビジョン先行で動いていました。東大で南場智子さんの講演会を共催し約120名を集めるなど、形にはなりましたが、会社としてはほぼ売上が立たず危機に陥りました。そこで、学生ネットワークを活かして「新卒採用マーケティング・集客支援事業」に振り切った結果、数字は伸びていきました。

—— しかし、売上が伸びる一方で大きな葛藤があったと伺いました。

遠山: はい。ある学生起業家向けの合宿プログラムに参加した際、自分の原体験や魂の根源を深く問われました。売上を追う集客支援事業と、「誰もが自分の力で人生を切り拓ける社会を実現したい」という自分の本心とのギャップが大きく、事業の方針が見えない時期が続きました。精神的に追い込まれてしまい、創業メンバーが離れてしまう時期もありました。

 

公教育の現場からインフラを変える。次世代へ繋ぐ挑戦へのエール

—— その苦難を乗り越え、現在は公教育の現場に入られています。今後はどのようなロードマップを描いていますか?

遠山さくらさん

遠山: ソーシャルセクターの方々と関わる中で、やはり私は「教育」というアプローチで社会のインフラから変えていきたいと再確認しました。 地元の公立小学校で学習支援ボランティアを始めて気づいたのは、現場の先生方の負担があまりにも凄まじいということです。子どもたちの環境を良くするには、まず「教員の負担改善」という土台の課題を解決しなければなりません。

今後のロードマップとしては、今年中に新たな団体(法人)を立ち上げ、向こう2年間でしっかりと現場での事例を作ります。そして3年目以降には、そのモデルを他の自治体にも広げていきたいと考えています。 「誰に価値提供したくて、何の課題を解決したいのか」。この軸は絶対にブラさずに、経済的・環境的な制約がある子どもたちや若者でも、自分の力で人生を切り拓いていける状態を作っていきます。

—— 最後に、同世代の若者や読者へ向けてメッセージをお願いします。

遠山: 今、自分が本当にやりたいことが見つかっていなくても焦る必要はありません。逆に、何かを始める前から「これこそが自分のやりたいことだ」と確信を持てることの方が珍しいはずです。まずは暫定解として目の前のことに取り組んでみると、その試行錯誤のプロセスを通して、納得感のある道が見えてくるのだと思います。

また、少し視点を広げて社会を見てみると、解決されるべき様々な問題が転がっています。そこに目を向けて学んでみることで、自分がワクワクすることや思いを持てることに出会えるかもしれません。最初から答えを見つけようとせず、小さな実践から始めてみてください。

【プロフィール】 遠山 さくら(とおやま さくら) 東京大学文学部 社会心理学専修課程 4年。 株式会社Dot&.ドットアンド代表取締役CEO、公立小学校 学生支援員、新公益連盟 事務局。 茨城県土浦市出身。自身の家庭環境から教育・経済格差に強い問題意識を持つ。在学中にフィリピンにて教育支援に従事。帰国後、同世代のキャリア選択のあり方に疑問を抱き、「自分らしいキャリアを歩む若者を増やしたい」と株式会社Dot&.ドットアンドを起業。現在は自身の原点に立ち返り、公立小学校における教員の負担改善や子どもたちの環境作りに奔走している。

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ライター:

株式会社Sacco 代表取締役。一般社団法人100年経営研究機構参与。一般社団法人SHOEHORN理事。株式会社東洋経済新報社ビジネスプロモーション局兼務。週刊誌・月刊誌のライターを経て2015年Saccoを起業。 連載:日経MJ・日本経済新聞電子版『老舗リブランディング』、週刊エコノミスト 『SDGs最前線』、日本経済新聞電子版『長寿企業の研究』

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