
産業資材の端材を再利用する岡山発のアップサイクルブランド「EBIST」が、世界を目指すスピードスケートチーム「teamGOLD」とコラボレーションを実現した。この異色のタッグの裏には、「挑戦し続けるアスリートを、ものづくりを通じて応援したい」というEBISTの強い哲学があり、社会貢献とマーケティング効果を両立する新たなサステナビリティ経営のモデルとして注目される。
スポーツ支援とアップサイクルを両立 teamGOLD応援トートの市場性
恵比寿有限会社(岡山県赤磐市)が展開するアップサイクルバッグブランド「EBIST(エビスト)」は、国際的に活動するスピードスケートチーム「teamGOLD(チームゴールド)」とのコラボレーションによる特別仕様のトートバッグを、12月15日よりオンラインストアにて販売開始した。
このコラボトートは、耐水性・耐久性に優れた産業用資材の端材(ポリプロピレン)をアップサイクルして製作。世界トップレベルのアスリートが集うteamGOLDの「強さ」と「しなやかさ」を日常使いのプロダクトで表現し、消費者が日常的にサステナブルな形でチームを応援できる接点を提供した。価格は4,000円(税込)で、完全受注生産となる。
なぜEBISTはteamGOLDを選んだか? 成功のカギは兼任スタッフの存在
今回のコラボレーションの独自性は、単なるスポンサーシップではなく、ブランドとチームの内側からの共鳴にある。
通常、企業とスポーツチームの協業は外部からのアプローチが多いが、このプロジェクトはEBISTとteamGOLDの双方に関わるスタッフの存在が架け橋となった。このスタッフは、teamGOLDでは通訳やマネジメントを、EBISTではブランド運営を担う。
この特殊な「兼任」スタッフが両組織の理念を深く理解し、「挑戦し続けるアスリートを、ものづくりを通じて応援したい」というEBISTの核となる想いを具現化する企画へと昇華させた。これは、既存の「縁」を最大限に活用し、コスト効率が高く、かつストーリー性の強いコラボレーションを実現した事例として、ビジネスにおけるネットワーク戦略の重要性を示唆している。
タフネスをアスリートの意志に翻訳するブランド戦略
EBISTは、「過酷な環境で使われる素材に、日常の使いやすさを。」をブランドメッセージとし、1トンの荷重に耐えるフレコンバッグの縫製技術から生まれたタフなプロダクトを特徴としている。
この物理的な「タフネス」の哲学が、世界的なプレッシャーの中で表彰台を目指し続けるteamGOLDの「挑戦」の姿勢と強く共振した。
EBISTが扱う産業資材の「耐久性」は、アスリートが極限の訓練に耐え、プレッシャーを乗り越える「精神的なタフさ」と概念的に重なる。この「素材の物語」を「アスリートの物語」に重ねる戦略により、プロダクトは単なるアップサイクル製品から、「強さ」を内包する象徴的なアイテムへと価値を高めた。これにより、「環境配慮」と「応援消費」という二つの強力な購買動機を同時に獲得することに成功している。
サステナビリティ経営を加速させるストーリードリブン戦略
EBISTとteamGOLDのコラボレーションは、サステナブルな経営を目指す企業にとって、単なる環境配慮に留まらない、ブランド哲学と顧客の感情を結びつけるヒントに満ちている。
これは、ストーリードリブンなサステナビリティ戦略の好例である。企業の環境活動(アップサイクル)を、感動的なスポーツの物語(teamGOLDの挑戦)と結びつけることで、無関心層にもメッセージが響きやすくなる。
特に、企業の内側にある独自の接点(兼任スタッフ)から生まれた熱意を、明確なブランドメッセージ(タフネスと応援)に昇華させ、プロダクトを通じて市場に展開した実行力は、新しい価値創造を目指すビジネスリーダーにとって、大いに学ぶべき点である。小さな応援が大きな跳躍につながるというこの取り組みは、社会貢献と経済的リターンを両立する未来の経営モデルを示唆している。



