「精密さ」と「ユーモア」が融合したアクセサリー 環境課題と製造業の未来に挑む

産業用ハードウェアメーカーの株式会社電産(東京都杉並区)が、新たなアップサイクルプロジェクトを立ち上げた。パートナーは、電子部品をアートやファッションに再生させるクリエイターブランド「SINDENKI(シンデンキ)」。製造過程で廃棄されるはずだった電子部品を、独創的なデザインをまとったアクセサリーへと生まれ変わらせる試みが注目を集めている。
廃棄部品に“息吹”を与える技術と感性の融合
「精密さに誠実を、日常にユーモアを。」というコンセプトを掲げる本プロジェクトでは、基板や抵抗器といった工業製品を、アクセサリーとして再構築する。通常は廃棄対象となる使用不可の電子部品や基板類が、電産の持つ技術力とSINDENKIのアートセンスによって、洗練されたファッションアイテムへと昇華する。

完成したアクセサリーは、電子機器特有の美しさや緻密な構造を残しながらも、日常のスタイルに違和感なく溶け込むデザインに仕上がっている。産業の副産物が、まさに感性によって蘇る瞬間である。
電子廃棄物という社会課題に製造業からのアプローチ
本プロジェクトの背景には、世界中で深刻化する「電子廃棄物(e-waste)」問題がある。電子機器の短命化が進む中、適切に処理されず環境に悪影響を及ぼすケースも少なくない。電産は製造業としての社会的責任を果たすべく、アップサイクルという視点からこの問題に向き合う。
同社は「資源の有効活用にとどまらず、若手技術者の減少という製造業の構造課題にも一石を投じたい」としており、ものづくりの楽しさや意義を新しい世代に伝えるきっかけとして、アップサイクルの創造的プロセスに着目する。
「誠実でユーモアに満ちた」新しいものづくり文化へ
SINDENKIとのコラボは、電産にとって初の取り組みとなる。今後はクリエイターや他企業との連携も視野に入れ、アップサイクルによるものづくり文化の再構築を目指す。
「それぞれの専門性や感性を掛け合わせ、予測不能な化学反応を起こす。誠実でユーモアに満ちた、より豊かなものづくり文化の醸成に貢献したい」と同社は語る。
「技術×感性」の融合から生まれるアップサイクルアクセサリーは、単なるサステナブルプロダクトではない。そこには、資源へのまなざし、製造業の再定義、そして未来への提案が込められている。