ADワークスが木質化オフィスの動画公開 八丁堀のビルをウェルネス空間に再生

老朽化した中古ビルを、環境にも人にもやさしいオフィス空間へ――。株式会社エー・ディー・ワークス(以下ADW)は、東京・八丁堀の「ナカリンオートビル」において進めている『木質化×ウェルネスオフィス』プロジェクトの紹介動画第一弾を公開した。
動画では、プロジェクトの背景や現場の様子、作り手の思いを丁寧に伝えており、サステナブルな不動産再生の新たな可能性を提示している。
築古ビルを“環境価値”ある空間に再生
ADWは、築年数の経過した中古不動産のバリューアップに長年取り組んできた。これまでの実績をもとに、今回は「サステナビリティ追求」の観点から、八丁堀駅至近の地上8階・地下1階建てのナカリンオートビル(1988年竣工)において、空き区画である3階部分(214.39㎡)を木質化とウェルネスの視点から大幅に改修する計画だ。
中心に据えるのは、国産の杉材を用いた新しいOAフロア「WOOD FLOOR UNIT 3.2」の導入。木材利用による意匠性だけでなく、炭素固定という環境的利点も視野に入れている。
約5.76t-CO₂の固定効果も 木材の積極活用
同プロジェクトでは、約180㎡の床面に木製OAフロアを使用することで、推計で約5.76トンのCO₂固定効果が見込まれる。これは、杉の木およそ410本分が1年間に吸収するCO₂量に相当するという。

建築用木材の活用による炭素固定は、近年CLT(直交集成板)などの利用促進とも相まって、建築業界全体で注目されている。本件は、都市部のオフィスビル改修においてその意義を具現化する先進例といえそうだ。
フィトンチッド効果も取り入れ、心地よい職場に
今回の改修では、「働く人のウェルネス向上」も重要な柱に据えられている。木の香りがもたらす癒やし効果(フィトンチッド)を活かす設計や、外気を取り込みやすいゾーン構成、多様なワークスペースを配置することで、身体的にも心理的にも快適なオフィス環境を目指す。
完成予想パースでは、自然光を取り込みつつ、受付エリアやフリーアドレス席、リフレッシュスペースなどが木質調で構成されており、従来の“無機質なオフィス”のイメージを覆す空間となっている。

“活かしてつなぐ”不動産再生が企業のマテリアリティ
本プロジェクトは、ADWの親会社であるADワークスグループ(ADWG)が掲げるマテリアリティ「活かしてつなぐ不動産再生」の一環としても位置づけられている。かつて染色工場「青木染工場」として創業し、現在では東京証券取引所プライム市場に上場するADWGは、不動産ソリューションを通じて社会課題の解決と企業価値の両立を志向してきた。
今回の取り組みは、同社としても初めての“木材×ウェルネス”の本格導入事例。今後は工事の進捗を追う「Chapter2」や完成空間を紹介する「Chapter3」の動画公開も予定されており、都市の既存建物を持続可能な形で再活用するムーブメントの波及が期待される。
都市における“木と人”の共生をどう実現するか
都市型オフィスビルの再活用は、人口減少時代における不動産戦略の重要テーマでもある。今回のように「環境価値」「健康」「意匠性」を同時に満たす試みは、ESG投資の観点からも注目度が高い。
建て替えではなく“活かす再生”にこそ未来がある――。作り手の視線は、木の香りが漂う空間から、持続可能な都市の風景へとつながっている。